閑話:ロザリーの恋-2
恋の皮肉。の巻
これほど休日を待ちわびたことはなかった。
この間の休みに無理やり会いに行ったゲイリーは腹を立てていたようだった。でも、あのときはゲイリーだって悪い。
どうして、エマをさっさと消さないんだろう・・・もしかして、私よりエマを気に入ったの?
ゲイリーが消さないなら、私が・・・・そう思って実家からナイフを持って出た。
ゲイリーの屋敷に向かって呆然とした。
屋敷に人の気配がない・・・・どういうこと?庭にまわると、芝生の一部が焼け焦げている。
いったい何があったの?
「ロザリー・アチソンですね」
不意に後ろから声をかけられた。振り向くと、そこにはエマと私が話しているところに割り込んできた男性がいる。
「そうですけど。あなたはどなた?」
「ロザリー・アチソン。王太后様がお呼びです」彼は名乗らずに、いきなり私の腕をつかんで馬車に押し込めた。
「何するのよ!!あなたは誰よ。王太后様がお呼びってどういうこと?」
私が質問を重ねても、男性は隣に座ったまま無言だった。私を見る目が冷ややかなのはどうしてだろう・・・
王宮の入り口に到着すると、腕をつかまれたまま離宮に連れて行かれる。すると、レリアさんが現れて、無言でうなずいた。
男性もうなずいて、今度は私の腕をレリアさんがつかんだ。
「レリアさん、どういうことですか?何があったんですか?」
「ロザリー。自分の胸に聞きなさい・・・王太后様は非常に悲しんでいますよ」
王太后様が悲しむ・・・・どうして?
私は事情がさっぱり分からないまま、王太后様の執務室に入った。すると、そこには王太后様だけではなく、国王陛下と宰相閣下まで揃っていた。
「王太后様、ロザリーを連れてまいりました」
「ありがとう、レリア・・・ロザリー、あなたに宰相から話があります」
いつもにこやかな王太后様の顔から笑顔が消えていることにきがついた私は思わず下をむいてしまう。
「ロザリー・アチソン。ゲイリー・バルフォアは消えたよ。」
「え?」
「エマ嬢は無事だ。ロザリー、きみはどうしてゲイリーなんかに協力したんだい?」
協力?違う、私は離宮にいきなり現れたゲイリーに恋をしただけ。それのどこがいけないの?
「いつまでも過去の栄光にしがみつく母との生活は重苦しいものでしかありません。母と離れて離宮で働けることはありがたいと思っています。彼はそんな生活に差し込んだ光でした。」
私は顔を上げて宰相閣下の目をみて、しっかりと答えた。
「じゃあ、きみはゲイリーに協力したことを後悔していないのかい?」
国王陛下が私に直接ものを尋ねる日がくるなんて。
「後悔しておりません、陛下」
「ならば、きみにはこれから話すことは酷かもしれないね。宰相」
国王陛下は宰相閣下に先を促した。
「ロザリー。エマ嬢の居場所を特定できたのは、きみのおかげでもある」
「私?」私が何をしたというのだろう。
「きみが関わっていることを教えてくれたのは宰相室に置いていった封筒から分かった」
封筒・・・ゲイリーから宰相室前に置くように頼まれた封筒のことだろうか。
「あれから、我々はきみを見張っていたんだよ。きみが行動を起こすのを待つことにしたんだけど、予想外に早く行動してくれて助かったよ」
「じゃ、じゃあ・・・・」私は足元から崩れ落ちそうになる。
あのとき、ゲイリーの屋敷に行ったときも見張られていた・・・私が、ゲイリーが姿を消した原因なの?
「私が、ゲイリーの屋敷に行ったとき・・・」
「もちろん、私の手の者がきみを尾行していたよ。おかげでゲイリーのこともわかったし、その日の夜にはエマ嬢を傷一つなく救出することができた。そういう意味では、きみの手柄だ。もっとも、きみにとっては皮肉かな」
エマを消すつもりが、助けるきっかけになるなんて・・・・私は自分のしたことでゲイリーを失ってしまった。
それから宰相閣下は私へ王都追放の処分を課した。母は王宮で運営している施設に移ることになった。
かばんの中に入れたナイフを使う日がいつか来るのだろうか。
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第3章終わりです。
次回から第4章です。




