男装令嬢の優雅で憂鬱な学園生活
オレは乙女ゲーのヒロイン、マリアーナ・ソレンギ。
でも、中身は男だから、男装してマリアーノ・ソレンギを名乗って学園に通っている。
現世の父親のお陰で容姿がイケメンで、前世の母親と姉のお陰で言動がイケメンなオレは。
女の子にモテモテです!
多分、容姿も言動もイケメンだからモテたんだろうな、オレ。
自分で言うのも何だが、他のイケメンを圧倒的に離してのモテッぷりだ。
まあ、元々乙女ゲーヒロインのオレだからねぇ。
ハーレムは当たり前の事かな~!
ただ。
惜しむらくは……女の子たちはオレの事。
ホントのホントに、男だと思ってんだよねー。
オレの事、女って知ってんのは婚約寸前までいった例の××令嬢だけ。
誰にも言ってないのがちょっと謎だけど、バレる前と変わらない熱っぽい瞳で見詰めてくるから。
オレが体、女でも気にしないのかな。
まあ、願ったり叶ったりだけど、ねー。
百合……出来るかな?
まあ、そんな訳で女の子にモテモテなオレですが。
朝から晩まで女の子に囲まれてちゃ。
当然、男共はイイ顔しない。
で、オレには男友達がいない。
奴らもオレの事、男だと思ってるからなー。
女の子のハーレム作るのって、前世からの夢だけど。
やっぱ、男友達も欲しいなと思う。
バカな事をワイワイやりたい訳よ。
ゲームとか、ワイ談とか、サッカー(勿論、この世界には無いけど。外遊びとかの意味で)とか、アホな事言ったりとか、アホな事やったりとか。
でも。
男友達と女の子のハーレム。
どっちが良い?って聞かれたら、ハーレム採りますけどね、はい。
さて。
乙女ゲーのヒロインって、大抵、学園に編入してくるんだけども。
オレは男装のせいで、男爵の父親と揉めに揉めて。
編入じゃなくて一年遅れ(普通、十二歳で入るところ、十三歳)で入学している。
だから、オレはクラスメイトじゃなくて後輩なのだ。
悪役令嬢アンジェリカとメイン攻略者の第二公子ベルナルドの。
第二公子はどうでもいい、第二公子たちは。
問題は。
悪役令嬢アンジェリカ。
すっげぇ美人だ。
美少女なくて美女な。
えーと、言動イケメンに言うと。
薔薇の様な唇、桜の様な頬、雪の様にきめ細かい白い肌、大きくてちょっときつめな水色の瞳は秋の空(日本のね)の様に澄んでいて、日の光に煌めく黄金の髪がゆらゆらと波打って……。
ついでに、漢字二文字だと。
えー、先ず巨乳。
これは、違うわな。
気を取り直して……艶麗な顔立ち、壮麗で典麗な立ち振舞い、瀟洒な格好、優美な声、絶世の美女、傾国の美女。
さすが、悪役令嬢。
さすが、ヒロインのライバル。
乙女ゲーにおいて、これ以上の美女はいないわな。
中身は知らんので、これからお知り合いになろうー!
オレ、ヒロインだけど……問題は、ないな。
なんか、簡単に友達になれた。
どうも、ぼっちの様だ。
悪役令嬢って大変だな。
今では「アン」「マリ」と呼び会う仲だ。
これは、百合…も近いか?
あー。でも、ヒロインのオレが居ないからなー。
どうなんだろ。
悪役令嬢の断罪イベントって。
無いのか?
つまり、百合も無いのか?
断罪イベントはあった。
なんか、ゲームより優秀過ぎたアンジェリカに婚約者の第二公子ベルナルドは嫉妬したみたい。
ヒロイン居ないのに、断罪イベントされるって。
マジ大変だな、悪役令嬢って。
ま、いっか。これで晴れてアンジェリカは自由の身だ!
百合も近いっ!!
しかし、アンジェリカってちょっと抜けてるとこ、あんだよな。
チートし過ぎっしょ。
前世の記憶持ってるからって遣り過ぎは気を付けないと。
男は自分より優秀な女の子苦手なんだから。
嫉妬されるは、命狙われるは、面倒事に巻き込まれるは、妻にとか望まれるは。
オレはそんなメンドーなの、ゴメンだね。
前世は隠すに限るっ!
チートはともかく、抜けてるのは元々の性格なんだろうな。
オレが「百合」とか言っても、全然気付かねーんだもん。
この世界で『百合』はレズビアンの隠語では無いってこと。
百合はただの花の名前。
つまり。
オレもアンジェリカと同じ転生者ってこと。
ま、これ以上ヒントはあげたりしない。
オレが転生者でしかも実は『男』とかバレたら。
百合が遠退く気がする。
ただでさえ、ライバル多いのにな。
ん?
あれ?
ライバルも男なんだから……別に、問題ないか?
どっちだ?