4.エマの友達
エマ、世間の狭さに驚く。の巻
夕食後の自由時間。国王様の“恋人”と遭遇したことを、私はキュカやテッサに話した。
「やっぱり噂は本当かあ。あー、つまんないわ。黄金の貴公子が誰か一人のものになるなんて」テッサが机に突っ伏している。
「テッサさん、恋人いるじゃないですか」キュカが不思議そうだ。
「美形にはさ、変な女に引っかかるくらいなら独身でいてほしいのよ。ねえ、エマもそう思うでしょ」
「んー、でもさあ、国王様だとやっぱり結婚しないとまずくない?」
「まあねえ・・・それでさ、相手どんな人よ」
テッサとキュカが興味しんしんの目をして私を見たので、私はダニエラ・ブランジーニ様の見た目を話した。
「艶やかな茶色の髪と、濃い紫色の瞳の持ち主で凄い美人よ。男の人がまず振り返るわね。服装も髪型も最新の形でまとめてるし、スタイルもいいし・・・」
私は思わず、自分の体型を見てしまう・・・中肉中背だな。あの変態ゲイリーからはウエストひねりの運動してたら鼻で笑われたが。
「「へ~~」」
「で、貴公子と話をしてるのを聞いてたんでしょ。どんな感じの人なのよ」
「ん~、良くも悪くも貴族的な方という感じがしたわ。」
「なるほど。庶民を小ばかにしてるんだ。うわー、そんな人が貴公子の恋人なの?女の好みだけが残念だよ」テッサが大げさなため息をついたので、私とキュカは思わず笑ってしまう。
「テッサさん、人間誰だって欠点はあると思います」
「キュカって天然だけど達観してるとこあるのね」
「天然は余計です!」キュカがむくれた。それを見た私とテッサは噴出してしまう。そういうところが天然なのよ、キュカ。
「さてと、そろそろ解散しますか。エマは明日って休暇なのよね。当主様とデートするの?」
テッサに言われて、私は最後にふくんだお茶を噴出しそうになる。
「はあ?何言ってるの。当主様は明日も仕事だよ。私は実家に帰るわよ」
「なんだ~。デートかと思った」
「私もそう思ってました、エマさん」
この二人・・・キャラはそれぞれ違うんだけど、なぜか行き着く考えが同じなんだよなあ・・・・。
実家に帰ってのんびりしていると、母が「エマ、お客様が来てるわよ」と呼びにきた。
私に来客なんて誰だろう・・・そう思って玄関にいくと、懐かしい人が立っていた。
「エマ!!久しぶり!!」
「アイリーン!!」
そこにいたのは、私の学生時代の親友であるアイリーン・ノリスだった。彼女は王国の東にある町の出身で、教育を受けるために王都に来ていた。確か卒業して地元に戻っていたはず。
「アイリーン、故郷で働いているのではなかったの?」
「お仕えしている方のお供で王都に来たのよ。休暇をいただいたのでエマの顔を見にきたの。」
「私も今は別の場所で働いているの。今日は休暇でこっちに戻っているのよ」
「まあ!じゃあ偶然に感謝しなくてはいけないわ」
「全くよ」私たちは顔を見合わせて笑った。
アイリーンを部屋に誘って、私はお茶の用意を始めた。
キンケイド公爵家で働いている話はしたけど、セオ様との婚約話はしなかった。アイリーンには全て決まってから話をするべきと思ったからだ。
「やっぱり、エマの入れてくれるお茶は美味しいわ。そしてこのお菓子。エマ、腕を上げたわね」
「そう?ありがとう」
「それにしても、キンケイド公爵家でエマが働いているなんて。てっきり、商会を手伝うと思ったのに」
「私もその予定だったんだけどさ、どこかで予定が狂ったのよ。ねえ、アイリーンが仕えている方の名前も教えてよ」
すると、アイリーンはちょっと複雑な顔をした。
「私、エマに会えたら相談したいことがあったの・・・」
「どうしたの?」
「地元に戻ってから、領主様の家で家政婦見習として働き始めたの。でも、正直言って領主様は領地をうまく治めてるってわけじゃないわ。それに、最近変な人が出入りし始めて嫌だなあって思っていたの。だから、領主様から、姪の供をして王都に行くようにって命じられたとき、ここから離れられるって嬉しくなってしまったの。そんな自分が嫌だわ」
「転職するわけにはいかないの?アイリーンは優秀だから、どこでも働けると思うよ?」
「それも考えてるの。エマに背中を押してほしくてここに来たって感じかな」
「そっか・・・。ねえ、その姪御さんはどんな方なの?」
「私のお仕えしている方は、すごく美しくて物腰も洗練されてる・・・・ときおり王宮にも行かれてるわ。舞踏会で国王様とお知り合いになったんですって。」
そこまで聞いて私はお茶をこぼしそうになった・・・美人で、舞踏会で国王様と知り合ったって・・・・。
「ねえ、アイリーン。その方のお名前はなんていうのかしら。最近、国王様に恋人が出来たって噂が流れてるんだけど、もしかして同一人物だったりして」
「噂は知らないけど、私がお仕えしてるのはダニエラ・ブランジーニ様よ。」
私はぎょっとした。あの、庶民を小ばかにした人にアイリーンが仕えてるとは。世間って狭い!
「そのダニエラ様のところに転職っていうのは出来ないの?」
私がそう言うと、アイリーンはなんとも苦しい表情をした。
「あの方は、姪といってるけれど・・・・本当に姪なのかしら」
「はあ??」
「だって・・・私はあの方のお着替えや髪の毛を整える手伝いをしてるけれど、たまに服に隠れる部分にその・・・赤い跡がついているの。そして、その跡がつくのは決まって領主様がいらっしゃってる時なのよ。それにダニエラ様は領主様が来ると私たちに部屋に近づかないように言うのよ。」
アイリーンが赤くなりながら告げた「赤い跡」・・・それって。私まで顔が赤くなってしまった。
アイリーンの憶測が当たってるなら、国王様がだまされてるよ!!
これはセオ様に知らせるべきだ。私は意を決して立ち上がった。
「エ、エマ??」アイリーンがびっくりして私を見上げる。
「アイリーン。まだ時間ある?」
「え、ええ。今日は親戚の家に泊まるから。」
「アイリーン、ちょっと出かけよっか」
「え?どこに?」
「王都の観光スポット第一位の場所よ。せっかく王都に来たのだから観光していかないと。」
「だから、どこに行くのよ?」
「王宮よ」
セオ様は、まだ王宮にいるはずだ。
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長文になってしまいました。
申し訳ありません。




