3.国王様の計画
王様の本音。の巻
セオ視点です。
エマを屋敷に送ったあと、俺はトビーに会うために図書室に向かった。
「トビー、いるか?」
「セオか?ちょっとそこで待て」
現れたトビーはオリーブ色の髪と目だ。髪と目の色を魔法で変えるのが趣味だとはいえ、エマが見たら誰だかわからないんじゃないだろうか。
「ちょっとトビーに聞きたいことがあって」
「もしかして、これか?」そういうとトビーは、どこに持っていたのか水晶の玉を取り出し、そこに画像を映し出す。
そこには庭を散策するハルとブランジーニ嬢が見えた。
「お前、普通に画像魔法が使えるくせに何仕込んでだよ」
「こうしたほうが、神秘性が増すじゃないか。・・・それにしても、ブランジーニ嬢か」
「なんだお前、知ってたのか」
「俺はずっと王宮の警護の管理もしてるんだよ。パーティーに来た客の動向くらい部下に探らせている。とくにブランジーニ侯爵とその連れはね」
二人で水晶をしばらく見ていると、どうやらハルは執務に戻るようで二人は別の方向に歩いていった。
「セオ、ハルの仕事で急ぎのものってあるのか?」
「いや。急ぎのものは午前中に全て目を通してサインをもらっている」
「それなら、ハルの個室で集まらないか」
ハルに声をかけて、俺たちは個室で顔を合わせた。
「セオ。午後はあの書類を片付けようと思ったのに」
「それは明日以降お願いします。それより陛下・・・・ハル。お前、どういうつもりでブランジーニ嬢と親しくしてる」
「ああ、それは侯爵の思惑が知りたくてね。あまりに予想どおりで笑ってしまうよ」
ハルは笑った。
「「はあ??」」
「ダニエラ・ブランジーニは、ブランジーニ侯爵の命令で俺の正妃の座を狙っている。」
「正妃って・・・何血迷ってるんだあの馬鹿侯爵。」
トビーがあまりのことに呆れている。
俺は、父上から聞いたことを思い出していた。
野心家のブランジーニ子爵(当時)は王太后様になかなか子供が産まれないのを見て、前国王が地方視察でブランジーニ家の領地を訪れた際に自分の妹を近づけた。見事、妹は側室として迎えられ、自分も侯爵に出世。ところが、妹が身ごもる前に王太后様がハルを出産した。
妹もその2年後、ハルの異母弟にあたるカルロ殿下を出産。そこで侯爵と側室は彼を跡継ぎにするためにハルを消そうとしたらしい。
将来を心配した王太后様がハルの養育係である前魔道士長に相談して、ハルが6歳のとき学友として俺とトビーを選んだ。なぜなら、俺とトビーの家は貴族のなかでも名門で、代々王国に忠実なうえ優秀な人材を輩出しているから。そして俺たちはその家の跡取り息子。
これでハルには王国の二大名門貴族が味方についたことになり、前国王もそれを重んじてハルを王太子にしたあと、亡くなる前に即位させたのだった。
側室は失意のまま亡くなり、侯爵はハルが即位した時点で表舞台から引退せざる得なくなった。
「その思惑に乗っかって侯爵を潰せる材料を探したいんだよね。トビーに調べてもらったら領地でもろくな政策をしていないようだし、領民の評判もよくない。」
「カルロ殿下はハルの計画を知っているのか?」
カルロ殿下は野心家の母親と伯父とは違い、穏やかで読書好きの方だ。現在は王宮から離れ、母親が実家から相続した領地で本人が望んだ読書三昧の静かな生活を送っている。
ハルとの仲も悪くはないが、血のつながった伯父のことを異母兄が潰そうと考えていることを知ったら、さすがに穏やかではいられないのではないだろうか。
「カルロは王宮を離れる際に“自分は王になる気はないよ。母から相続した領地で静かに暮らすのが望みだ”と言って出て行った。それに、野心家の伯父にうんざりしているようだ。私が侯爵を潰すためにあることを頼んだら、喜んで協力すると手紙をよこした。」
そう言ってハルは俺とトビーの前に、手紙を出してきた。確かにそれはカルロ殿下のサインが入っていて、トビーが魔力で見ても本物だった。
「それで、協力って何を頼んだ?」
「俺が送り込む侍女の身元保証人。」
そういうと、ハルはなぜか俺を見た。
「・・・なんだ?」俺はちょっと嫌な予感がした。
「セオ。頼みがある。エマを侯爵家の侍女に送り込みたいのだ。」
ハルの頼みは、まさに俺の予想どおりのものだった。
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エマはまたもや騒動に巻き込まれてしまうのか・・・
うーん。どうしよう




