10.エマ、解放される。
確実にキャッチ。の巻
またしても長文です。
ご了承ください。
夕食を終えて、ひとりの部屋で脱出方法を考えるけど有効なものは思いつかない。
窓越しには星空が広がっている。ぼんやりと外を見てると、不意にドアが開いた。
「?」振り向くと、主が立っている。ただし、その表情は今まで見たことがないにこやかな表情だった。
「な、なんですかっ・・・きゃあ!!」主の手元が光って目がくらむ。思わず目をつぶり、まぶしくなくなって足元を見ると・・・・私の髪の毛・・・・。
「わ、私の髪の毛??」思わずあった場所をさわると何もない・・・前に切られたのと同じくらいの長さになってる!!
「なにすんですか!!」
「・・・・まさか女で失敗するとはね」
「はあ??」
主は呆然としている私の腕をつかんで窓をあけた。腕が痛い・・・・
「エマ嬢。下を見てごらん」
「?」何だと思って下を見ると、そこには・・・・
「ゲイリー・バルフォア、速やかにエマ・アリンガム嬢を解放しろ。ここはもう囲んでいるぞ」
当主様が見たことない激怒の表情で主に呼びかけた。両脇にいる国王様もトビーさんも見たことない固い表情だ。あ、ラルフもいる。
「え!当主様?!トビーさんに・・・・ええええっ国王様まで!!」
「私は確実に負けのようだ。騒ぎを起こして事を大きくするのは、今は得策じゃないしね。きみを解放してあげるよ」
「それはありがとうございます。あなたも自首したらどうですか。今なら扱いが悪くなかったと証言しますよ」
「冗談だろう?親子そろって宰相閣下に敗北なんて気に入らないね。私はね、どうしてもあの男に一矢報いたいんだよ。」
「親子そろって?なんですか、それ」
「きみや宰相閣下みたいに望まれた存在には永遠に分からないだろうね・・・・」主はまたいつものように、くくくっと笑った。
「ねえ、主さん」
「なんだい?」
「その笑いは、なんだか卑屈に見えますよ」
「この状況でも減らず口がたたけるなんて・・・すごいな、きみは。」いささかあきれた口調の主。
そこにバトラーが「主・・・ゲイリー様!!」と駆け込んできた。
「バトラー、どうやらここは負けのようだね」
「ええ。残念ですが・・・ここは退却しましょう。まだ機会はあります」
主は私を見て、次に窓の下にいる当主様たちを見た。
「解放するとは言っても・・・・怪我のない体で返すとは決めてないからねえ」
「は?」私が聞き返すと、なぜか体が宙に浮かんだ。
「えっ??うわわわああああ!!」
「エマ!!」当主様たちの焦った声が下から聞こえる・・・・
主は私を3階から突き飛ばした。こんなとこから落とされて打ち所が悪かったら私、死んじゃう!!
も、もうだめかも・・・目をつぶっていると、なぜかふいに体が軽くなって、私はストンとどこかに落ちた。
「エマ」近くで当主様の声がする。そっと目を開けると、私はなぜか当主様にお姫様抱っこをされていた。
「と、当主様・・・・」
「よかった・・・エマ。遅れてすまない」
「体を軽くする魔法をかけたよ。エマ、無事でよかったね」
「ありがとうございます。トビーさん」思わず自分が落とされた窓を見上げる。
主は、私がケガもなく当主様のところに落ちたのを見て一瞬悔しそうに顔をゆがめたものの、またいつもの表情になってニヤリと笑い、私たちのいるところに手から出した火の玉を投げつけてきた。
「陛下、あなたは国王になって安泰と思っているようだけど油断はなさらないほうがいいですよ」という主の声が聞こえる。あたりに煙が充満して、一瞬屋敷が見えなくなる。トビーさんが煙を取り除いたとき窓から二人の姿は消えていた。
「まさか火炎魔法も使うとはな・・・油断したよ。」トビーさんが悔しそうだ。
「いいさ。とりあえずエマが無事なら。」国王様はトビーの肩をたたいた。
「さあ、エマ。帰ろう」当主様は私を抱っこしたまま歩き始める。
「当主様、おろしてください。歩けますから」
「だめだ」
だめだじゃない!!トビーさんやら国王様、ラルフの生暖かい視線が私は恥ずかしいんだよ!!
「エマ・・・髪の毛がこんなになってしまったな。きれいな髪の毛なのに」
「は、はあ??あー、そうですね。短くなってしまいました・・・・」
当主様、髪の毛の近くに鼻を寄せないでください!!くすぐったいです!!
結局、私はお姫様抱っこをされたまま馬車まで行き、実家に到着しても部屋までお姫様抱っこで運ばれる羽目になったのだった。
読了ありがとうございました。
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救出まであっけなくなったのは
どう書いたらいいもんだか悩んだ挙句の始末です。
でも、宰相のお姫様抱っこは絶対に書きたかった場面です。
半端になってしまって申し訳ありません。




