7.華やかな花
花は花でも・・・。の巻
第三者視点。
最後にある人物の独白です。
R15です。
ここはブランジーニ侯爵の屋敷にある部屋。広いベッドの上で、一組の男女が絡み合っていた。
「んっ・・・・ああっ、いやっ・・・・」
「いやではないくせに。」そういうと男のほうはさらに腰を押し上げ、女のほうが声をあげる。
「ダニエラの声は大きいからね。ゲイリーに防音魔法をかけさせて正解だな」
「いや・・・そんなこといわないで・・・・」
女・・・ダニエラの体にはドレスから見えない場所に赤い花が咲いている。
男はブランジーニ侯爵だった。
「あ・・・侯爵様・・・」
ダニエラがこらえきれずに、倒れこんでしまう。侯爵は、そんなダニエラを受け止めて唇を吸った。
ダニエラは、侯爵が行きつけの売春宿で「まだこの間入ったばっかりのおすすめ」だと店の主人にすすめられた娘だった。
まだそんなに商売の水に馴染んでいないのと、驚くほどの美貌に目をつけた侯爵は彼女を愛人とした。妻はいるが、政略結婚だったせいかすぐに別居となりもう何年も顔を見ていない。だったら離婚すればいいのだが、それは外聞が悪いからと妻から拒否をされていた。
彼は昔から地方領主で終わりたくないと思っていた。美貌の妹を王に差し出し、カルロを産んだが既に遅かった。正妃のエルフリーデが先にラインハルトを産んでいた。なんとしても妹の産んだ子を王太子にしようと画策したがエルフリーデとレリアにいつも邪魔された。
そしてラインハルトが6歳のとき、エルフリーデがとった手段は侯爵を鈍らせるのに充分なものだった。国王の次に連なる大物貴族の跡取り息子2人をラインハルトの学友としたのだ。あれからラインハルトは順当に王太子から国王となり、侯爵は「王弟殿下の伯父」という肩書きはあるものの、表舞台に呼ばれることはなくなった。
だが、建国祭にダニエラを連れて行ったときのラインハルトは、まるで心を奪われたようだった・・・今度はうまくいくかも知れない・・・・ダニエラが正妃になり子供を産めばラインハルトに用はない。ゲイリーに命じて消してしまえばいい。
「そうだ、ダニエラ」彼は、自分にもたれかかっている愛人に声をかける。
「なあに?侯爵様」
「昨日、珍しくカルロがここに来てね。王都に住んでいる知り合いの娘を、私が王都にいる間だけでもダニエラが住んでいる屋敷で雇ってほしいと頼まれた。
私が屋敷に到着する日に面接を受けに来るから、カルロの手紙を持った若い女が来たら、部屋に通しておいてくれ。」
「わかりましたわ。ねえ、侯爵様はいつ屋敷に来てくださるの?私、一人で寝るのはさびしくて」
「明日出発するから・・・・あさっての午前中には到着する。それじゃあ、今から寂しさをうめてやろう」
そういうと侯爵はダニエラにおおいかぶさった。
「あ・・・・侯爵様。くすぐったいわ」
「ダニエラはどこもやわらかいな。今までの女で一番だ」
「まあ・・・あっ・・・」
隣で小太りの男が寝息をたてているのを見て、私はそっとベッドから離れた。
この屋敷に飾ってある肖像画を見る限り、昔はそれなりに美男子だったらしいけど歳月は残酷だ。いまや、その面影はどこにもない。
あの場所から私は抜け出したけど、この家でやっていることは前と同じ。この人は私に国王を篭絡しろと言った。どうやら、私を正妃にして子供を産ませ、自分は後見として国を牛耳りたいらしい。
なにを夢みたいなこと言ってるんだろう、この男は。でもまあ・・・・きれいな言葉遣いとマナーを教えてくれたのは感謝してる。毎日食べるものにも困らず、着る服もちゃんとある。
売春宿にいたときに比べたら、夢のような毎日を過ごしているのだ。だとしたら、愚かな夢につきあってあげるのも愛人の仕事だろう。
ただ、私は自分の先が心配だ・・・そのために、もらった宝石やお金は使わない。今は華やかに咲いている私・・・でも実際は徒花。
これが終わったとき、私には何が残っているのか。国王をだましている自分にどんな罰がくだるのか・・・考えたくないけど、考えてしまう。
読了ありがとうございました。
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この話で第5章は終わりです。
つ、次こそは立ち回りを!!




