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第二公子ベルナルド・マゼッティ

マゼッティ公国、通称海の国の大公(王様)の二番目に生まれたベルナルド。兄の第一公子と双子の弟妹(第三公子と第一公女)を持ち、主人公アンジェリカ・メーダ侯爵令嬢の婚約者である。

アンジェリカと婚約したのは幼い頃で、そこに二人の意思は無い。

山の上のお隣、筋肉の国は恋愛結婚どんと来い!の国であるが、マゼッティ公国は普通に政略結婚を行う国である。

ベルナルドも普通にアンジェリカとの婚約を受け入れた。

ちょっときつい目の綺麗な子、なぐらいの印象であった。


ベルナルドは第一公子が王位に就けなかった場合の保険であり、または大公になった時の補佐する立場だった為、幼い頃から勉学に励んだ。野心は無い。将来兄を助けるんだとの一心で頑張った。

ベルナルドの心に影を落としたのは貴族の噂だった。


「アンジェリカ様はもう×××を修めたらしい」「ここだけの話、ベルナルド様より優秀らしい」「また新しい商品を開発したらしいぞ」「メーダ侯爵家は安泰だな」「ベルナルド様が羨ましいよ」「公妃に迎えた方が良いのでは?」「それは……メーダ侯爵がまた力をつけてしまうじゃないか」


「――不味い、ベルナルド公子だ」


男達が頭を下げる。ベルナルドは子供ではあるが公子、上位者なので声がかかるのを男達は待っていた。

正直、声などかけたくも無いが……。


「アンジェリカ嬢は、本当に優秀ですよね」


「ええ、まあ。ベルナルド殿下に相応しい淑女かと……」


ベルナルドは親しげさを装う男達に冷たい一瞥をくれてやると、何も言わず長い外廊下を歩いて行った。後ろで悪態をついているようだが、もう慣れた。

海に面した城には波のさざめきと共に潮の香りが漂ってくる。

ベルナルドは自室には向かわずに階段を登った。物見の塔からは岸壁に波打つ海が見下ろせる。

王立の学校は十二歳からの五年間、主に貴族の子女が通う事になっており、ベルナルドやアンジェリカが通い出してもう二年になる。年に四回試験があり、そのどれもでアンジェリカが首席だった。ベルナルドも優秀ではあったがいつも数点追い付かず万年二位だった。

アンジェリカは首席だからといってひけらかしたりしない。下位の者を見下したりしない。ベルナルドは強敵(ライバル)だからと、「次も負けません。お互い頑張りましょう」と爽やかに握手を求めてくる。

本当に、とても、出来た婚約者、だ。

だけども。

それが、苦しい。

とても、悔しい。

身勝手だと分かっているのに。

彼女が優秀で無ければ、彼女が居なければ、と。

彼女が優秀であればある程、自分の矮小さを嫌という程知る。


好きな子に負け続けるのは、辛い。婚約者だというのが、尚辛い。

アンジェリカの側に要るのは、もう絶えられない。

彼女に好きな男が居るのなら、婚約は破棄しよう……。

こんな万年二位の男より、きっと幸せにしてくれる。

暫く、失恋で辛いだろうけど側に居るよりは辛く無い。


打ち寄せる荒波がこの恋心も己の愚かさも惨めさも……全て洗い流してくれるようにと、ベルナルドはいつまでもいつまでも見詰めていた。


ベルナルドはイタリア語で『強い、熊のように勇敢』

実際は逆でヘタレ

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