会遇
「・・・これ、お願いします」
そういって差し出された本には、西野研条の名前が書いてあった。
「あ、はい」
本をとり、バーコードを読み取る。
「・・・あれ」
「何か?」
「いつも、夕方頃に来られてる方ですよね?」
「はい、そうです。・・・並守といいます」
見た目の厳つさにはそぐわない質の様だ。
「今日は・・・?」
「ああ、今日は・・・えぇと、時間ができたんで・・・」
「そうですか」
「実は、ちょっとした店を構えておりまして・・・"ワルフ"って言うんですけど・・・」
その後も、しばらくハルマと並守は話を続けた。
ただ、クレナとどういう関係なのかは、ハルマにはいまいち分からなかった。
高校生と接点のある様には見えない・・・。
「へー、新しい子が入ったんだ」
「そうなんですよ、いっつも6時から来るんですが」
「そうかー。・・・・実は、夕方、もう一回来るつもりだったんだ」
並守は本の入ったビニール袋を提げ、出口の方へ向かう。
「じゃあ、またね」
「ありがとうございましたー」
出口のドアが開くとき、後ろ姿で、一瞬並守が笑っているのが見えた。
しかし、その意味はハルマには分からなかった。
並守が外に出て、ドアがゆっくりと閉まりきった時、
「ハハッ、かわいそうにな、青年」