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ガクト  作者: 死兎
3/12

世界

 









「こんだけ、あっちの列に置いてきて」


「は、はい!」


「わかんなかったら聞いてね」


「大…丈夫…です………」


 浦箕(うらみ)クレナは、バイトの制服に着替えた後、早速、棚垣ハルマの指導のもと、仕事に取り掛かった。


 重たく積み重なった本を抱えて、たどたどしく歩いていく。


(・・・やっぱ天使だ・・・・・)


 遠ざかる彼女の後ろ姿を見つめながら、ハルマはそんな風に思っていた。


 が、すぐに首を横に振り、自分の仕事に戻る。


 しばらくして、クレナが帰ってくる。


「せ、先輩・・・・」


「あ、もうできたの?」


「はい・・・その、次は」


「じゃあ、向こうの漫画コーナーんとこの整理してきて。新刊も出てるし。俺もこっち終わったら行くから」


「わかりました!」


 そうして、クレナはハルマの指差した方に向かって、急ぎ足で歩いて行く。


(うわー、マンガがいっぱい・・・)


 想像より多かった漫画の量に、少し気圧(けお)される。


 早速、本の整理に取り掛かる。


 しかし、種類が多くて、どれがどれだかちんぷんかんぷんである。


 迷いながらも本を整えていく。少し疲れたので、その場で一息ついた。


 そして、思い出したように、辺りをキョロキョロ見回す。


 こっちの本棚と本棚のスペースを見たり、あっちの本棚と本棚のスペースを見たり・・・・。


 結構、お客さんいるんだなー


「何見てるの?」


「はいっ!!!!」


 背後からの声に体がびくつく。


「あ、いえ!何でもないんです!ただ、お客さん多いなー、って」


「そうなんだよな。こんな店、よく見つけるよな」


 笑いながらハルマは言う。


 うまく誤魔化せたことに、クレナは一安心した。


「できた?」


 最初、何のことかな、と思ったが、


「あ、はい!あ、いえ、ちょっと…」


「まだ?」


「は、はい…ごめんなさい」


「何で謝るんだよ。いいよ。ちょっとわかりにくかったかな」


「・・・その、種類が多くて・・・」


「そうだよな。大丈夫、俺も一緒にやるから」


「・・・・・りがとご・・・」


「ん?なんて?」


「ああっ、気にしないでください・・・」


 ハルマは不思議がりながらも、作業に集中するようにした。


「うわっ、"グルファロ"新刊出てんじゃん!忘れてた。後で買っとかねぇと」


「おおっ、"アマンド"か!懐かしいー。いや、あん時はハマったな」


 その様子を横で見るクレナ。


「好きなんですね、マンガ」


「ん、ああ、大好き大好き。浦箕は読まないの?」


「私はあんまり・・・」


「そうなんだ。・・・漫画だけじゃないけどさ、虚構(フィクション)って、俺に新しい世界を教えてくれるんだ。現実とは違う、別の世界。それもたくさんある。・・・そんな世界に触れるのが楽しいんだ。色んな世界を、知ることができる」


「・・・そうなんですか・・・」


 クレナは少し考え込む。


「先輩」


「何だ?」





「・・・ガクトって、知ってます?」



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