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ピコピコ恋愛白書【改稿前】  作者: 不知火 螢
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第9話  囚われのお姫様。……にはなりえません。

「くそっ、相手はガキだけだから暴れたい放題だって聞いてたのによ! こんなクソ強ぇガキが居るなんて聞いてねぇぞっ!」


 私も学園の帰りにこんな襲撃を受けるなんて聞いてない。

 現在、どうやら私はこの男によって人質状態になっているようだ。

 小兄様とアストリア様に制圧されかけた所に起死回生とばかりに、馬車に居るであろう他の子供を人質にすることを思い付いたようで、偶々扉を開けてすぐのところに居た私を人質にした、とったところか。

 ……今日は厄日か何かなんだろうか。


「剣を捨てやがれ! そっちのガキは魔法を使うんじゃねぇぞ!」


 剣を捨てろ、というのはアストリア様に向けて、魔法を使うなというのは兄様に向けての言葉だろう。アストリア様は少し困ったような顔で剣を手前に投げ捨てた。


「アスティ姉様!?」

「よーし、そのまんま動くんじゃねえぞ!」


 なんと、アストリア様は何のためらいもなく剣を放り投げた。


「だって、ピコの方が大事だもの」


 当然でしょう? というアストリア様に、いつもならば感涙するところだが、今は「なんで!?」という気持ちの方が大きい。私なんか放置しておいても問題ないのに! 悪運だけは強いから何とかなるきがしてるのに!!

 アストリア様が剣を投げ捨てたのを確認した男はそのまま私を放り投げてくれればいいのに、なぜか肩に担いで逃走しだした。

 追撃を防ぐ為なのだろうが、私にしてははた迷惑な話である。

 そして、この男はバカなのだろうか。せっかくアストリア様が剣を投げ捨てたというのに、私という荷物を担ぎ、かつ背中を見せての逃亡。

 男とは逆方向を見ている私には、男が走り出したと同時にアストリア様も駆け出し、当然だが剣を拾って追いかけてくるのが見えている。

 兄様はというと、アストリア様同様走り出していたが、視線は上空にあった。何を見ているのだろうと私も釣られて見上げれば、そこには大空を旋回する小兄様の使い魔の姿があった。


「おじさん」

「あぁ!? 俺はまだ俺はまだ32だ!」

「おじさんの年齢なんてどうでもいいよ。いい加減諦めて私を置いていってよ。私を連れている以上、必ず捕まるよ? 私の魔力を追って追跡されるもん。おじさんに逃げ場はないよ」


 まぉ、魔力を追跡どころか現在進行形で小兄様とアストリア様が追ってきてるんだけどさ。


「るせぇっ! 黙んねえとぶっ殺すぞ!」


 おっと、殺されては堪らないので、説得は諦めよう。お口にチャック。

 ……私を投げ捨ててくれれば良いだけなんだけどな。

 そんな感じで、私を担いだまま男はひたすら走り続けていた。アストリア様は一定の距離を保って追い続けてきている。

 そうして走り続けた男は突然立ち止まるなり「何だと!?」と叫んだ。


「なんであいつらまでやられてるんだ!」


 男が呆然として見ている先には何人もの男たちが倒れていた。

 ちらりと学園の馬車が見えたので、どうやら私たちの乗っていた馬車以外にも襲われていたらしい。

 何が目的なのかは分からないけれど、今はチャンスなのではないだろうか?


 ちらりと兄様を見ると、遠目ではあったけど確かに頷いたのが見え、そのまま視線を上に向けると兄様の使い魔が急降下してきたのが見えた。

 私が衝撃に備えて身を固くした直後、兄様の使い魔が私を抱えていた男を急襲した。


「いでぇー!!」

「いたっ!」


 予想外の攻撃に男が私を放り投げた。

 そして、私も痛かった!

 着地失敗、尻餅をついたのである。


「いたたたた……」


 今日は本当に厄日なのではないだろうか。

 お尻をさすりながらよろりと立ち上がろうとしたとき、視界に影が映った。

「アスティ姉様は格好良くて可愛くて大好きです♪」

「もしかして、ピコが実家に帰る理由って」

「アスティ姉様に会いたいからですよ? シャナには申し訳ないけれど、私はノーラ様よりもアスティ姉様の方が素敵なのです!」

こればかりは、仕方ないですよね?

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