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皇太子は海の国を去る

穏やかな春の陽気。

白い砂浜に打ち寄せる波に靴を脱いだ足を潜らせている。

冷たくはあるが耐えられない程ではない。


「殿下!」


従者に呼ばれてルトガー・エルドランド・ローヒメティは顔を上げた。


「そろそろお時間ですから。城に戻りませんと」

「何だ、もうそんな時間か。この美しい海も見納めか」


ルトガーは寄せては返す波の気持ち良さに身を預けながら目を細めた。

マゼッテイ公国の海岸線は城がある一部を除いてほぼ砂浜である。

故郷ローヒメティ帝国、帝都の海岸線は絶壁であるため、ルトガーにとってこの景色は滅多に見ることが出来ない情景であった。

昨年の夏の頃は学園で親しくなった友人達とよく海へ繰り出したものだ。

海で遊ぶ、などといった事は初めての経験だった。

白い砂はさらさらとして、足が深く沈み込むと若干熱い。

空気の入った球を打ち合うビーチボールなるモノを体験したが、上手く歩けず思う様に動けなかった。

故郷では訓練で泳ぐ事はあったが、意味もなく自由に泳ぐ事は初めてだった。

穏やかな波にゆらゆら揺れて漂っていると、まるで自分が魚になった様に気持ちが良かった。


あんな経験はもう出来ないだろう。

身分を意識せず自由で楽しい日々は今日で終わりだ。

ルトガーはマゼッテイ公国での留学を終え、山の上の国へと向かう。

留学中はただの貴族の少年だったが、今からはローヒメティ帝国の皇太子として行動しなければならない。


ルトガーは青い海に浮かぶ双子岩などの景色を目に焼き付けて海岸を後にした。




マゼッテイ公国の城は崖の上にある。城の北側はミルクスン山脈の裾野で簡単には行き来出来ない。城の西と南に町が広がっているので、敵に攻め込まれた場合北東は海なので注意しないで済む様に造られている。

事実、二百五十年程昔の戦争では山と海のお陰で侵略を免れていた。


ルトガーが城に着くと、謁見の間には第一公子コラード、第二公子ベルナルド 、宰相とその息子アルフォンソやその他大臣が左右に控えている。それから、ルトガーと共に山と上の国へ行く騎士団団長の息子フィリッポ、双子の公女クラリーチェと末公子エルネスト。

中央に立っていたのは見たことのない軍服姿の男が三人。

紫の混じった銀髪の隊長と思しき男に、筋肉隆々の大男と茶髪の筋肉質な男。

隊長らしき男の紫の瞳と目が合い会釈されたので、ルトガーも返した。


ラッパが鳴って大公と公妃の入場を告げた。


交差します……。



ルドガーをルトガーに訂正しました。

彼が短編に出た時も間違えていて、訂正していた気がします。

とに点々だと思い込んでいる自分の脳ミソが恨めしいです。2016.2.25


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