4.二人で単純作業
エマ、セオにお願いをする。の巻
ダンスの練習とともに、私は王国の歴史や他国との関わりも勉強している。学校にいた頃にもっと真面目に歴史を勉強しておきゃよかった・・・と後悔しても後の祭り。
今日は授業がない日なので、私はセオに昼食を届けた後で今朝届けられた大量の豆の下処理をすることにした。
誰もいないテーブルに豆をどんと乗せて、皮をむいていく。ああ、単純作業って楽しいっ!
豆の処理に集中していると、誰かが正面に座って豆の入ったかごに手を伸ばした。
誰が手伝ってくれてるのかしら・・・ふと顔を上げると、そこにはセオがいた。
「セオ?仕事はどうしたの?」
「今日はそんなに忙しくないんだ。これ、全部むくのか?」
「そうだよ。今日の夕飯に使って残りは瓶詰めにするの。」
「そうか。じゃあ、俺も手伝う」
「いいわよ。仕事に戻らないと、国王様が探してるかも」
「ハルには今日の処理分をたっぷり置いてきたから、俺を探している暇はないはずだ」
「あっそお・・・。」
「なあ、エマ。いろいろ覚えることがあって大変だろう」
「え?」
「それに、今まで同じ立場だったアルテアやピエルを呼び捨てにするのに抵抗があるのは当たり前だ」
「セオ・・・」
「でも、エマならできると俺は思ってる。実際、ダンスと歴史以外のことは教えなくていいと両親が喜んでいた。さすがアリンガム商会の娘だと感心していた。」
「・・・実家の商売柄、他国や社交界の動向は掴んでないと大変だから。セオ、手がとまってる」
「あ、すまん」
一人でむくより、二人のほうが断然早い。あっという間に豆がボウルいっぱいになった。
「セオ。おかげで予定より早くむけたよ。・・・・ねえ、私を心配して来てくれたんでしょう?ありがとう」
「エマが疲れた顔をしているとアルテアが言ってたから。」
アルテアさん、どこで見たんだろ。もしや朝の大あくびを見られたのかな。・・・・不覚。
「大丈夫だよ、セオ。今は覚えることがたくさんあって頭がパンパンだし、アルテアさ・・・アルテアやピエルさ・・・ピエルや屋敷の皆が協力してくれるから」
「協力?」
ここ最近なぜか屋敷の皆は私が呼び捨てにしないと返事をしなくなったのだ。そして私を呼ぶときも「エマ様」と呼ぶように変化していた。
最初はさびしかったけど、「エマが早く呼び捨てに慣れるようにっていうアルテアさんの提案なのよ。あのさ、エマは身分が変わったからって急に傲慢になったりする性格じゃないのは皆分かってる。だから、この屋敷の人は誰も当主様の結婚に反対しないのよ。だから、エマも私たちの期待に応えてよね」
台所にこっそりやってきたテッサから話を聞いて、私は皆の気持ちが身にしみたのだった。
「そうよ、協力してくれてるの。だから、セオも協力して?」
「は?」
「・・・・これからドレスを作り終わるまでは、跡をつけないで」
「はあ?どういうことだ」
「ドレスを合わせるときに、首や胸元に跡があるのはどうかと思う」
言ってるこっちが赤くなってしまう・
「あ・・・」私の様子を見たセオは合点がいったようだが、納得はしていないようだ。
「じゃあ、跡をつけなきゃいいのか」
「そういう問題じゃないっ!!」
「・・・理性を総動員しろってことか。俺の癒しの時間なのに」
セオは納得いかないみたいだけど、「しょうがない・・・楽しみは先にあると思えば、仕事の速度が上がるか・・・」と自分に言い聞かせていた。
セオのいう「楽しみ」については絶対聞かないほうがいい・・・私は聞こえないフリをした。
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単純作業は頭が空っぽになりますよね。
ところで宰相がエマに何をしているかは
想像にお任せって感じです。




