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宰相閣下と行儀見習の娘  作者: 春隣 豆吉
第4章:その手をとること
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閑話:家政婦はみた-キンケイド公爵家版-

家政婦のアルテア視点です

 建国祭のときにセオ様とエマに何かあったらしい。

 というのも、二人とも表面はいつもどおりの「当主様とその世話係」としてやりとりしているが、二人の間に流れる微妙な空気。それがもう2週間は続いている。

 メイドのテッサも気づいているらしく、朝の打ち合わせが終わったあと私の元にこっそり来て「アルテアさん、当主様とエマの様子が変じゃありませんか?」と小声で聞いてきた。

「テッサも気づいた?・・・・いったいどうしたのかしら」

「建国祭のときに何かあったんじゃないですか?」

 確かに、建国祭の前まではあんな微妙な空気は流れていなかった。どう考えても祭の最中に何かあったのは間違いない。

「でも、聞けないですよね」

「当たり前でしょう。そんな下品な真似をするものではありません。それに、もし何かあれば、セオ様が皆の前で発表しますよ。私たちはそれを待つほかはありませんよ」

「そうですよね。」

 半分自分に言い聞かせるように伝えると、テッサはあっさり納得して持ち場に出かけていった。

 さて、私も仕事が山のようにあるのだ。気持ちを切り替えなくては・・・・私は頬をピシッとはたいて気合を入れなおした。



 夜、のどが少し渇いたので水でも飲もうと台所へ向かう。すると、台所から明かりが漏れていた。

誰かが同じように水を飲みにきたのかしら・・・声をかけようとしたとき、セオ様とエマの声がしたので、思わず声をかけずに隠れる。

「エマが水を飲みに来ててよかったよ。何か食べるものはないか?」

「当主様。今から何か食べるのは体によくありません。お茶で我慢してください」

「エマ。当主様、じゃないだろう?」

「セ、セオ様?」

「どうしてそこで疑問形なのかな」

「ご、ごめんなさい。どうしても慣れないです、と・・セオ様」

「よそ行きの言葉を使うなとも言っただろう?でも、まあ・・・慣れないエマを見るのも楽しいけどね」

「セオ様は、意地悪です」

 どうやらセオ様は今戻ってきてお腹がすいたので台所で何か食べようと思ったらエマに出くわした・・・という状況らしい。

 それにしても初々しく甘い会話だこと。出会った頃の私とピエルを思い出してしまうわ。エマはまだ戸惑いが先行しているようだけど、セオ様は余裕ねえ。

「意地悪?心外だなあ。こんなにエマのことが好きなのに」

「セ、セオ様!!誰か来るかも知れないんですから、そういうこと言わないでください!!」

「エマ。声が大きいよ。まったく照れ屋なんだから」セオ様の笑い声。


 はあ・・・・のどは渇いていても、水をもらいに入る勇気はないわ・・・またあとで飲みに来ればいいわね。

 私は足音をたてないように自室に戻ると、まだピエルが起きていた。

「水は飲んできたのかい?」

「え?あんまりのどが渇いてないから、あとで飲みに行くわ」

「そうか」

「ねえ、ピエル」

「ん?」

「近々、いい知らせがあるかもしれないわよ」

「急にどうした?」

「ふふ。私のカンよ」


 台所で目撃したあの日から1週間後。セオ様はエマと婚約したことと前公爵夫妻が当分の間、屋敷に滞在することを発表した。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


次回から第5章です。

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