3.優雅にダンス
エマ、ダンスを練習する。の巻
私は最近社交ダンスの練習をしている。それは奥様から聞いた公爵家の決まりが発端だった・・・。
それにしても、社交ダンスって優雅だけど、大変・・・・。
「エマ、結婚式の準備は進んでいるのかしら?」
奥様に聞かれたのは、ブランジーニ侯爵騒動から一週間たった頃だ。
「いえ。まだ何も・・・何から始めるべきなのかお伺いしようと思っていたくらいです」
「そうよね~。陛下に妙な頼まれごとをされて大変だったと聞いてるわ」
「はい。でも別人みたいになれて結構楽しかったです」
そう言って、私は髪と瞳の色を変えて潜入した話をすると「まあ!」と興味深げに瞳を輝かせていた。
「話を戻すとね、私も実は自分で準備ってしてないのよ。せいぜいドレスを合わせるくらいしかしてないの。もうね、だいたい周囲の人間のほうが盛り上がってるから任せられるものはもう任せていいと思うわ」
「そうなんですか」
「そうなの。そういうわけで、エマ。あなたたちの式の準備は、私とフェイス。それにアルテアとピエルで進めるのが手っ取り早いと思うわ。」
「え。えええっ!!」
「大丈夫。あなたにどんなものを用意したのか逐一見せるから、気に入らなかったらどんどん意見を言ってちょうだい。」
ひえ~~無理!!母にならともかく、あとの3人には無理ですって!!
しかし、奥様はそんな私の対応を見透かしていたようで、いつになく厳しい感じで私を見た。
「エマ。公爵夫人になったら、上に立つことに慣れないといけないわ。アルテアやピエルのことも呼び捨てにしないとだめ。そうしないと、この屋敷のものはあなたを分かっているから大丈夫だけど、外部の人間からはあなたが“使用人になめられてる”と思われるの。それってセオにもよくないわ。分かるかしら」
「は、はい。なんとなくは」
「エマ。この準備期間のうちに、あなたには公爵夫人としての自覚を持ってもらわなくちゃいけないわ。だから、私と行動をともにしてもらいますよ」
「え」
「まずは、そうねえ・・・。エマ。あなたダンスできる?」
「ダンス、ですか。学生の頃に授業で習いましたけど」
「じゃあ初心者と言うわけではないのね。キンケイド公爵家では結婚パーティのときに新郎新婦が最初のダンスを踊る決まりなのよ」
「・・・・はい?そんなことセオから聞いていませんけど・・・」
「やだセオったら、言っていないの?あ、でも本人も知らないかも。わかったわ。エマ、まずはダンスを練習しましょう」
「・・・・はい。わかりました。あ、セオの昼食の準備とかがあるのですが」
「あなたの昼食はセオの楽しみだとピエルから聞いてるわ。だから、午後から夕食の時間までびっちり練習をしましょう。いいわね?」
奥様がにっこり笑った。
次の日から、ダンスの教師を前公爵様が引き受けてくれて、私は練習を始めた。どうして前公爵様が教師になったかというと、セオがダンス教師を雇うことに難色を示したからだ。
「・・・・私は、自分の息子が焼餅焼きだとは思わなかったよ」
「すみません・・・キンケイド様。」
「エマ。私のことはお義父さん、ベリンダのことはお義母さんだよ?さあ、もう一度ステップを練習しようか」
「はい・・・お義父様」
「うれしいなあ。娘とダンスが出来る日がくるとは」
しばらくステップの練習をしていると、そこに不機嫌そうな声が割り込んできた。
「父上、私がかわります」
「セオ、仕事はどうした」お義父様の問いに「今日の分はきっちり終わらせて来ました。やっぱり本来のパートナーと踊ってみないといけないと思ったものですから」さらりと答えるセオに、お義父様は苦笑した。
「エマ、踊ってみようか」
セオが私の腰に手を添えて、手をとった。
読了ありがとうございました。
誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。
ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!
いちおう、イメージはワルツです。
社交ダンスやったことないので、適当に・・・。




