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宰相閣下と行儀見習の娘  作者: 春隣 豆吉
第6章:陛下の微笑み
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8.真実の間

華やかな花の結末。の巻


ダニエラ視点です。

「ダニエラ嬢。母上がお茶を一緒にどうかとのことだが、都合はいかがかな」

 陛下から誘われた私は心の中で「しめた」と思ったものの、それは表情に出さないようにつとめ「わたくしなどが王太后様とご一緒してもいいのでしょうか」と遠慮してみた。

「こちらこそ、母のわがままにつき合わせるようで申し訳ない」

 陛下が私にむかって、おどけて謝罪するのに思わず笑ってしまう。・・・そして、自分がしていることを少し後ろめたく思うのだ。



「ダニエラ嬢。陛下の命でお迎えにあがりました」

 そう言って屋敷に現れたのは、この国の宰相。

侯爵は付き添いとしてアイリーンを私につけようとしたのだが宰相から「王太后様には気の利いたメイドが何人もおりますから、ご安心ください。」と言われ、渋々引き下がった。

 王宮から来た馬車は確かに乗り心地がいい。それにしても侯爵の馬車に比べると装飾は地味だこと・・・・。

 王宮に到着すると、女官が現れて「宰相閣下。あとはこちらでご案内いたしますわ」と言い私は女官の後ろについて歩く。

 しばらく歩くと、女官が一つの部屋の前で立ち止まり、ノックをした。

「王太后様。ダニエラ・ブランジーニ嬢をお連れしました」

「そう。お通ししてちょうだい」

 ドアが開き、女官に続いて足を踏み入れる。そこには王太后様がにこやかに微笑んで座っていた。そして、隣には陛下、宰相、ブランデル魔道士、そしてカルロ殿下。

 宰相とはさっき別れたばかりなのに、どうして私より早くここにいるのだろう・・・・

 私の疑問が顔に出ていたらしく、宰相が「私は移動魔法でこちらに来ましたから、ダニエラ嬢より早くこちらにいるのです」と教えてくれた。


「本日はお招きに預かり光栄でございます。ダニエラ・ブランジーニと申します」

「ようこそ、ブランジーニ嬢。わたくしは、あなたとお話したいとずっと思っていましたよ。でも陛下がなかなか会わせてくれなくて。まったく困った息子だわ」

「母上。今はこうしてダニエラに会わせているではないですか」

「ふふ。そうね。許してあげます」

 親子の会話に誰も入れるわけがなく、私も周囲の人間も黙って座っている。

「そうそうダニエラ。あなたはブランジーニ侯爵の姪だそうね?」

 いきなり王太后様に話しかけられて、ちょっと驚いた。

「は、はい。そうです。私の母は侯爵の異母妹ですの。小さい頃になくなりましたけど」

「まあ。そうでしたの・・・・でも、おかしいわねえ・・・」王太后様は何かを思い出すようなしぐさをした。

「母上、何がおかしいのですか」

「ブランジーニ侯爵家の先代には、確かに本妻のほかに女性がいて、彼女との間に女の子が産まれているわ。でも・・・」

「でも、なんです?母上」

「その女の子は、10歳になるかならないかで亡くなったはず。ダニエラ。あなたはどなた?」

 そういうと、王太后様は私を静かに見つめた。

「わ、わたくし・・・・」いつもの私なら、いくらだって言い訳が出てくるこの口が、重苦しくて何も出てこない。いったい、どうなってるの・・・・

「ここから先は私が続けましょう。母上、もうここまでで結構ですよ。部屋に戻ってください。ここから先は私の出番です」

 陛下がそういうと、王太后様は「私に肝心なことを聞かせないなんてどういうことかしら・・・まったく、しょうがない息子だわ。ハル、あとで報告をまっていますからね」そういうと、王太后様は側に控えていた女官とともに部屋を出て行った。

 残ったのは、陛下・宰相・ブランデル魔道士・カルロ殿下・・・・私はどうなるのか。もう自分の正体はばれているんだろう・・・・どんな罰を受けるんだろう。


「ダニエラ嬢。これを聞いてみてくれ」

 そういうと陛下はテーブルの上に石を出し、手でふれた。すると、聞き覚えのある声が石から聞こえてきた。

 話の内容は、私について・・・・

 “そしたら用済みだ。また売春宿に売り払うさ。それともゲイリー、おまえに下げ渡してやろうか。あれはいい女だぞ”

 侯爵の言葉に体が凍りつく・・・愚かな男の夢につきあった結果がこれ?

 自分の馬鹿さ加減に笑い出したくなるわ。

「ダニエラ」宰相が私に声をかける。

「なによ」もう上品な言葉遣いなんか出てこない。もう侯爵は終わりだ。

「私たちに協力してくれたら、元の生活に戻らなくてすむようにはからうが?」

「え?」

 私が思わず宰相たちの顔を見ると、嘘をついている顔じゃない。

「ダニエラ。きみを売り払おうと思ってる男と、この国の宰相どっちを信じる?」

 私の正体を知っても蔑むでもなく淡々としているこの人たちは、私をだます必要がない。いっぽう、侯爵のほうは・・・・

「協力ってなにをすればいいのよ」

「きみの選択は正しい」私の言葉に陛下がにっこりと笑った。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


まずは、内通者を確保。




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