2.王様の昼寝
三人でお茶を。の巻
当主様に本の返却を頼まれて、私は図書室のドアをあけた。キンケイド公爵家の図書室は屋敷に勤めている人間なら誰でも利用できるので、私も寝る前に読む本を時々借りている。
そういえば、ここで初めてトビーさんに遭遇して幽霊だと思ったんだっけ・・・・気がついたら図書室のソファの上にいたんだけど、今考えると人生初のお姫様抱っこってあのときだったんだよなあ・・・うぉ~、思い出すと恥ずかしいっ!!
「ま、まあ、今度同じ状況になっても驚かない免疫がついたということで」と独り言を言いつつ、本を所定の場所に戻していく。
本を戻し終えて、ついでにソファや机の上もざっと片付けようとソファに向かうと・・・・私は「ええええっ!!」といいたいところをグッとこらえた。
ソファでは国王様が気持ちよさそうな寝息をたてて、昼寝をしていた。「黄金の貴公子」は眠っていても「黄金の貴公子」だなあ・・・・はっ、そんなしょうもないこと考えてる場合じゃないって。
「ど、どどどうして、国王様がここに・・・・」
もしかしたら幻かもしれない・・・自分のほっぺをつねってみる。痛い。
「エマ。ほっぺつねって何をしてるの」
いつのまにか国王様を起こしてしまったらしく、ソファで国王様が笑ってこっちを見ていた。
「こここ国王様。どうしてここに」
「エマ、ハルって呼んでって言ったでしょ。ハルって呼ばないと返事しないよ?」
無理です、そんなの絶対無理です!!私の無言の訴えが通じたのか、国王様は笑って「冗談だよ。でも、そのうちハルって呼んでもらうからね」と言う。
「それで、その、どうして・・・」
「エマの作ったお菓子が食べたくてさ。セオは自分だけ美味しいもの食べてさー、あいつケチだと思わない?」
「さ、さあ・・・でも、国王様。あの、仕事はよろしいんですか」
「ん?大丈夫さ。優秀な宰相閣下が頑張ってくれてるからねえ。ところで、エマ。きょうのお菓子は何か教えてくれないのかい?」
そのときの国王様の顔が、まるでおやつを待ってる子供みたいだったので、私はちょっと噴出してしまう。
「国王様。今日のお菓子は、くるみの入ったマーブルケーキです。こちらにお茶と一緒にお持ちしましょうか?」
すると国王様の顔がパッと輝いて「うん。よろしく頼むよ」とうなずいたそのとき「陛下。書類が山積みなんですけどね」と怒りの空気満載の当主様が顔を出した。
「やあ、セオ。」
「人の家でなにやってんですか」
「だってセオがエマを東屋に連れてきてくれないから、最近おいしい食事が食べられないのが辛くって」
「エマを宰相室以外の場所に案内するのは当分やめると打ち合わせしたでしょうが」
「そう。だから、私が食べに行けばいいかなと思ってね。エマ」
「は、はいっ」いきなり呼びかけられて私は焦ってしまう。
「お茶とケーキを二人・・・いや三人だな。命令だ、きみもここで私たちと一緒に食べること」
驚いて当主様を見ると、当主様は「エマ、お茶を持ってきてくれるかい?」と優しい口調で私に言った。
その後、三人でお茶を楽しんだ後、国王様は当主様に引っ張られる形で図書室にある魔方陣で王宮に戻っていったのである。
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国王様もさぼりたいときがあるらしいです。




