2.陛下と魔道士の会話
友人たちは何を思う。の巻
トビー視点です。
ハルと俺は結婚パーティーにちょっと遅れて顔を出した。俺たちを見つけたラルフが駆け寄ってきて「遅いですよ!!二人とも。もうすぐファーストダンスです」と知らせてきた。
「そうか。やはり俺の予測は当たってたな。ハル、どうだ」
「お前さ、いくら女性に囲まれるのが嫌だからって遅刻する時間まで計算するか普通」
「ハル。俺だけのせいにするのか。だいたい俺の計算にはお前も乗ってただろうが」
「・・・・お二人とも、そんな理由で遅れてきたんですか」ラルフは明らかにあきれている。
セオがエマの手を取って、広間の中央にやってくる。俺たち招待客はそんな二人を少し遠めに囲みながら二人の様子を見守っている。
音楽が流れ、セオが左手でエマの右手を握り、背中に右手をそえて優雅にステップを始めた。エマが着ている白いドレスは彼女にとてもよく似合っていて、セオは見るからに上機嫌。
「・・・・セオ、いやに上機嫌だな」
「まあ、ようやくエマと結婚できたからな。いろいろあったからねえ」
「・・・・その“いろいろ”って全部俺たちがらみだよな、ハル」
「ん?まあ、それで二人の距離が近づいたのだからいいじゃないか。だいたい、エマのほうは最初全然セオに脈がなかっただろ。それをセオが振り向かせた。違うのか?」
「それはそうかも。しかし、あいつが女性にあんなに粘っていたのを俺は始めてみた」
「トビー。お前には、その粘りがもう少しあってもいいんじゃないかと俺は思うが?」
「・・・ハル。人のこと言えないだろう。王太后様が魔道士長に“ラインハルトを結婚する気にさせる魔法ってないのかしら”と冗談で言ってたのを俺は聞いたぞ。」
「困ったな。たぶん、それは冗談だが・・・3割くらい本気かもしれん」
「ハル様もトビーも、おとなしくダンス見ましょうよ」
「ラルフ、お前はいいよなあ。まだ若いから結婚話もないだろう」
「ラルフ、好きな女性がいるんならアドバイスしてやろうか?」
「・・・お二人よりセオ様からのアドバイスのほうが有益そうですよ。結果を出してますから」
「「確かに」」ラルフの言葉に俺たちはうなずいた。
ダンスが終わり、会場は食事をする人間とダンスフロアーでダンスをする人間、はたまた出会いを求める人間に分かれる。
ハルがパーティーに来るとたいていは未婚の令嬢に囲まれたり媚を売りたい貴族が群がってくるのだが、そこはキンケイド公爵家とアリンガム商会。今日の結婚パーティーも双方の家が厳選した招待客しか来ていないため大きな混乱は起きていない。
エマとセオが招待客に挨拶をしてまわっており、自分たちにも近づいてきた。
「ハル、トビー。ラルフもよく来てくれたな」
「おめでとう。エマ、そのドレスすごくきれいだよ」
「ありがとう、トビーさん」
「エマ。おめでとう。セオにはもったいないな」
「ありがとうございます、国王様」
「エマ、どうしてトビーのことは名前で呼ぶのに、私のことはハルって呼ばないの?不公平だなあ」
「え、それは、その・・・・」
エマが困った顔をしてセオを見る。
「ハル。エマをからかうな。」
セオはエマをすかさずかばう。
「まあ、今は国王様でいいけど。そのうちハルって呼んでほしいな」
「ど、努力します」エマからなんとか了承の返事をとりつけたハルはなんだか嬉しそうだが、セオの顔が怖い・・・。
俺とハルは、セオのエマが絡んだときの許容範囲の狭さを改めて実感したのだった。いつもの寛大さはどこいった、セオ。
そんな場面はあったものの、パーテイーそのものはハルも俺もリラックスして楽しむことができた。
しかし、ハルの場合は王太后様、俺の場合は先代・・・つまり俺の父から「セオも結婚したんだから、お前もいい加減ちゃんと考えろ!!」と大量の見合い話を持ち込まれてしまい、逃げ回るはめになったのはまた別の話である。
読了ありがとうございました。
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ここまでトビー視点が一話もなかったので、入れてみました。
この二人、どっちが先に相手を見つけるんでしょうか。




