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宰相閣下と行儀見習の娘  作者: 春隣 豆吉
第1章:運命の相手であってほしくない
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プロローグ:転生まで

神様もうっかり。の巻

 どうして居酒屋の料理は個別に頼んだものは美味しいのに、コースで頼んだものは味が落ちるのだろう。

 特にこのサイズ大き目の鶏のから揚げ・・・半分以上皮じゃん。これならお弁当屋のから揚げのほうが断然うまい。

 ここで一番美味しいのは枝豆だな。

 私の名前は安藤 恵理。24歳の会社員だ。美味しいものを何より愛する私は、友人の加奈子に強引に合コンに連れ込まれている。表面はおとなしく料理をつまんでいるが内心はさっき述べたとおり。


「恵理ちゃん、飲んでる?」

 私の隣は友人の加奈子だったはずなのに、いつの間にか加奈子はお目当ての男子のところでいい感じに話し込んでいる。その代わり、私の隣にはお酒で顔が真っ赤になっている酒臭い男・・・。

 素面では悪くない人なんだろうけど(加奈子のセッティングする合コンは信用できる)、彼氏を作る気のない私に張り付いてもしょうがないと思うんだけどな。

 しかも、私は「恵理ちゃん」と呼ばれるほど親しくした覚えがない。

「う、うんっ。私、お酒がちょっと苦手だから少しずつね」手元のビールはジョッキ半分も減ってない。

「そうなんだ~。じゃあちょっと甘いお酒なんかどう?」

「あ、これで充分ですから」甘いお酒なんて、酒じゃない。きりりと冷えたすっきりとした味わいの酒こそが私にとっての酒である。あー、冷酒か焼酎水割りかハイボールが飲みたい。

 その後、なんとか相手をやり過ごした私は、断ってバッグを持って化粧室に駆け込んだ。するとあとから加奈子もやってきてメイクを直し始めた。

「恵理―、どう?いい人いた?」

「いつの間にか隣が酔っ払いになってたよ・・・このハンターが。友達見捨てたね?」

「だってー。聞いてよ、恵理!!好みのタイプなのよ!!逃すわけにはいかないじゃない」

「さすがハンター。あんたが狙って落ちない男はいないよ」

「で、恵理。あんたどうすんの?」

「悪いけど、このまま帰る。明日は川田屋で期間限定の豆大福が発売されるのよ。年一回のお楽しみを逃したくないのよね。そんなわけで、これ会費。じゃあ、頑張って狩りをしてくれい!」

「あんたは彼氏より豆大福かい!!・・・・まあ、しょうがないわね。強引に連れてきたんだし。気をつけて帰るのよ。酔っ払いに絡まれても戦っちゃだめだからね?」

 私は加奈子の失礼な言動に見送られて店を出た。


 川田屋の豆大福は豆の塩味加減と、すっきりとした甘さのあんこ、ほどよい腰の餅の3拍子がそろった逸品で、どっしりとした重さがたまらない。

無事入手した豆大福を早く家で渋めの緑茶とともに食べたい。はやる心をおさえるものの、足は早歩きに。途中横断歩道が赤になったので、私は交差点で青になるのを待っていた。

車側の信号は黄色から赤になり、横断歩道が青になるか・・・というころ、一台の車が猛スピードで近づいてきた。もう信号は赤なのに、危ないなあ・・・・と思ったところで、私の意識は途切れた。



「安藤恵理ちゃん、起きてちょうだいな」

 優しげな声に促されて、私は目を覚ました。私の前には、ひらひらの服を着たきれいな人。

「あの、あなたはどなたですか。それからここはどこでしょうか」

「アタシ?アタシは神様って呼ばれてるわね。ここはね、天国と生まれ変わりゾーンの間よ」

 見た目は中世的な男性って感じだけど、口調は女子・・・神様はオネエさんなのか。

「へー、天国と生まれ変わりゾーンの間・・・・は?え。天国って普通死んだ人が行くって言われてるとこですよね。ということは・・・」

「交差点で信号待ちをしているときに、信号無視をしてきた飲酒運転の車がつっこんできて、あなたはそれに巻き込まれて死んでしまったのよ。」

「ええええーっ!!じゃあ豆大福は??」

「車でぺしゃんこよ」

「そんなあ・・・・食べる前に死ぬなんて・・・」

 落ち込んでる私に神様は、「恵理ちゃん、追い討ちをかけるようで悪いんだけどね。話を聞いてもらえるかしら」

 私がうなずくのを了解ととった神様は申し訳なさそうに話し始めた。

「実はね、恵理ちゃん。あなたが死んだのは私の手違いだったのよ。本当に申し訳なくおもっているわ。だって、あなたはもうすぐ運命の相手にであって3年後に結婚、平凡だけど幸せな生活をして70代半ばで天寿を全うする予定だったのよ。」

「神様も手違いってするんですか。」

「普通はしないわよ、普通は!!でも今回はちょっとうっかり・・・それでね。お詫びとして普通は天国行って200年後に別の人間に転生させるところを、すぐに転生させてあげるわ。それでおさめてくれないかしら」

「どんな人生ですか?それによります」

 すると神様は2枚の紙をどこからか出してきた。


「えーっと、まず1枚目は『異世界で最強の魔法使いとなって、さまざまな争いを乗り越えて王子様と恋におちて王妃になって幸せな一生を送る』ってやつね。これはすごいわよー。産まれた時点で最強の魔力を持ってて、その世界では敵なし。おまけに絶世の美女で出会う男がイケメンばっかり。すごくない?」

 神様はオススメ物件とばかりに瞳をキラキラさせてるけど、私的には「ノー」だ。私は平穏を望む人間で、絶世の美女だろうが逆ハーだろうが争いを乗り越えるなんて面倒だ。それに最強の魔力って・・・そんなのあるから争いに巻き込まれるのでは。ドラマチックなのは当事者より見てるほうが楽しいのだ。

「神様。平凡だけど普通に生活できて衣食住には困らない人生ってないですか」

 すると神様は何を勘違いしたのか「んもー、恵理ちゃんって謙虚なのねえ。じゃあ、2枚目のほうが向いてるかな。『異世界の裕福な商人の娘として産まれて、ちょっとした争いはあるものの大部分は平穏な人生』ってのはどう?こっちは衣食住には困らないけど、顔立ちはちょっと可愛いくらいで魔力もないわよ。」

「・・・ちょっとした争いってなんですか?」

「それは、わからないのよお。ていうか、どの人生にもちょっとした争いってあるわよねえ。」

「あー、そうですね。」確かに平穏な人生でも争いごとの一つや二つはある。・・・私は心を決めた。

「神様、『裕福な商人の娘』でお願いします」

「あら、そうお?本当に最強魔法使いで逆ハーの人生じゃなくていいの?」

「その人生、私みたいな人間には荷が重いです」

「そお・・・。じゃあ、『裕福な商人の娘』人生に転生ってことで。でも、謙虚な恵理ちゃんにごぼうび♪あなたには『すばらしい料理の腕』と『24歳で運命の相手と出会う』というオプションをつけてあげる。それから、転生してもアタシに言われたことは覚えているはずよ。・・・じゃあ恵理ちゃん。目を閉じて・・・・」

 神様にそう言われて、私は目を閉じた・・・・遠くで神様の声がする。

“あなたの選んだ人生が素敵なものになるように、頑張りなさいな”


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!



現代モノの次は、なんちゃって異世界モノです。

ストックがこれ入れて5日分しかありません・・・

ははははっ(汗)

しかも久々R15タグつき。




毎日更新は出来ないかもしれませんが、よろしくお願いします。

主人公は転生しておりますが、前世の記憶を生かして大活躍とかはありません。

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