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宰相閣下と行儀見習の娘  作者: 春隣 豆吉
第5章:華やかな花
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1.久しぶりの東屋

王様と昼食を。の巻

 今、王国内でぶっちぎりに話題をさらっているのは、国王様の“恋人”のことだ。

 噂の内容は「建国記念舞踏会に出会った国王様が一目ぼれした」もしくは「舞踏会で最初にダンスを踊っているうちにお互いを気にいったらしい」とか。

「この噂が本当なら、王太后様も一安心でしょうね」

 屋敷の皆でお茶を飲んでいるときに、その話題になってアルテアさんがふと漏らした言葉。

 私は、セオ様と婚約したけれど「行儀見習兼世話係」の仕事を継続したいと希望したので今でも食事やお茶はアルテアやテッサたちと一緒にとる。

「一安心なんですか?」テッサが興味深げに聞くと、アルテアさんは大きくうなずいた。

「そりゃそうですよ。国王様の結婚は王太后様にとっては長年の願いなんですから。」

「でも黄金の貴公子様が結婚しちゃうと、私たちはちょっと残念よねー。そう思わない?エマ」

「えっ。うーん、そうだね~」

「エマに話をふってどうするんです、テッサ。セオ様に知られると後が面倒ですよ。」

「ねえねえ、エマ。当主様ってやっぱり他の男の人をかっこいいとか言うと嫌がるの?」

「へ?えーっと、どうかなあ・・・」

 なにせ、男の子たちとの出会いのチャンスより、美味しいものと出会うチャンスを優先してたからなあ・・・。セオ様は私のどこがよかったのか、いまだに分からない。

「も~。エマったら。でも、当主様もそれなりに整った容姿してるもんね」

「そ、そうかな」

 テッサの追求にたじたじになっているところに、アルテアさんが「エマ。そろそろ王宮に出かけないとお昼に間に合わないわよ」と助け舟を出してくれた。

 今日は、国王様たっての要望で王宮庭園の東屋で昼食をお持ちするのことが決まっていた。


 後ろでラルフが荷物を持ってくれて、私たちは前を二人で並んで歩く。

「エマ、すまない」

「セオ様、謝るのこれで3回目ですよ」

「たかがハルのせいで、自分の婚約者に面倒かけてると思うと何度謝っても足りない気がする」

 たかがハルって・・・いやいやセオ様、国王様ですから。「たかが」じゃないと思う。セオ様とトビーさんって、国王様と幼なじみで親友と言う間柄のせいか遠慮ってものがないよな。

 セオ様いわく、国王様が「お前ばっかりエマの作ったご飯を食べてずるくない?俺はいつも味気ない食事をしてるっていうのにさー。あーあ、心のこもった食事が食べたい。」と駄々をこね(あくまでセオ様視点である)、さらに図書室の住人・トビーさんから「セオ、ハルがしょっちゅう図書室に来て邪魔。お前ちゃんと仕事させてるのかよ。」と苦情が来たそうで、根負けしたそうだ。


「いいんです。国王様は私が誘拐されたときに助けに来てくれたじゃないですか」

「あれは勝手にハルがついてきたんだ。まあ・・・ありがたかったけど」

「セオ様、素直じゃありませんね」

 私が笑うと、セオ様はごまかすように目をそらした。

 東屋に到着すると、国王様が先に到着して待っていた。

「やあ、エマ。待っていたよ。婚約おめでとう」

「ありがとうございます、国王様」

「セオなんかでいいのかい?エマなら選り取り見取りなんじゃないのかな?」

「えっと・・・」思わずセオ様をちらりと見ると、セオ様はにっこり笑ってうなずいた。

「陛下は満腹のようですね。エマ、陛下の分は私とラルフで食べますから宰相室に戻りましょう」

 そういうと、問答無用で出しかけた食事を戻し始める。

「待て待て待て。俺が悪かった。エマの相手はセオ以外にいないな!うん、間違いない!」

「最初から素直にそう言えばいいんです」

 二人とも大人げない・・・・その場にいた私とラルフがそう思ったのは言うまでもない。


本日のお昼である海老にパセリとチーズをつけたオーブン焼き、蒸した野菜にさっぱりしたソースをかけたもの、とうもろこしパンに塩味の豆と根菜のスープ。デザートにはいちじくのビスケット・・・国王様は全てをきれいにたいらげて、満足そうな顔をしている。

「やっぱりエマのつくった料理は美味しいなあ。セオ、毎日食べに行っていい?」

「寝ぼけたことを言わないでください。そんなに王宮を抜け出せるわけがないでしょうが」

「大丈夫さ。トビーを巻き込むから。あいつもエマの料理好きだし」

「お前たちは新婚家庭の邪魔をしにくるのか。」

「陛下、私もそれに参加させてください!」ラルフが国王様に便乗している。

「そうだよな、ラルフも行きたいよな」

「陛下、ラルフ・・・・なるほど。二人ともよほど仕事がしたいようですね。」

「セ、セオ?」

「セオ様?」

「・・・・これは午後が楽しみです。陛下、未決済の書類が山のように溜まっていますよね。この際ですから、全部片付けましょうか。

 ラルフ、どうやら暇そうだからトビーを手伝って来い。話をしておいてやる」

「ひどいぞ。あれは今週いっぱいでいいって、今朝言ってたじゃないか!」

「セオ様、トビーのところは勘弁してください。あいつは嬉々として雑用を押し付けてくるんですから!」

  そういえば、ラルフはトビーさんの従弟で3人とは昔からの知り合いだっけ・・・きっと昔からこういうノリだったんだろうな。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


更新が止まってしまい申し訳ありませんでした。

第5章、なんとか書き出しができました。

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