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宰相閣下と行儀見習の娘  作者: 春隣 豆吉
第2章:周囲にはいろいろな人がいる
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2.魔道士は図書室にいる

幽霊?いいえ魔道士です。の巻

 今日は当主様を手伝って机の整理だ。仕事大好きな当主様を心配して国王様が週に2回は休むようにと厳命したらしい。

 ベッドの隣にある執務机は書類と魔法石で埋もれていて、はっきり言って当主様しかどこに何があるか把握していない。

 机の上に物が置けなくなる頃、当主様が「エマ。そろそろ机の上の整理をするから、手伝うように」って言い出す。


 私は箱に「残すもの」「捨てるもの」と書くと、「当主様。こちらに仕分け箱を置きましたから、まずはどんどん分けていきましょう」と箱を指差した。

「わかった」

「あとで見直してくださいよ。当主様は前も混ぜて大変なことになったじゃないですか」

「それは以前の話だろ?エマは変なことばっかり覚えているんだなあ」

 片付けをもっと早くしてればこんなことには・・・って言いたい。でも、当主様にあんまりキツイこと言うと、なぜか私がアルテアさんに怒られる。理不尽な。

「・・・エマ。またろくでもないこと考えてるだろ」

「片付いたらお茶を用意しますね、当主様。今日はコーヒークリームのケーキですよ。」

「くるみもついてる?」

「もちろん。昨日作っておきましたから今日が食べごろです」

「それは楽しみだな・・・しまった、図書室に本を返してなかったか・・・」当主様が本を何冊か見つけてしまったという顔をした。

「当主様。私が戻してきますから、片づけを続けてください。本はそれだけですか?」

「うん、そうみたいだ。悪いね、エマ」当主様から本を受け取ると私は図書室に向かった。


 公爵家の図書室は常に涼しくて本に優しい環境だ。天井まで届くかと思われるこげ茶色の本棚がいくつも並び、塵一つない。エンジ色のカバーがかかった大きめなソファと夜にも読めるようにサイドテーブルには読書用のランプ。書き物机なども置いてある。

 当主様が部屋に持ってきた本は「経済と配慮」と「王国貴族家系図」

「さて・・・まずは“経済と配慮”ってどこの棚かな」

「それはここから3番目の本棚の、上から4番目だね。台を持っていかないと届かないよ?」と声がする。

「まあ、ありがとうございます・・・・ん?」

 今、図書室って私しかいないはず。じゃあ、今の声は・・・・私がきょろきょろしていると、「こっちこっち」となぜか本棚から声がする。そして、目の前にいきなり水色の髪の毛の男の人が・・・私は叫ぶことなく意識が遠のいた。


「エマ!!おい、エマ!!しっかりしろ!!」

 誰かが私の顔を軽くはたく・・・・・・

「顔をはたかないで~・・・」目を開けると当主様。

「え!当主様??ええええっ!!!」私があわてて飛び起きると、私は図書室のソファの上にいた。

「あれ?私、本棚の側にいたのに・・・あ!当主様!!図書室に幽霊でたんですよ!!」

 私がまくしたてると、当主様が「エマ、落ち着け。それは幽霊じゃない・・・トビー、出てきて謝罪しろ。」とちょっと笑いながら私を落ち着かせてくれる。

 すると「気がついてよかった。さっきはごめんね」と水色の髪の毛をした男の人が現れた。


 クールな切れ長のワインレッドの目が特徴な、端正な顔立ち・・・でもどうして髪の毛が水色・・・私が凝視しているのに気がついたその人は「これは魔法で髪の色を変えてるだけ。本来はワインレッドだよ。初めまして、私はトビアス・ブランデル。王宮で魔道士をしてて、セオやハルとは幼なじみなんだ。私のことはトビーって呼んでくれればいいからね」

 魔道士のトビーって・・・あれ?以前にラルフが言ってた・・・

「あ!変人の魔道士!!」言ってから思わず口を押さえる。

「きみの名前を教えてくれる?」トビアスさんが、笑いをこらえている当主様を無視して私に名前を聞く。

「は、はいっ。私はエマ・アリンガムと申します。」

「じゃあ、エマって呼ぶね。よろしくエマ」

「は、はい・・・え?」

 そういうとトビアスさんはいきなり私に近づいたかと思うと、いきなり頬にキスをしてきた。

「は?な、何ですか?!」

「トビー!!」

 固まる私と、ぎょっとする当主様を見て、なぜか面白そうなトビアスさん。

「エマ。今のは挨拶代わり。さっきの変人の魔道士って誰から聞いたのかな・・・まあ、そういうことをいうのは一人しかいないけどね。ラルフは私の従兄弟なんだ。」

「従兄弟・・・」あんまり似てないかも。ラルフって茶色の目がくりくりしていていかにも快活って感じだもの。あ、でも髪の毛の色はワインレッドで同じなんだ・・・。


「ところで、トビー。お前何しに来た。どうして普通に玄関から来ない」当主様がトビアスさんに向き直った。

「久々にハルに会ったら、セオの行儀見習の料理を食べたと言われた。で、セオに俺にも料理を食わせてくれって頼みに行ったら休みだってラルフに言われてさあ。

 前にここに来たときに、行き来できるように王宮の図書室と魔法陣でつなげたから、さっそく使ってみたわけ。そしたら女性が一人で重い本を抱えてきょろきょろしてるじゃないか。声をかけるのが礼儀だろう」

「人の家で何やってんた。まったく」そういうと、当主様はため息をついた。


 その後、応接間で当主様たちにコーヒークリームのケーキを出し、私は片付けの続きをするためにそこから離れた。それにしてもさっきは驚いた・・・思わず頬をさわってしまう。


-その頃のセオとトビー-

「ん~~、ハルが言ってたとおりだ。エマの作るお菓子は美味しいね」

「それはよかったな。ところで、どうしてエマに防御魔法をかけた。」

「彼女の肌はすべすべだな・・・いい香りもするし。そんなに睨むなよ。ちょっと彼女の周囲が慌しくなりそうだから予防にね」

「エマのことは私が守る」

「そのセリフは本人の前で言ったほうがいいぞ。でもセオは肝心なところで踏み込めないからなあ」

「うるさい」


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!



新キャラ二人目、魔道士です(変人byラルフ)。

もうちょっとエマと新キャラを遭遇させます。

第二章はキャラの顔見世ですね。

もうちょっと話を進行させたいんですが・・・

ストックが~・・・ほほほほっ


のんびりお付き合いいただけると嬉しいです。

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