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宰相閣下と行儀見習の娘  作者: 春隣 豆吉
第5章:華やかな花
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2.東屋に来たひと

噂の相手?の巻

 3人のやりとりを楽しく聞きながら食器を片付けていると、こちらに歩いてくる人影が見えた。

「セオ様、どなたかこちらに向かっております・・・女の方のようです」

 私が声をかけるとセオ様はちょっと顔をしかめた。

「ハル。ここにお前の他に誰か来る予定があるのか?」

「いや。母上は視察で離宮から出かけているし。」

 自然と国王様が身構え、ラルフも緊張感を漂わせる。セオ様は私を隠すように立ち上がった。

 到着した女性は艶やかな茶色の髪の毛を流行の形にまとめ、濃い紫色の瞳。すごい美人だ。

「陛下が、こちらで昼食をとっていらっしゃると聞いて、わたくしもご一緒したくて来てしまいましたの。でも遅かったようですわね。」

「なんだ、来る予定なら連絡してくれれば出迎えたのに」

 そういうと、国王様はその女性の手をとった。

 も、もしかして・・・この女性が噂の“恋人”ってやつ??うわー、帰ったらアルテアさんたちに話さなくちゃ。

 私はセオ様の後ろで、どきどきしながらやり取りを見ていた。

「陛下、そちらの女性はどなたでしょうか」

 セオ様は内心面食らっているはずなのに、とても冷静に聞いている。

「ああ、セオにはまだ紹介してなかったね。彼女はダニエラ・ブランジーニ。建国記念舞踏会のときに一緒にダンスをしてね。」

「ブランジーニと申しますと・・・」

「ブランジーニ侯爵はわたくしの伯父ですの。あなたがキンケイド宰相閣下ね?よろしく」

「初めまして、ブランジーニ様。」セオ様が会釈をした。


「陛下は、どのようなものを召し上がったんですの?」

 国王様が食べた料理をつたえると、ブランジーニ様は声をあげて笑った。

「まあ・・・全部庶民の食べ物ですのね」

「私はこういう食事が好きなんだ。宰相の婚約者が作ってくれたのだよ」

「そういえば宰相閣下の婚約者は貴族ではないとか。よく公爵家が許可しましたわね」

 ブランジーニ様は意外だという口ぶり。

 二人の様子を黙って見ていたセオ様は「陛下、私はそろそろ戻らないと。午後は少し遅れてもかまいませんので、ごゆっくり」そういうと、片付け終わった私とラルフを連れてその場を離れた。


 宰相室に到着すると、セオ様はラルフに少し休憩しておくように言ったので、二人きりになった。

「エマ。不愉快な思いをさせてすまない」

「なんともありません、あれくらい」

 確かにちょっとカチンときたけど、一般的な貴族って庶民にはああいう対応だし。私の身近にいる貴族の人たちの対応のほうが珍しいのだ。

「そうか。エマ、私はあんな人間には絶対にうちの敷居をまたがせないからね」

「セオ様。大丈夫ですから・・・それにしても美しい方でしたね」

「私の好みじゃないな」

「セオ様の好みは聞いていません。一般的な意見です。あの方が、国王様の恋人なんでしょうか」

「ハルの恋人?なんだそれ」

「国王様に恋人ができたと噂が流れているんですよ。ご存知ないですか?」

「あ、そういえばラルフがそんなこと言ってたような。でも、あの女性なのか?」

「そういうのはセオ様のほうが詳しいじゃないですか」

「そりゃそうだけど。あ、そろそろ屋敷に戻らないといけないな」

 時計を見ると、確かにちょっと長居をしすぎたようだ。

 私は荷物を持つと、「それではセオ様。ここから先はわかりますから」とお辞儀をして部屋を出ようとした。

「エマ。送るよ」

「いいえ。ここで大丈夫ですから」

「うん、だから・・・」そういうと、セオ様は私の体を抱えあげた。またお姫様抱っこか!!

 なにげに気に入ってないか?セオ様。

「え?ええーっ??」

「ここから移動魔法で屋敷の図書室まで送るよ。ほら、もっとくっつかないと」

「セオ様、重いですから!!」

「エマは重くないし。それに・・・」

「それに?」

「これから先、これが出来ないと困るだろう?」

 私が何で?という顔をすると、セオ様は「ま、今は意味がわからなくてもいいけどね」とにっこり笑った。

 その顔は・・・・まるで大好物を前にした子供の顔だった。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


最後はちょっとラブラブな感じで。

しかしなぜR15にたどり着かないのだろう・・・

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