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片桐さんと田所さん その2

おまけです。ご笑納ください。

ある日の二人。


 「なぁなぁ、聞いてくれよ!」

 「どうした?」

 「今日さ、線路にスマホを落としちゃった客がいてさ」

 「あぁ、よくあるな」

 「だろ? で、いつも通り、すぐに地下鉄止めて拾えって」

 「無理だな」

 「本部にインカムで聞いてもダメでさ」

 「そりゃそうだ」

 「そしたら客が逆ギレしてさ~」

 「それもあるあるだな」

 「そしたらさ、ふんわりした髪が肩までの可愛い子がさ」

 「ふんわりボブの可愛い子?」

 「地下鉄は皆のものです、あなただけのものじゃありません! って」

 「へぇ」

 「逆ギレ中の客が黙っちゃって」

 「あぁ、うん」

 「その子、お仕事頑張って下さいねって」

 「ふぅん」

 「笑顔が可愛くてさ~」

 「××駅だったか? 今朝のおまえの配置」

 「そうだけど、興味あるのか? ダメだぞ、おまえ彼女いるだろ」

 「まぁな」

 「また会えるかなぁ~。今度会ったらお礼言ってさ」

 「7時55分発だろ」

 「お茶とか誘えないかな~。あんな理解ある可愛い嫁さんいたら、サイコーだろうな」

 「ダメだ。おまえにチャンスはない」

 「何でおまえにそんなこと言われなきゃいけないんだよ。友達かな、ほかの女の子からゆかりちゃんって呼ばれてた~。名前も可愛いよな~。田所ゆかりって結構合うよな」

 「全然似合わない」

 「おまえ、どんだけ意地悪なんだよ。夢見るくらい、いいじゃん。家に帰ったらさ、温かいご飯とか用意してくれて、ご飯? お風呂? それともあ…痛っ! 何するんだよ!」

 「いい加減黙れ。仕事に行くぞ」

 「なぁ、待ってくれよ! 何だよ、何で不機嫌なんだよ? おぉ~いい! 片桐~!」


ーーーーーーーーーーーーーー

最近の二人


 「なぁなぁ、おまえ、元気ない?」

 「ほっとけ」

 「彼女と何かあったのか?」

 「……」

 「元気出せとは言わないけどさ、愚痴でも言いから吐き出せば、楽になることもあるぞ」

 「……」

 「おまえ、何でもため込むからなぁ」

 「……田所」

 「俺たち親友だろ? 迷惑かけるとかじゃなくてさ、もっと利用しろよ」

 「そっか……」

 「そんな仏頂面で接客されたら、客の方がいい迷惑だ」

 「そうだな。……おまえさぁ」

 「何だ?」

 「……本当に僕のこと、大好きだな?」

 「……まぁ、親友だからな」

 「おまえ、彼女できないのって、僕のこと好きすぎるからじゃないか?」

 「はぁ?」

 「ごめんな、僕、おまえの気持ちには応えられないよ」

 「ば、バカなこと言い出すなよ!」

 「田所のことは好きだけど、そういう対象としてはみれない」

 「気持ち悪いこと言うなぁ!」


 「おぃ、田所はどうしたんだ? 飛び出してったぞ」

 「さぁ、トイレじゃないですかね」


ーーーーーーーーーーーーーー

その後の二人


 「聞いてくれよ」

 「何だよ、うるさいな」

 「××駅のゆかりちゃんに昨日と今日、遭遇してさ」

 「!」

 「それが二日続けて、目、真っ赤で、瞼腫れててさ」

 「……」

 「痛々しいんだよな」

 「そう……だな」

 「彼氏と何かあったのかな」

 「!」

 「二日も泣きっぱなしなんだぜ? 絶対何かひどいことされたんだよ」

 「そう…………だな」

 「俺さ、地下鉄大好きだからさ、お客さんにも喜んで、安心して乗ってほしいんだよね」

 「うん」

 「ゆかりちゃんともさ、そりゃ知り合いになれたら嬉しいけど、そうじゃなかったとしても、笑顔でいてほしいな、って」

 「田所、おまえ……」

 「俺がそばにいれたら、絶対、笑顔にしてあげるのに。彼氏、何やってんだよ、って感じだよ。あんな可愛い子を、あんなに悲しませて」

 「……あぁ……いや、ダメだ。おまえが良い奴なのはわかるんだけど。やっぱり、おまえが彼女の横にいるのはダメだ。何か、ダメだ」

 「……片桐、おまえ……お、俺は男とは付き合わないからな! 俺は彼女を作るんだからな!」


 「おぃ、また田所、構内走っていったぞ。止めろよ。走るの禁止だぞ」

 「すみません。腹、下ってるみたいです。でも、注意しておきます」



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