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ガクト  作者: 死兎
2/12

天使

 








 昼過ぎの、とある書店。店内は静寂が漂う。


 大通りから離れ、人目につきにくい場所であるにもかかわらず、立ち寄る人はそこそこ多い。


 整然とした本棚を眺めながら、気の赴くままに徘徊する者もいれば、じっと突っ立って、立ち読みに専念する者もいる。


 レジにも本を読むものがいた。


 彼の読んでいるのは、どうやら漫画らしい。


 時々、堪えるようにして笑う。


 ここのバイトがあまりにも退屈なので、手を出してしまったらしい。


 ああ、もちろん、その本は自分で買ったようだが。


「おい、棚垣!何やってんだ!」


 店長からお声がかかる。


 慌てて本を閉じるが、彼ーー棚垣ハルマーーは読んでいる途中で止められることを、執拗に嫌う。


 ーーーまあ、相手は店長であるからそんな感情を表に出せるわけはないーーー


「す、すいません。でもこれ、自分で金出したやつですから」


「バカ野郎。バイト中に本を読むやつがあるか」


 店長は、体育会系といったような、ずっしりした体型で、書店には・・・・少しイメージが合わない。


「そうだ、棚垣。お前に言っとかないとな」


「?・・・何ですか」


「今日から新しい子が入る」


「バイトですか」


「それ以外あるか。6時からだ。お前が教えてやれ」


「・・・わかりました」


 店長はまたどこかへ行った。


 新人か・・・。ハルマは若干の憂鬱(ゆううつ)を覚えながら、また本のページを開く。






 そうやって、たまにレジ打ちをしながら、6時になった。


「・・・う、浦箕(うらみ)クレナです。よろ、よろしくお願いします」


 全くの予想外に、ハルマは目を見張った。


「あ、ああ、よろしく・・。俺は棚垣ハルマ。今は大学1回生・・・。浦箕さんは高校生?」


「あ、はい・・。2年です」


 制服姿に短いポニーテール。


「・・・・その・・」


「どうしたの?」


「め、迷惑かけたら、その、ごめんなさい・・・」




 この小さな書店にやって来たのは、天使のような少女であった。


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