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ピコピコ恋愛白書【改稿前】  作者: 不知火 螢
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第7話  おうちに帰りましょう。……アクシデントはいりません。

「全く、何しているんだ」


 なんて言いながら兄様は私を抱き上げる。

 いつもはおんぶであるが、これから馬車に乗り込むのには抱っこの方が楽だからだろう。

 しかし慣れぬ方法に私は本日何度目になるか分からない硬直をする。


「ほらディック。ピコが驚いてるわ」

「ピコ? ピコリット、どうした?」


 どうしたもこうしたもないのです。抱っこなんてされてしまえば、先ほどまでのことを思い出してしまうではないですか!

 やっぱり小兄様はまだ成長期だから先生と比べると背が低いな、とか先生の方が筋肉ついてたな、とか!


「はわわわわわわわ……」

「落ち着けピコ! なんで混乱してるんだ! また暴走するぞ!?」


 興奮だけでなく混乱でも起こる私の暴走。まぁ、自分の感情を抑えられなくなると起こるわけだ。非常事態に恐怖で暴走して動けなくなるとか、よく考えると絶体絶命になるわけである。

 落ち着けー、落ち着けー、と自分に言い聞かせて小兄様の首に腕を回してしっかりと抱きつく。すんすんと兄様の匂いを嗅いで落ち着かせる。普段嗅ぎなれた匂いというのはなんか落ち着くのだ。

 ぽんぽん、と兄様がリズミカルに背中を叩き、それがまた落ち着くのだ。


「うぅー……にいさまー」

「どうした?」

「早くお家に帰りたいです……」


 今日はなんだか色々あって疲れた。一度暴走すると、根こそぎ体力を失うのだ。一日に二度も暴走なんてしてられるか。

 いつになく甘えてぎゅー! と兄様にしがみつく私に、小兄様も兄様の婚約者のアストリア様も苦笑気味だ。


「分かった分かった。妹がご迷惑をおかけしましたへイン先生。ほら、ピコ」

「……ご迷惑おかけしました」


 引っ付き虫の如く小兄様にくっ付いた状態で顔だけ先生へと向けてぺこりを頭を下げる。

 それに先生は苦笑して「担任だからね」と片手を上げる。問題ないということなんだろう。

 私を抱っこしたままの兄様とアストリア様が馬車に乗り込んだ。


「まったく、あれほど興奮しすぎてはいけないと言われていただろう?」

「でも兄様、あれで興奮するなというのは無理な相談なのです。兄様もアスティ姉様も何とも思わなかったですか?」

「そうね、確かに素晴らしい幻視の魔法だったわ。流石ディアス先生よね」

「あぁ。あれほどの魔法の使い手が担任であるなんて、俺はついてるよ。そういえば、ピコの担任はへイン先生なんだな」


 むむ、どうやら私を大興奮させた式典の責任者はディアス先生という兄様の担任らしい。

 いつか土下座で謝罪させるのだ、と密かに決心する。


「そうです。ヘイムダール先生のことですよね? 担任の先生となりました。そして初日から私の暴走を抑えてくれました。すごい先生ですね」

「そうか、一体誰が暴走を抑えたのかと思ったが、へイン先生だったのか。ピコの魔力を一人で押さえてしまえるとは、やはり先生はすごいな。へイン先生といいディアス先生といい、素晴らしい教師に恵まれたな。おまけにクラスメイトにはノルディークまでいるし、今年の俺は付いている気がする」

「ノルディーク?」

「ノルディーク・セレンディアという、魔法も剣もすごい同級生が居るのよ。ディックは彼に憧れているのよ」


 なんと、兄様が憧れる同級生がいるのですか。

 兄様の膝の上で驚いて兄様の顔を見上げると、小兄様は少し照れたように視線を外した。剣も魔法も、というのは我がファータ家の目指すべきところではあるので、憧れというか目標としているのだろう。

 兄様嬉しそうだなー、なんて思っていると、ガタン、と大きな音を立てて馬車が停止した。


「ディックもやはりファータだね。ディアスもセレンも感心していたよ」

「うちは基本、みんな魔法バカですからね。ディアス先生が担任だって本当に嬉しそうでしたよ」

「エルとシェールはディアスが担任だと知ったときは酷く意気消沈していたようだけどね」

「……魔法バカですから」

だから、基本みんな先生のことが大好きなんですよ。

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