7:神様のいうとおり
3年後の公爵夫妻。
国王様の結婚が決まった。
お相手は親交のある国の第3王女で、王太后様の見合い攻勢を無視できなくなった国王様が渋々お会いしたら、思いのほか気が合ったらしい。
王太后様は二人が気の合ったのを見ると、機を逃してなるものかと早急に式の準備を進め、見合いから半年後の今月、挙式が決まったのである。
セオとトビーさんいわく「王太后様はハルにお見合い攻勢をかけはじめた時には準備万端だった」のだそうだ。
「あーあ、とうとう黄金の貴公子様も結婚してしまうんですねえ・・・。残念です。」
私のドレスや小物を整理しながらテッサがため息をついた。
「残念って・・・テッサ、あなた結婚したばかりの夫がいるでしょうが」
思わず私が口を出すと、テッサは「そりゃそうですけどね~・・・・って、エマ様!服の整理は私がしますから、エマ様は指図だけしてください!
今日はなんだか調子が優れないって言ってたじゃないですか」と私がドレスを箱から出そうとする手を止めた。
「大丈夫よ~。たいしたことないわ」
「だめです。おとなしく座っていてください」
結婚して3年がたち、私は屋敷の皆から「エマ様」と呼ばれることと皆を呼び捨てにすることもなんとか慣れてきた。だけど、人に指図するのだけはいまだに慣れない・・・。
「ねえテッサ、国王様の挙式に着るドレスはいつ出来上がってくるんだっけ。」
この中のドレスでもいいと思うんだけどなあ・・・どれもきれいなのに・・・ずらっと並んだ色とりどりのドレスを見た。
「明日の午後にはデザイナーが持ってきます。・・・エマ、あきらめたほうがいいわよ。 あ。そろそろ、あのおしゃべり夫人がお見えになる時間です。エマ様、調子が悪いならピエルさんに言ってお断りしますか?」
時計を見ると、確かに来客の時間が迫っている。
「大丈夫よ。着替えを手伝ってくれる?」
私はそういうとゆっくり立ち上がった。
ベアズリー侯爵夫人はいつも社交界のゴシップを私に教えに来る。私は興味がないけど、これも付き合いだと割り切っている。
「そういえば、もうご結婚されて3年たちますのね。」
「ええ、おかげさまで」
「それで跡取りはまだですの?」
この発言も、いったい何度目だろうか・・・自分がどれくらい同じことを言っているか彼女は気づいてないらしい。
「はい・・・ええまあ」
その後、私の返事を無視して侯爵夫人は「跡取りの重要性」といつもの社交界の噂話をひとしきりして帰って行った。
「なんなんですか!!あのベアズリー侯爵夫人って!!」
テッサはお茶を片付けながら憤懣やるかたない様子だ。
「お義母様も言ってたじゃない。彼女は自分の言動に対して考えのない人だって。あんまりテッサもかっかしないのよ。」
「だって!!エマ様・・・もう今回であの発言は5回目です。当主様か大奥様に報告したほうがいいです!!」
「私は平気よ。だから、テッサも言ってはだめよ?さてと、そろそろ夕食の下ごしらえをしないとね・・・」と立ち上がると、くらっと目まいがした。
「エマ様!?」
テッサの声が遠くに聞こえる・・・・。
目を開けると自分の部屋で、そこにセオだけじゃなくてなぜか実家の両親と義両親までそろっていて、なぜか皆興奮をおさえているようだ。
控えているテッサに目をやると、テッサもなんだかにこにこしている。
「セオ?ずいぶん帰りが早いのね・・・って、え?どうしてお父様たちがいる・・・」とここで私はセオにぎゅっと抱きしめられた。
「な、なに?」
「エマ。ありがとう」
「は?なんで?」
「セオ。話してあげないと。」双方の両親からせっつかれたセオから聞いた言葉。
私は嬉しくて、まだ目立たないおなかに手をあてた。
ベアズリー侯爵夫人は、お義母様リストから外れ出入り禁止になり、セオの過保護ぶりに少々あきれながらも無事に娘を出産することができた。さらに息子も生まれ、まさに神様のいうとおりになったのである。
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この話で「宰相閣下」は完結済とさせていただきます。
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