3:3人が出会った日
ラインハルトがセオとトビーに出会う話。
ぼくはラインハルト・ティッテル、6さい。
周りの人はぼくのことを“でんか”と呼び、父上と母上は“ラインハルト”と呼ぶ。ちなみに怒られるときは“ラインハルト・ティッテル”と正式名称で呼ばれる。
ある日、“養育係”のじいが、「今度、殿下(じいはぼくのことをそうよぶ。)の学友になる者たちを連れてきますからね。楽しみにしていてください」と言った。今度っていつ?って聞いたら、じいは一週間後ですよと笑って教えてくれた。
学友というのは、父上にきいたらそれは一緒に勉強したり遊んだりする同じ年齢くらいの友達のことだと教えてくれた。
ともだち・・・一人だとときどきうんざりしてしまう勉強も楽しくなるといいな・・・その日から、ぼくは“がくゆう”が来るのを指折り数えて楽しみにしていた。
「殿下。この二人が今日からご学友として一緒に勉強することになりました。セオドール、トビアス。殿下にあいさつを」
じいに促されて、まずはセオドールと呼ばれたほうがお辞儀をした。
「セオドール・キンケイドです。6さいです。よろしくおねがいします、でんか」
次にぼくにお辞儀をしたのは、トビアスと呼ばれたほうだ。
「トビアス・ブランデルです。6さいです。よろしくおねがいします、でんか」
「殿下。お聞きのように二人とも殿下と同じとしです。二人の父親はそれぞれキンケイド宰相と、ブランデル魔道士です。二人は父親とともにほぼ毎日こちらに来る予定です。さて、殿下。そろそろ今日の勉強を始めます。殿下、セオドール、トビアス。本を開きなさい」
「「「はい」」」
勉強じゃなくて、ぼくは二人のことをもっとしりたいなあ・・・。
休憩時間になり、レリアがお茶とお菓子を持ってきてくれる。いつもなら、じいも一緒に休憩をとるんだけど、じいのところに父上から使いが来て部屋から出て行った。レリアもいないので、この部屋にはぼくたちだけだ。
ぼくたちは黙々と菓子を食べ、お茶を飲んだ。
話しかけたいけど、何を話せばいいのかなあ・・・・。そうだ、ふたりは家で何をして過ごしているのかな。
「ね、ねえ!ふたりともいえではなにをしているの?」
ぼくが二人に話しかけると、二人はちょっと驚いたもののほっとしたような顔をした。そしてセオドールが口を開いた。
「ぼくは、けんとまほうをべんきょうしてます。」
「ぼくはまほうのくんれん。それをしないときはほんをよむのがすきだよ」
「トビアス、ちちうえからでんかにはけいごをつかえっていわれただろう?」
トビアスのくだけた言い方をセオドールが注意した。
「あ・・・しまった」トビアスがぺろっと舌を出した。
「セオドール、トビアス、ぼくにけいごはつかわないで」
「「え?」」
「けいごって、ときどきつかれちゃうんだ。ふたりはそんなことない?」
「「・・・・」」二人はぼくと同じみたいで黙ってしまう。
「だからさ、ぼくたちだけのときはふつうにはなそうよ。ね?」
「ですが・・・ちちうえにしかられます」セオドールが渋る。
「だいじょうぶさ。ぼくがおねがいしたんだもん。キンケイドさいしょうだって、おこらないよ。だから、ね?」
セオドールとトビアスは互いに顔を見合わせて小声でなにか相談していたが、結論が出たようでトビアスがぼくのほうをみた。
「でんか。ぼくたち、ぼくたちとでんかのときだけはふつうのことばではなすよ」
「ほんとう?」
二人は笑ってうなずいた。
「でんか、ぼくのことはセオでいいよ。」
「でんか、ぼくはトビーでいいよ。トビアスってよばれるのって、いたずらがばれてしかられるときだけなんだ」
「わかった。セオ、トビーってよぶね。」
「でんかはふだん、なにをしているの?」
「ぼくもセオとおなじだよ。ただ、ちちうえじゃなくて、じいがおしえてくれるけど」
「そうなんだ。あのじいってさ、まどうしちょうだろ?おっかなそうだよなあ。」トビーが声をひそめる。
「トビーがいたずらしなきゃ、なにもいわれないとおもうぞ。」
セオの指摘に、ぼくは思わず笑ってしまった。
「笑うなんてひどいなあ、でんか。そういえばでんかって、だれでもでんかってよぶの?」
「ちちうえとははうえ、レリアはぼくのことをラインハルトってよぶよ」
「ふうん・・・。ラインハルトかあ・・・うーん・・・よし!!ハルにしよう!!セオ、きょうからでんかのことをハルってよぼう。よし、きまり。」
「なにいってるんだよ、トビー。でんかにあだなをつけるなんて、ふけいざいだぞ」
「だってさあ、ぼくはトビーで、セオドールはセオだろ?でんかだけ“でんか”ってへんじゃないか」
「でんかはでんかなんだからしょうがないだろ」
セオはそう言うけど、ぼくはとてもくすぐったいような笑い出したくなるような気持ちでいっぱいだった。ハルかあ・・・ラインハルトからハル・・・・なんかとてもうれしい。
「トビー。ありがとう。セオ、これからはぼくのことは“でんか”じゃなくて、ハルだよ。いいね?」
「ほらみろ、セオ。ハルはよろこんでるじゃないか」
「でも、ハルってよぶのはむずかしいよ。たしかに、ハルのほうがよびやすいけど」
じいが選んだ“学友”は、まるきり正反対の性格をしてるけど、二人ともぼくにたいしてふつうに話しかけてくれる。
この二人となら、ずっと友達でいられる・・・大人になってもこんな感じでいられたらいいな。ううん、いるにちがいない。ぼくは、なんだか未来が見える気がしていた。
読了ありがとうございました。
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子供時代です。いつもより”ひらがな”多いです。
3人は子供の頃から、なんとなく現在の片鱗がみえるように
書いたのですが、うまく表現できてるかなあ・・。




