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宰相閣下と行儀見習の娘  作者: 春隣 豆吉
第6章:陛下の微笑み
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閑話:エマとゲイリー

エマの痛み。の巻

 セオからゲイリーの処分を聞いたのは、ブランジーニ侯爵が自殺をしてから3日後のことだった。

「エマ。ゲイリーの処分が決まったよ・・・北の牢獄で15年の幽閉刑だ。」

「北の牢獄に15年・・・」

 王国には北と西に牢獄があって、西は比較的罪の軽い人が入り、北は終身刑や重い刑罰の人が行くのだと聞いたことがある。

「利用されていたとはいえ、侯爵の計画に一役買っていたようだしエマに対しての誘拐および軟禁の罪もあるからね。」

「そうですか。あの、バトラーはどうなるの?」

「バトラーに関しては、ゲイリーが最後まで“バトラーはずっと反対していて自分を止めようとしていた。”と言い張ってね。

 ところがバトラーは“私がゲイリー様をたきつけたのです”と言った。もっともゲイリーはそれを否定してね。バトラーが積極的に関わっていた証拠もないし、彼の処分はカルロ殿下がその身を預かるということで落ち着いた。」

「カルロ殿下がですか?」

「俺も驚いた。だけど、カルロ殿下が“伯父のせいで、一人の人間が人生を狂わせたのだから責任をとりたい”と珍しく強く主張してね。ハルもカルロがそこまで言うならと了承した。」

「・・・なんか、ブランジーニ侯爵と血がつながっているとは思えない発言ですね」

 だけど、カルロ殿下の人となりを考えると言い出してもおかしくない気がする。

「そこまで言うか。ま、バトラーのことは以上だ。それで、エマ。」

「はい?」

「ハルがエマの願いを叶えてくれるそうだ。ゲイリーに一発食らわせたいんだろ?やつは明日には北の牢獄に送られる。だから、会うなら今日が最後なんだが・・・どうする。」

 セオが私を見た。



 セオに連れられて、私は王宮の廊下を歩く。王宮の外れにある囚人と面会する部屋で、ゲイリーと会うことになった。

 私とセオが入ったその部屋は、真っ白い壁に簡素な茶色の机とテーブルがあるだけで窓すらもない。二人で黙って座っていると、警護騎士が両手に金属の腕輪をつけたゲイリーを連れてきた。

 騎士には外で待機してもらい、セオと私はゲイリーに向き合った。

 ゲイリーは私とセオを見て、一瞬驚いたもののすぐにいつもの表情に戻った。

「これはこれはエマ嬢じゃないか。久しぶりだね。相変わらずパッとしない容姿で」

「悪かったわね。・・・その腕輪は何?」

「ああ、これは魔法封じ。牢獄にいる間は取れないものだ。それで、きみは何の用事で来たの」

 私を見て、ゲイリーはクククと笑う。その笑い方は私をカチンとさせるのに充分だった。

「私の用事はね・・・・これよ」

 そういうと、私は立ち上がって、ゲイリーに近寄ると右手で頬をバチンとはたいた。

「痛いなあ。何するんだ。」

 ゲイリーが頬をおさえて恨めしげに私を見る。

「痛いなあ、ですって?この変態。人の髪の毛勝手に切ったあげくに3階から突き落とすなんてどういうことよ。あのときは死ぬかと思ったんだから!これくらい我慢しなさいよね!!」

「まったく凶暴な・・・おい、宰相。こんな女のどこがよかったんだ」

 ゲイリーは落ち着き払って座っているセオをにらみつけた。。

「おまえには一生かかっても分からないし、もったいないから教えないよ。バルフォア」

「特に知りたくもないからいいよ。まだ何か言いたいことはあるのか?」

「あるわよ。ゲイリー、私とロザリーは仲良くなかったけど・・・ロザリーはね、あなたに協力したせいで王都追放になったのよ。なんとも思わないの?」

「ロザリー?ああ、そんな女いたねえ。なるほど、王都追放になったのか・・・へえ。さて、もういいかな。これ以上きみたちに話すこともないし」

 そういうと、ゲイリーは勝手に騎士に合図をして部屋を出て行った。



「エマ。気がすんだか?」

「・・・・うん。付き添ってくれてありがとう。セオ、私、人をぶったの初めてだわ・・・心が痛いのね。もう二度としたくない。」

「そうか」

 セオが静かに私の手を握った。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


閑話として、エマとゲイリーの対面を書いてみました。

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