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宰相閣下と行儀見習の娘  作者: 春隣 豆吉
第1章:運命の相手であってほしくない
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2.私が屋敷に来た理由(前編)

美形、現る。の巻


主人公の回想です。


 私の名前は、エマ・アリンガム。家は「アリンガム商会」という自分で言うのもなんだけど、王国でも有数の商家だ。まあ・・・裕福といわれる家だ。

 だからといって、贅沢な生活をしていたかというと違う。だいたい家に使用人はいない。「自分たちのことは自分たちでやり、質素に暮らすのが肝要」というのが代々のモットー。そのため家事は全て家族で協力してこなす。

 私には生まれたときからなぜか頭から離れない記憶がある。それは「24歳で運命の相手と出会う」というのと「すばらしい料理の腕」をあげる、という誰かの声。

 ずっと気になってるけど、美味しいものを食べることが好きな私にとっては「すばらしい料理の腕」をもらえるなんて嬉しすぎる。自分で作れば美味しいものが確実に食べられることが生涯保証されているのだ。そんな私だから、小さい頃から家で母の隣で料理を見て、実際に作るようになり、今では母から「エマの料理はどこに出しても恥ずかしくないわ」と太鼓判をもらった。

 思えば、この料理の腕がもとで宰相閣下の屋敷で働くはめになったんだ・・・・・。


 ある日、たまにはお茶のときにケーキを食べようと準備していると父が顔を出した。

「お父様、どうしたの?」

「エマ。悪いけど、今日お客様が来るからお菓子を焼いてもらえないかな」

「今日のお茶用に、洋ナシとベリーのタルトを作る予定だけど、それではだめ?」

「それで充分だ。では、頼んだよ」

「わかったわ。」私が返事をすると、父は台所から出て行った。

 父にお客様が来たのは、午後のお茶の時間ぴったりだった。私はタルトの出来上がりに満足していた。タルトの生地はさくさくだし、中のカスタードクリームもフルーツの甘さを邪魔しないいい感じの甘さだ。

「自画自賛だけど、美味しくできたなあ~」とうっとり食べていると、母から声をかけられた。

「エマ」

「なに?お母様」

「お父様のところに来ているお客様が、お菓子を作った人に会いたいと言っているの。」

「え~~、めんどくさい。いつものように忙しくて手が離せませんでいいじゃない」

「もちろん、お父様も最初はそう言って断ったのよ。でも、強引なお客様で・・・王宮の方だからお父様も困っているの」

 父が困っているというのはよほどのことだ。私は急いでエプロンをとると髪の毛をささっとなおして客間に向かった。


「失礼します。お呼びでしょうか」

「ああ、エマ。・・・キンケイド様、本日のお菓子を作ったエマです。・・・私の娘です」と、お客様に声をかけた。

 お客様は、この国の若い宰相閣下だった。金髪で緑色の瞳である国王陛下の隣にいつもいるチョコレート色の髪にネイビーブルーの瞳。冷徹な仕事人間だと世間から噂されているけど、女の子たちの間ではその美形ぶりで国王陛下に次ぐ人気だ。私は特に興味はないけど、友達が騒いでいたような気がする。

 はー、そんな騒がれる美形が商会ならともかく家のほうに何の用事だ。


 私が父のほうをちらりと見ると、うなずいた父が話し始めた。

「エマ。実は、今度キンケイド公爵家に食品や衣料品を納めることになったのだよ」

「そうなんですか。お父様よかったですね」

「それで、キンケイド様が一度我が家を見たいというので、お連れしたんだ」

「まあ、そうなんですか」

「・・・・王国でも有数のアリンガム商会の家だから、もっと仰々しいのかと思っていたが、この家はくつろげるな」

 親子の会話の間にキンケイド様が割り込んできた。

「そうですか?思ったより狭いとは思いませんでした?」思わず私が応答してしまった。

 父は「エマ。」と注意をしてきたがキンケイド様のほうは面白いと思ったらしく「そうだな。使用人の姿もみえないし、家も、その・・・」とちょっと言いづらそうなのが、私をかちんとさせた。

「小ぢんまりとしてるって言いたいのでしょう?そりゃそうです。我が家に使用人はいません。「自分たちのことは自分たちでやり、質素に暮らすのが肝要」・・・父からも聞いたかもしれませんが、これがアリンガム家の家訓ですの。家は家族が暮らす広さと多少のゆとりがあれば充分です。無駄に広い家なんか掃除が大変なだけよ。」

 私が最後にふんっと締めくくると、父は頭を抱えキンケイド様は・・・・なんか顔がゆがんでいる。噂では目の前に裸の美女が現れても、眉毛一つも動かさなかったという顔のはず・・・・私、やってしまったんだろうか・・・。

「お、お父様・・・すみません。つ、つい・・・」

「エマ・・・お前、いつもの分別はどこにいった」

 そのとき「ぷっ・・・・・ぶはははははっ」と笑い声が。父と私がその方向を向くとキンケイド様が腹をかかえて爆笑していた。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


エマがどうして、宰相閣下の屋敷で働くことになったのか。

しかも、行儀見習としてになったのか?を説明する部分になります。

長いので前後編に分けました。

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