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ピコピコ恋愛白書【改稿前】  作者: 不知火 螢
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第5話  6歳でもレディなのです。……中身はアラフォ、なんでもありません。

 そう言えば今は何時なんだろう。窓から見える外はまだ明るいけれど、今日は歓迎式典の後は交流会的な食事会が用意されており、それが終われば解散のはずだ。

 そんなことをぼんやりと考えていたらくぅ~っ、と私のおなかが鳴り、しばしの沈黙の後、ぷっ、と先生が笑った。


「むー、レディのおなかの音を笑うとは失礼ですよ、先生。こういうときは聞かなかった振りをするのが紳士です」

「悪かった」

「笑いながら言っても誠意を感じません!」


 顔が思いっきり笑ったままである。

 普段であればお腹がなってもまったく恥ずかしいとは思わないとういう、乙女心が完全に死んでいる私なのだが、今日は珍しく乙女心が機能しているらしい。なんか、恥ずかしい。


「歓迎式典後の食事会もそろそろ終わって皆帰るころかな。お腹は減ってるかもしれないけど、残念ながら食事をとる時間はなさそうだ」

「そうですか……」


 仕方がない、家に帰ったら夕飯前に何か軽く作ってもらおう。

 興奮し過ぎて倒れて食べれなかったと正直に告げれば……お説教が待ってるか。

 うむ、間食は諦めよう。

 そんな私の決意に反対するようにもう一度、お腹がなり、ちろりと先生を見れば、やはり笑いそうになっていた。


 ……案外、この先生は顔は良くてもイイ人止まりになる類の人なのかもしもしれない。


「ご飯は諦めます。今日はありがとうございました」


 このままいつまでもベッドにいるわけにもいくまい、とベッドを降りて靴を履く。

 さてでは帰るかな、と一歩踏み出したところで膝に力が入らずにそのまま崩れ落ちた。


「ピコリット!」

「あり?」


 立ち上がろうとするが力が入らない。

 何でだろうと首を傾げかけ、すぐに答えに行きつく。

 意識を失うような高熱を出しておいて、体に何の影響もないわけがない。急激に体温が上昇したのち、やはり急激に体温が下降したのだ。体が悲鳴を上げない訳がなかった。


「むぅ、立てない」


 床に手をついて立ち上がろうにも、肘にも膝にも力が入らないのだ。

 しかし立たねば帰れない! 最終手段は匍匐前進か!? いやあれも腕の力は必要だ。

 なんて考えていたら。


「わっ!?」

「まだ体が言うこと聞かないんだろう? 無理はダメだ」


 なんと、先生に抱っこされました!

 突然のことすぎて反応できずに硬直する私をよそに、先生は私を抱っこしたままそのまま保健室的な場所から移動する。

 日頃、魔力暴走後の移動方法は家族のおんぶだったので、抱っこは流石に恥ずかしい!


 オマケになぜか片腕での座り抱っこなのでバランスが微妙に悪く、かといって何処にも掴まらないなんて選択肢はないので、私は勢いに任せて先生の首に抱きつく形でどうにかバランスを保つ。

 しかし、抱き付くことによりこれまで以上に先生の顔が近くなり、私は兎に角羞恥心との戦いだった。


 校舎を出たところでもう大丈夫だからと言って降ろしてもらう。

 本当はまだ少しだるいが、このまま人前でまで抱っこ出移動は流石に勘弁だ。一体どんな公開処刑だ。

 代わりに手を繋ぐこととなったが、ふ、抱っこという試練を乗り越えた私に、手を繋ぐなどは朝飯前だ。

 ……嘘です、ちょっと恥ずかしかったです。

「いきなりの抱っこはビックリでした」

「よくシャナを抱っこしてたから、つい……」

「私の純情な乙女心を弄ばれてました!」

「人聞きの悪いことを言うんじゃない!」

でもあながち間違いでもないですよね?

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