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第六話  借金

 

 



 狭山は、一之瀬の父親の借金先を洗い始めた。

 近所にも聞き込みをする。

 また、自宅にも入ることの許可を得て、資金の流れのわかる帳簿を探し出した。


 K丸金融

 Jファイナンス

 Rクレジット

 ・

 ・

 ・


 多数の闇金からも金を借りていたようだ。

 あらゆる処から支払督促通知が届いていた。

 社会保険料も税も滞納していたようだ。


 際どい取り立てをしている有名なSファイナンスから借りたことが記載されているメモが見つかった。

 かなり危ない橋を渡っている闇金業者と聞いている。


 また、個人からも金を借りているようで、

 青柳 裕也 100万、千歳 正和 50万・・・

 と事細かにメモがされている。

 その一覧の中から一つ目立って大きな額を借りている人物がいた。


 西條さいじょう 信臣のぶおみ 1000万


 あの西條 和臣の父親である。

 あの西條一家は、ここまで一之瀬家のために融資していたのか・・・。

 色々と一之瀬家にトラブルが起こったら、信臣が表立って動いて、おさめていたという近所の証言も取れた。


 西條家は、資産家ではあるが、ただの友人にここまでの融資をし、トラブル回避のために動き回るだろうか・・・。

 狭山は少し、引っかかりながらも、ひとまず一之瀬家を後にし、それぞれの借金をしていた個人宅をちょっと先に回ろうと決めた。

 なぜなら、ほとんどが近所の住人だったからである。


 隣近所の青柳宅を訪ねて、借金の経緯を聞く。


「いや~、一之瀬さんとこも大変みたいだしね。

 うちも厳しかったとき、一之瀬さんがなけなしのお金を無利子で期限なしの条件で貸してくれたことがあってね。

 本当に、あのひとは人がいいから。

 わしもあのときのお礼の気持ちを込めて、貸したんじゃ。

 もう返済なんてなくてもいいと思ってたよ。

 それが、あんなことになっちまって・・・息子さんはいい子じゃったんじゃがのう・・・。

 はたからみたら、わからんこともあるんじゃろうのぉ~」


 といった具合で、どの貸主を訪ねても同様の返答で、一之瀬には世話になったの一点張りで恨みを抱いている様子は微塵も感じられなかった。


 真犯人がいるとしたら、あの殺され方はどう考えて怨恨と思われる。

 一体、誰があの一家を殺したのか?

 個人的な恨みかと思ったが、その線は今とだえようとしていた。


 狭山は、次にSファイナンスへ聞き込みに向かった。


 擦れた感じの化粧の濃い女性が、不機嫌そうに座っている。

 狭山を見かけるとゴミでも見る目つきで、ちらっと見た後、「ご用件は?」と不愛想に聞いてきた。


「私は、弁護士の狭山と申します。

 一之瀬 孝雄 という男が、こちらで融資を受けておりまして、その件でお話ししたいことがあります」


 女は、さも面倒そうに、体を揺らしながら奥へと入っていった。


 しばらくして、女が頭だけだして、左側の部屋に入るよう言ってきた。

 狭山は、ドアをあけ、入るとそこは応接室のような立派なソファがおいてあり、社長机がソファの横にどっしりと鎮座していた。

 その机には、黒髪をオールバックにし、ジェルかなにかてかてかと塗り固め、とても趣味がいいとは言えない仰々しい金の指輪をいくつもはめた典型的な金貸しが派手なスーツを着て座っていた。


「Sファイナンスの三木と申します。弁護士さんが今更なんのご用でしょうか?

 一之瀬 孝雄が、どうかしましたか?

 たしか、息子にやられて、おっちんだとかなんとかニュースで数か月前にやってましたよね?

 こっちは、たまったもんじゃないっすわ。

 取り立て先に死なれて、次の取り立て先の息子は逮捕されるし。

 いい迷惑ですよ」


 三木は、怒りの矛先をどこに向けていいかわからないようで、吐き捨てるように言った。


「お忙しいところ恐れ入りますが、事件の件で今弁護人として調査をしております。

 Sファイナンスで融資を受ける際、一之瀬は何か相談してませんでしたか?

 なんでもいいので、覚えていることがあったら教えていただけないでしょうか?」


 狭山は、相手の威圧にひるむことなく、冷静にたずねた。


「ああ? もう数か月も前のことだぜ。覚えてるわけねぇ~だろ?

 ・・・ああ、でもそうだな・・・。

 一つだけ、なんか必死で、金を返さないといけない人がいてどうのこうのって言ってたな。

 なんか借金している先から、強く返済でも求められたんじゃないか?

 やけにおびえてたぜ」



「それが、誰かわかりませんか?」


「知らねぇよ。 誰なんて聞いてもこちとら関係ねぇしな。

 ただ、返さないと家族が終わるだのなんだの言ってたのは覚えてる」



 う~んと狭山は、うなった。

 誰かに脅されていたのか?金を結局返すことができなくて、殺されたのだろうか?


「まさか俺ら疑ってんじゃねぇだろうな。

 勘違いするなよ。取り立てできる相手は、生かさず殺さずだ。

 特に、一之瀬みたいな人のいいやつは、どうとでもなる。

 そんな金づる殺すわけねぇだろ?

 搾り取るだけ絞りとるわ」


 たしかに、金融会社が金を取り返さずに、借主を殺すわけがない。

 金融業者がこの一家殺人に絡んでるという線も消えそうであった。


 しかし、この金融会社への聞き込みは、無駄足ではなかった。

 やはり、一之瀬 孝雄は、個人の貸主との間でなんらかのトラブルがあったのに違いない。

 

 金を返さなければ、家族がなんらかの被害をこうむる。

 そして、結論家族が惨殺される結果となった。

 ただ、なぜそれならば一之瀬 亮だけが軽傷で生き残ったのか。

 そこが少し謎が残ったが、もう一度個人の貸主を洗いなおしてみることとした。


 それと同時に、この借金の件で、一之瀬 亮が何か知らないか確認するため、もう一度面会をすることにした。










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