8.真実の間
華やかな花の結末。の巻
ダニエラ視点です。
「ダニエラ嬢。母上がお茶を一緒にどうかとのことだが、都合はいかがかな」
陛下から誘われた私は心の中で「しめた」と思ったものの、それは表情に出さないようにつとめ「わたくしなどが王太后様とご一緒してもいいのでしょうか」と遠慮してみた。
「こちらこそ、母のわがままにつき合わせるようで申し訳ない」
陛下が私にむかって、おどけて謝罪するのに思わず笑ってしまう。・・・そして、自分がしていることを少し後ろめたく思うのだ。
「ダニエラ嬢。陛下の命でお迎えにあがりました」
そう言って屋敷に現れたのは、この国の宰相。
侯爵は付き添いとしてアイリーンを私につけようとしたのだが宰相から「王太后様には気の利いたメイドが何人もおりますから、ご安心ください。」と言われ、渋々引き下がった。
王宮から来た馬車は確かに乗り心地がいい。それにしても侯爵の馬車に比べると装飾は地味だこと・・・・。
王宮に到着すると、女官が現れて「宰相閣下。あとはこちらでご案内いたしますわ」と言い私は女官の後ろについて歩く。
しばらく歩くと、女官が一つの部屋の前で立ち止まり、ノックをした。
「王太后様。ダニエラ・ブランジーニ嬢をお連れしました」
「そう。お通ししてちょうだい」
ドアが開き、女官に続いて足を踏み入れる。そこには王太后様がにこやかに微笑んで座っていた。そして、隣には陛下、宰相、ブランデル魔道士、そしてカルロ殿下。
宰相とはさっき別れたばかりなのに、どうして私より早くここにいるのだろう・・・・
私の疑問が顔に出ていたらしく、宰相が「私は移動魔法でこちらに来ましたから、ダニエラ嬢より早くこちらにいるのです」と教えてくれた。
「本日はお招きに預かり光栄でございます。ダニエラ・ブランジーニと申します」
「ようこそ、ブランジーニ嬢。わたくしは、あなたとお話したいとずっと思っていましたよ。でも陛下がなかなか会わせてくれなくて。まったく困った息子だわ」
「母上。今はこうしてダニエラに会わせているではないですか」
「ふふ。そうね。許してあげます」
親子の会話に誰も入れるわけがなく、私も周囲の人間も黙って座っている。
「そうそうダニエラ。あなたはブランジーニ侯爵の姪だそうね?」
いきなり王太后様に話しかけられて、ちょっと驚いた。
「は、はい。そうです。私の母は侯爵の異母妹ですの。小さい頃になくなりましたけど」
「まあ。そうでしたの・・・・でも、おかしいわねえ・・・」王太后様は何かを思い出すようなしぐさをした。
「母上、何がおかしいのですか」
「ブランジーニ侯爵家の先代には、確かに本妻のほかに女性がいて、彼女との間に女の子が産まれているわ。でも・・・」
「でも、なんです?母上」
「その女の子は、10歳になるかならないかで亡くなったはず。ダニエラ。あなたはどなた?」
そういうと、王太后様は私を静かに見つめた。
「わ、わたくし・・・・」いつもの私なら、いくらだって言い訳が出てくるこの口が、重苦しくて何も出てこない。いったい、どうなってるの・・・・
「ここから先は私が続けましょう。母上、もうここまでで結構ですよ。部屋に戻ってください。ここから先は私の出番です」
陛下がそういうと、王太后様は「私に肝心なことを聞かせないなんてどういうことかしら・・・まったく、しょうがない息子だわ。ハル、あとで報告をまっていますからね」そういうと、王太后様は側に控えていた女官とともに部屋を出て行った。
残ったのは、陛下・宰相・ブランデル魔道士・カルロ殿下・・・・私はどうなるのか。もう自分の正体はばれているんだろう・・・・どんな罰を受けるんだろう。
「ダニエラ嬢。これを聞いてみてくれ」
そういうと陛下はテーブルの上に石を出し、手でふれた。すると、聞き覚えのある声が石から聞こえてきた。
話の内容は、私について・・・・
“そしたら用済みだ。また売春宿に売り払うさ。それともゲイリー、おまえに下げ渡してやろうか。あれはいい女だぞ”
侯爵の言葉に体が凍りつく・・・愚かな男の夢につきあった結果がこれ?
自分の馬鹿さ加減に笑い出したくなるわ。
「ダニエラ」宰相が私に声をかける。
「なによ」もう上品な言葉遣いなんか出てこない。もう侯爵は終わりだ。
「私たちに協力してくれたら、元の生活に戻らなくてすむようにはからうが?」
「え?」
私が思わず宰相たちの顔を見ると、嘘をついている顔じゃない。
「ダニエラ。きみを売り払おうと思ってる男と、この国の宰相どっちを信じる?」
私の正体を知っても蔑むでもなく淡々としているこの人たちは、私をだます必要がない。いっぽう、侯爵のほうは・・・・
「協力ってなにをすればいいのよ」
「きみの選択は正しい」私の言葉に陛下がにっこりと笑った。
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