4.宰相閣下と行儀見習いの娘-新婚旅行-
くつろぐ二人。の巻
どこまでも続く柔らかい緑の芝生の上。
「エマ。このへんにしようか」
「そうね。セオ、敷物をお願い」
セオが敷物を広げて、私はそこでバスケットを開けた。
トマトブレッドにたまねぎのパイ、煮込んだ豚肉、白身魚のオーブン焼き(野菜付)、豆ときゅうりのサラダ。そしておやつはブルーベリーのクッキー。
「すごいな。どれも美味しそうだ。」
「ふふ。ちょっとがんばってみました。食べましょう?」
「そうだな」
私たちはアリンガム家所有の別宅に新婚旅行に来ている。はじめは公爵家所有の別邸にする予定だったんだけど、セオが「二人きりでのんびりしたい」と父に頼んだらしい。
ここは、私が誘拐から解放されたあとにのんびりしていた場所だ。そういえば、ここに来たときに神様からの助言で、初めてセオのことをちゃんと考えたのだった。
食事を終えて、二人でのんびりと風景を眺める。
「ここはよく風が通る。気持ちいいな」
「そうでしょう。小さい頃は長い休みのときはいつもここに来てたの。」
「食事も美味しいし。確かにエマじゃないけど、寝転がりたくなる」
「そういえば、あのときのセオは最低だったわね。人の寝顔を黙ってみてるなんて」
「だからそれは誤解だって・・・。アリンガム殿から聞いてここに来たら別宅にいなくて焦ってこの辺をうろついてたら、エマが芝生で寝てたんだ。」
セオの焦った顔が面白くて、私は思わず噴出してしまう。
「エマ、笑うな」
「ご、ごめんなさい。セオの焦った顔が面白くて」
「はあ?・・・・じゃあ、エマの焦った顔も見ていいよな」なぜかセオがニヤリとした。
「え?」
「ここって、誰も来ないんだよな」
「そうね、私有地だし。ちょっと、セオ??」
セオは私をひざの上に横抱きにすると、キスをしてくる。始めは軽いキスだったのに次第に深くなってくる。
「ん・・・・んんっ?だ、だめだめっ!!」
セオが私のスカートの中に手を入れようとしたので、私は慌ててセオの手を止めた。
「誰も来ないんだろ?」セオは不満そうだ。
「そういう問題じゃないの!!人は来ないかもしれないけど、その・・・昼間からなんて・・・・しかも、外なんて・・・」恥ずかしい、私はまだそこまでのレベルに到達してない。
セオのひざの上で思わずうつむいてしまう。本当はひざから降りたいくらいなんだけど、セオの腕にがっちり固められていて動けない。
「なるほど。確かに私有地で誰も来ないとはいえ、不意に現れるということはあるな」
セオが納得したようなので、私は顔を上げた。
「じゃあ急いで荷物を片付けようか」
「は?」
「さすがに昼夜をひっくり返す魔法は取得してないからな」
セオは私をひざからおろすと敷物を片付けバスケットを持った。まだ天気はいいし夕方まで時間があるけど・・・・まさか。
「セオ?」
「さて、別宅に帰ろうか。外じゃなければ大丈夫だよね?」
「え。ええええっ。」
セオは私を抱き寄せ移動魔法をかけた。
「・・・・もう。セオったら」
私は隣のセオを見上げた。
「だって新婚旅行だし。こうやってエマが腕の中にいると落ち着くけど、どきどきするんだ」
「私も。セオといると落ち着くけど、どきどきするの」
思わずぴたっとくっつくと、抱きしめる腕が強くなる。
「エマ。」
「セ、セオ。ん・・・もう無理・・・・」帰ってきたときには窓から陽射しがさしていたのに、今は夕方と夜の境目なんですけど。
「大丈夫」
だから、その根拠はいったいどこから・・・セオに聞く余裕は私にはなかった。
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あと一話で本編完結となります。




