最終章
一之瀬の身に起きた悲劇は、彼の精神を破綻させた。
父親が親友の家族を惨殺したこと。
親友が自分の家族を惨殺したこと。
真実を知った親友が自殺したこと。
そのすべてをすべて受け入れられるほど、一之瀬 亮はタフではなかった。
しばらく、口もきけず、眠れず、食事もとれないような状態が続いた。
しかし、狭山の献身的な看病もあり、数か月たったころ、ようやく目を見て話せるまで回復した。
狭山自身は、自分がそばにいると事件のことを思い出して、彼にとっては逆効果ではないかと思われたが、天涯孤独となった彼をどうしてもほおっておけなかった。
本当に、狭山は自分のやったことが正しかったのかいまだに考えている。
真実は、ときにひどく残酷だ。
知らないほうがいい真実もある。
どうにかできなかったか。
他に本当に方法はなかったのか。
二人とも救う方法はなかったのか。
一人の少年の人生を終わらせて、一人の少年の精神を破綻させた。
後悔の念が消えない。
「金庫の中身・・・俺にください」
突然、一之瀬が狭山にそうお願いをした。
狭山は、驚いて首を横にふる。
「だめだ、あれは見ない方がいい。聞かないほうがいい。
知らずに処分したほうがいい」
「だめなんです。ちゃんと見ないといけないんです。
和臣は、ちゃんと向き合いました。
最後は逃げませんでした。
自殺してしまったことが正しい決着の仕方とは思えません。
でも、あの死は逃げたわけではなく、俺への償いそのものだったんだと思います。
だから、俺もちゃんと真実を知って、それでも生きて行かなきゃいけないんです。
狭山さん、何も後悔しないでください。
貴方は、正しかったんです。
これで、よかったんです」
狭山は、こらえていた涙がこぼれ落ちるのを止めることができなかった。
陽が沈むのがだんだんと早くなってきている。
病室に差し込む西日が眩しかった。
二人で、ずっと陽が沈むまで、眺めていた。
いかがでしたでしょうか?読んでいただき本当にありがとうございました。
悲劇の連鎖とすべてを失ってもなお生きていく強い人を描きたくて書きました。
感想や評価をどしどしお待ちしております。




