3.王太后様からの招待
王太后様からの謝罪。の巻
「エマ。嫌なら断ったっていいんだからね」
なんとも渋い顔をした当主様が、私に差し出したのは一通の手紙だった。
「なんですか?」
「読んでから判断してくれ」
「はあ・・・」私は戸惑いつつ、封筒の裏書を見て固まってしまった。エルフリーデという流麗な文字・・・・中を読んで、さらに頭を抱えたくなった。
「当主様、これはいったいどうしてこんなことになったんでしょうか」
「エマ。言葉遣いが変になってるぞ。」
「すみません。動揺してるんです」
「王太后様は、自分のところにいたロザリーがしたことに責任を感じていて、エマに直接謝罪をしたいそうなんだ。」
私が誘拐されるきっかけをつくったロザリーは、王都追放の処分になったと当主様から聞いた。それを聞いたとき、私はなんだか悲しかった。
「エマ?どうしたぼんやりして」
「あ。すみません、当主様、ロザリーは王都に戻ることが出来るのでしょうか」
「無理だな。ロザリーがゲイリーを忘れることを私は祈っているよ」
当主様には言わないけど、ロザリーはゲイリーを忘れないと思う。
「いらっしゃいエマ。待っていたのよ」
王太后様に満面の笑みで迎えられて、私はちょっとびっくりする。
「お招きありがとうございます、王太后様」
「今日はほんの身内だけのお茶会ですからね。そんな堅苦しくならないでちょうだい」
「は、はい・・・」私は思わず当主様を見た。
「王太后様。そうは言っても、エマはこのような場には慣れておりません。緊張するのは当たり前です」
私の隣に座った当主様がかばってくれる。
「そうですよ、母上。王太后という肩書きがある人間の前で平気でお茶を飲めるのは息子の私だけですよ」
国王様がちょっとふざける。
今日のお茶会には執務の合間を縫って国王様も顔を出してくれた。トビーさんも来たかったらしいんだけど、どうしても外せない仕事があって無理なんだそうだ。
王太后様は、私の髪の毛が短くなったことは国王様から聞いていたらしいのだけど予想外の短さだったらしくてちょっと驚かれていた。
「エマ。話には聞いていたけれど、短くなってしまったわね」
「はい。でも、髪の毛は伸びますから。それに短いのもラクです」
「まあ、そうなの?」
「ええ。髪を洗ったあとの乾きの早さが段違いです。それに、首に風を感じるととても涼しいんです。なんというか、すごく新鮮な感じがします」
「そうなの。でも・・・」そう言うと、王太后様はお茶のカップを置いた。
「エマ。あなたには本当に申し訳ないことをしました。わたくしの管理が行き届かなかったせいで・・・」王太后様は私に頭を下げた。
「王太后様、頭を上げてください。確かにロザリーはこちらのメイドでしたけど、王太后様に責任はありません。このことで一番責任があるのは、誘拐したゲイリーです。ロザリーは、ゲイリーへの恋心を利用されただけです。
・・・・私は、ロザリーと今後関わりたくありませんが、憎んではいません」
「エマ・・・」王太后様はちょっと涙ぐまれている。
「王太后様。今度こういう機会がありましたら、私が作ったお菓子を持参してもよろしいですか?」
「ええ。もちろんよ!この間もらったクッキーはとても美味しかったわ。」
王太后様は微笑んで、場が一気に和やかになった。
「エマ。あれでよかったのか?」
帰り道の馬車の中で当主様が尋ねる。
「はい。私は王太后様に責任があるなんて、ちっとも思っていませんから・・・でも、緊張しました。私一人じゃ絶対行きませんでした。当主様が一緒でよかったです。」
「そうか?」
「はい!当主様と一緒ならどこでも大丈夫って思っていますから」
「エマ。私と一緒に・・・・」と当主様が何か言いかけたところで馬車が屋敷に到着した。
ピエルさんが扉を開けてくれたので、私は先に降りた。
あとから降りた当主様は、深くためいきをついている。
さっきは、何を言いかけたんだろう?
読了ありがとうございました。
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あともう少し距離があれば・・・と思う宰相閣下でした。




