8.エマは願う
心に浮かんだ相手。の巻
この屋敷に連れてこられてだいたい一週間くらい。まだ、私は生きてる。
部屋はいつも見張られている。身の回りのことも一通りできるようなつくりになっていて、移動を必要としない。
窓から見える景色は、高い塀にかこまれているので空と屋敷内の庭だけだ。それでも何も見えないよりはマシだから、私は昼間は青空と庭を見て夜は星空を見る。
本が読みたかったり、お茶が飲みたいときはバトラーに頼む。食事は常に主と一緒・・・一人で思いっきり気ままに歩きたい・・・・。
「外に出たいなあ・・・・。なんか運動不足だよなあ・・・・」私が思いっきり伸びをしていたところに主が現れた。
「エマ嬢。今、外に出たいとか聞こえたが?」
「ずっと部屋に軟禁されてるんで運動不足なんですよ。」
「きみは誘拐されてるんだから、仕方ないだろうが」
「そうなんですよね~。しょうがないんでここで運動してます」そういうと、私はウエストをひねる運動を始めた。
「・・・だからって、今やるのか。きみは、ほんとうに面白いね」
「思い立ったときにやらないと。これをやるとウエストが細くなるんですよ・・・主さんには必要ないですね」
「そうだね・・・エマ嬢は・・・まあ、室内でやるぶんにはかまわないよ」
くっそー。主は確かにスマートなんだよなあ・・・でもそこは「そんなことないよ」って言えよ。
「エマ嬢。だからきみの思考はダダもれだって。私は無意味な励ましはしないことにしてるんだよ。まあでも、きみはまだ大丈夫なんじゃない?」
主はくくくっと笑い、部屋を出て行った。もっと普通に笑えばいいのに、卑屈に見えるって事気づいていないのか。惜しい人だ。
今日はバトラーに頼んで、本を何冊か持ってきてもらい読書。
家族にメッセージは分かってもらえただろうか。自分でも脱出アイテムとか作ったほうがいいかな。私は、ベッドのシーツに目をやった。
あれで、ロープみたいのは作れないかな。ベッドのサイズが大きめなのでシーツもそれなりに大きいはずだ。
あとは窓から下までの距離だな・・・私は窓を開けて、庭までの距離を見た・・・・う。高い。しかもよくよく考えてみれば、窓の下には窓がある。ここから抜け出しても、階下の部屋に誰かいたらもうだめじゃん。
こういうとき、魔力があったら空を飛んじゃったりするのに。でも、空を飛べる魔法なんてあるのかしら。無事帰ることができたらトビアスさんに聞いてみよっと。
まだ、楽しいことを考えられるってことは私は頑張れる・・・そのとき、外から男女の話し声が聞こえてきた。
とりあえず、下から見られないようにかがんで聞き耳をたててみる。
「どうしてゲイリーに会えないの?」
「主は所用で手が離せないのです」
「ロザリーが会いにきてるとゲイリーに伝えてちょうだい!!」
ロ、ロザリー??私はぎょっとした。ゲイリーって、主の名前か。
そこに主の「何事だい?」という声が聞こえてきた。
「ゲイリー!!あなたの執事はひどいわ!!私を通してくれないのよ!!」
「ロザリー。当分会えないと言っただろう?」
「でも!!」
「エマを消すまでは会えないと言っただろう?」
「まだエマを消してないの??どうして??」
ロザリーは興奮してきて声が大きくなっている。
「エマにはまだ利用価値があるんだよ。分かるだろう?ロザリー」
「・・・わかったわ」
ロザリー、納得するの早!!
それにしても、あの常に上から目線だった女王様のロザリーが、主には服従してる・・・・ロザリーって、主みたいなタイプが好みだったのかあ・・・。
その後、ロザリーは「次は会ってくれるわよね?」主に念押しして帰って行った。
その後、私の部屋に主が顔を見せた。
「エマ嬢。さっきのやりとりを聞いてたんだろう?気配で分かったよ」
「主がロザリーと恋人同士だったとは驚きでしたよ」
「恋人じゃないよ。少なくとも私は恋人だとは思ってないね。時々寝るだけの相手だよ」
「はあ??ね、寝るだけって」私は顔が赤くなってしまう。彼氏はいたことありませんが、そういうことは知ってますともさ。
すると主は「なるほど。まだ宰相殿は手を出してないわけか」とニヤリとした。
「当主様が私に、その、手、手を出すわけないでしょう!!」
「おやおや。じゃあ、ロザリーに飽きたら次はきみにしようかな」
「ふざけんなー!!」私が思わず叫ぶと、主は大笑いをして「冗談だよ」と部屋を出て行った。
主の「冗談だよ」って、なんだかすごく信用できない・・・・ロザリー、あの男のどこがよかったんだよお~~!!
誰でもいいから・・・いや、よくない!!当主様、助けに来てください!!なぜか頭に当主様が浮かんだ。
読了ありがとうございました。
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書けば書くほど、主がサイテー男になっていく気がします。
とはいえ、鬼畜になりきれないのが私の作品の登場人物です。
イケメンもイケメンになりきれず(汗)。




