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宰相閣下と行儀見習の娘  作者: 春隣 豆吉
第1章:運命の相手であってほしくない
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1.キンケイド公爵家の朝

寝起きの悪い男。の巻

 キンケイド公爵家では朝の定番がある。

「当主様、起きてくださいませ。朝でございます」

 最初は屋敷内で働くメイドのキュカが扉越しに声をかける。しかし返事はない。

 キュカの次はテッサが扉越しに呼びかける。それでダメなら、家政婦のアルテアに出番が回ってくる。

「セオ様!いい加減起きてください!!朝ですよ!!」

「アルテアさん、当主様起きませんね」

「昨日も遅くまで仕事をしていたようですからね。ですが、そろそろ起きていただかないといけないし・・・キュカ、台所へ行ってエマを呼んできてちょうだい。テッサ、私たちは仕事に戻りましょう。」

「アルテアさん、すっかり当主様を起こす役目がエマになりましたね」テッサが、楽しそうにアルテアに告げる。

「そうね。以前はきちんと一人で起きてきていたのに」

「よっぽどエマに起こしてほしいんでしょうね。個人的には寝起きの悪い男はちょっと困りますけど」

「テッサ。セオ様の前で言ってはだめですよ。あれで結構デリケートですから」

「わかっております」



 キュカから「エマさん、アルテアさんが当主様を起こしてくださいですって」と聞いた私は、台所で出来上がったスープ鍋の具合を確認しながらため息をついた。

「・・・・わかりました。」そう言うと、私はワゴンに出来上がったばかりのスープと、焼きたてのパン、チーズをふんだんにつかったオムレツ、果物とお茶などを乗せて台所を出た。

 問題の扉に耳を近づけると、物音がしない。声をかけて3回ノックしても返事がない。私は扉を開けて中に入った。

 天蓋つきのベッドでは気持ちよさそうに寝ているチョコレート色の髪の男性。ベッドの近くの執務机では書類や魔法石が山積みで、昨日も夜遅くまで仕事をしていたようだ。

 この人は、セオドール・キンケイド。ここティッテル王国の宰相でキンケイド公爵家当主でもある。

 私も含めて屋敷の人間は皆、当主様には本当は存分に眠ってほしいんだけど、ここは心を鬼にして・・・「当主様。朝です、起きてください」ベッドの近くで声をかけると、「ん~~~??」と当主様が少し身じろぎをして、薄目をあけた。ちなみに当主様の瞳の色はネイビーブルーだ。

 これを逃さないように、私はすかさず「当主様!朝ですよ!あ・さ!!起きてください!!」とちょっと声を強めた。

 当主様は「・・・やあ、エマ。おはよー」と今度はぼんやりと返事をする。

「おはようございます当主様。朝食を用意してきました。さあ、起きてください」

「・・・朝食よりもエマが食べたいなあ・・・・」

「私よりも朝食のほうが美味しいですよ。本日のスープは野菜がたっぷり入ったコンソメスープ、パンはパセリとにんじんを練りこみました。オムレツはチーズクリーム入りですし、本日は農園係のカレルさんが朝もいだリンゴを持ってきてくれたので切ってきました。着替えている間に別室に用意しておきますから」

「・・・・キスしてくれたら起きる」

「・・・・しょうがありませんね。」私はそう言って当主様の顔に触れて・・・・・当主様の耳を引っ張った。

「いたたたたたっ!!!ひどいよ、エマ~。キスって言ったのに~」

「とっとと起きて仕事モードに切り替えてくださいよ。世の中の宰相様に憧れている女性たちがそんな姿を見たら逃げますよ」

「エマは逃げないよね?」

「逃げませんよ。憧れてませんから。さあ、起きてください!!」

「・・・そういう答えを聞きたかったんじゃないのになあ」などとぶつぶつ言いつつ、当主様は服を脱ごうとするので、あわてて私はワゴンをもって別室に移った。


 まもなく、執務用の服に着替えた当主様が部屋に来た。

「おはよう、エマ。今日も美味しそうだね」そう言って席についた当主様にお茶を入れる。

「今日のお茶は、なにやらすっとした香りがするね」

「ペパーミントティーです。少しでもリフレッシュしていただこうと思って。当主様、今日も王宮にお昼をお持ちしますか?」

「そうだね。エマの料理を食べると仕事もはかどるし。そうだ、さっき今日の果物は朝もいだリンゴって言ってたよね」

「お昼にリンゴのパイを持っていきましょうか?」

「さすがエマ、わかってるね。お茶の時間に食べたいからカットして持ってきてくれるかな」

「かしこまりました。」


「じゃあ、行って来る。今日も先に休んでいていいからね。ピエル、移動魔法で帰ってくるから家の鍵も閉めてかまわないから」そういうと、当主様は移動魔法で消えた。

「さあ。皆仕事に戻って!」ピエルさんの一声で、屋敷の人間が持ち場に戻っていく。

 私の仕事は料理と当主様の部屋の整理だ。「行儀見習」で働きに来ているはずなのに、「当主様の世話係」がその実態・・・・。

 当主様を見送ったら、部屋の片付けだ。私は当主様の部屋に机の上の書類に重しを置くと、ベッドのシーツと枕カバーを持ってきた洗濯かごに入れ、布団をお日様にさらすために部屋の窓を全開にした。

 部屋の片づけをしながら私はこの屋敷に来るきっかけになった3ヶ月前のことを思い出していた・・・。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


もしかして王道ファンタジー?って

期待していた方、もしいらっしゃったなら

申し訳ありません!!

先に謝ります。私にファンタジーは無理です・・・


はじめましての方へ:

私の作品は”のんびり・ほのぼの・ちょっとニヤニヤ”を目指して

書いておりますので、かなり進展にイラッとする場合があります。


何度目かの読者様へ:

「魔道士と整理係」あたりの世界を想像していただけると幸いです。

あんな感じにR15要素を少し足した感じかと思ってください。

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