6.親友たちと宰相閣下
陛下の提案。の巻
「セオ、忙しいか~?」
宰相室にトビーが顔を出した。
「いや。一区切りしたところだから大丈夫だ」
「じゃ、遠慮なく。ラルフ、茶」
「なんで俺がトビーに茶をいれなきゃいけないんだよ。」
「おまえ、そういうこと言うのか。またお前の頭から猫の耳でも出してやろうか」
「魔力を変な方向に使ってんじゃねえよっ!わかったよ、茶だな・・・セオ様ならともかく、なんでトビーに・・・」
ラルフはぶつぶつ言いながらも、お茶をもらうために部屋を出た。
「トビー。ラルフをからかって遊ぶなよ。頭から猫の耳ってなんだよ」
「ん~?前にさあ、あんまり生意気な事言うから、あいつが寝てる間に猫の耳をつけてやったの」
トビーは最近好んで持っている水晶の玉を手のひらに出して、じっと見ている。
「おまえ・・・まだ飽きてなかったのか、それ」
「まあな。女性たちの前でやるとなかなか受けがいいんだ、これが。そういえば、エマが侯爵の家に行って一週間か」
「そうだな。何事もなければいいんだけどな」
そのとき、お茶をもらいにいったはずのラルフが顔を出して「セオ様、トビー。陛下が個室に来るようにとのことです。お茶はそちらにお持ちします」と言ったので、俺たちは席を立った。
「カルロがエマから石を受け取って先ほど持ってきてくれたんだ。さっそく聞いてみよう。ラルフも一緒に聞くように」
そういうと、ハルは石をテーブルに出し再生の術をかけた。
“侯爵。ダニエラは陛下を篭絡できそうですか”
“あれほどの美貌の持ち主はそうそういないからな。素性さえばれなければ、すぐに篭絡できるさ”
“相当の自信があるようですね”
“美貌の持ち主に弱い前国王の血を引いているんだぞ?”くくくっという笑い声。
“もしダニエラの素性がばれたらどうします”
“そしたら用済みだ。また売春宿に売り払うさ。それともゲイリー、おまえに下げ渡してやろうか。あれはいい女だぞ”
“人の愛人を欲しがるほど不自由はしておりませんから。それより侯爵、ダニエラが失敗したら諦めるのですか?”
“まさか。なんのためにお前を呼んだと思ってるんだ。例の物を用意をしておくように”
“わかりました”
“さて。ダニエラが待っているからそろそろ行くか
そう言って侯爵は席を立ったようだ。その後はゲイリーとバトラーの夕食についての会話が続き、録音は終わった。
「私もなめられたものだな」ハルがつぶやく
ゲイリー・バルフォア・・・・やっぱり後ろ盾がいたか。しかしブランジーニ侯爵はどうやって奴を探しだした?
まあいい。そういう話は直接本人から聞けばいい。
「バルフォアはエマをちょっと怪しんでいるみたいだ。同じ名前の親戚はいるのか聞かれたらしい。」
ハルの話を聞いて思わず眉間にしわがよる。
エマ、本当に大丈夫だろうか・・・・やっぱり反対したほうがよかったんじゃ・・・
「ハル。セオがすっかり考え込んじゃってるじゃないか・・・そろそろ話したらどうだ?」
「ところでセオ、俺から提案がある」
提案と聞いて、顔を上げるとハルが満面の笑みを浮かべている。
「セオに休暇をやる。といっても一日だけな」
「はあ?」
「来週の水の日は仕事休んでいいから。その代わり、カルロが滞在してる屋敷の留守番を頼む」
「はああ?留守番?」
「カルロはその日は王宮で過ごすことになっているんだ。だから、命令だよ?カルロの家で留守番をよろしく」
「セオ様。ここのところ、働きづめじゃないですか。少しは休まれたほうがいいですよ」
ラルフもハルの提案に乗り気だ。
「・・・・わかった」
やけに楽しそうな親友二人と気遣うラルフを前にして、釈然としないまま俺はハルの命令に従うことになった。
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侯爵が「悪代官」ちっくになってきました。




