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宰相閣下と行儀見習の娘  作者: 春隣 豆吉
第3章:神様と私の認識違い
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6.エマの黒いリボン

リボンから推測。の巻

 エマが姿を消して3日後、宰相室の前に大きめの封筒が置かれた。封表には「キンケイド宰相閣下殿」と一文字。

 持ち込んだラルフが透視魔法を施したが、特に封筒に仕掛けもなく中にはカードと何か太いものが入っているようだ。

「当主様。特に害となる魔法はかけられていないようですね」

「開けてみてくれないか、ラルフ」

「かしこまりました。」

 中に入っていたのは「預かっている」のみ書かれたカードと、一本の黒いリボンで縛られた髪・・・・それを見た俺は思わず「何だこれは!!」と声を荒げてしまった。

「どうしたんですか、セオ様」いつもと違う俺の様子にラルフも驚く。

「ラルフ、トビーを呼んできてくれ。俺は、エマの家族をここに呼ぶから」

「は、はいっ!わかりました」

 ラルフがあわてて図書室に向かった後、俺は伝達石でアリンガム殿に家族とともに王宮に来てくれるように連絡した。


「・・・・これは、エマの髪の毛です。エマは小さい頃にこうやってリボンと髪の毛を編みこむのがお気に入りでした。それにこの髪の色と質は私と同じですから・・・」

アリンガム家の奥方が断言する。寝込んでもおかしくないのに、娘は無事だと信じて気丈にふるまっていた。

「ほんとうですか。」

「ええ。この編み方にしたってことは・・・きっと、何か意味があるはずです」そういうと、奥方は髪の毛を愛おしそうに触れる。

 俺たちは、そんな奥方を黙ってみていた・・・・しばらくすると、奥方が「あら?」と不思議そうにリボンを見て、「まあ・・・エマったら」となぜか夫に向かって微笑んだ。

「あなた。ちょっとリボンを解きますから先ほどの封筒を私にくださいな」

 そう言って封筒を受け取ると、奥方はリボンだけを手にとった。そして、毛先を結んでいた部分を念入りに見たあとに、アリンガム殿とスコットにその部分を見せた。

 アリンガム殿は俺のほうをみて「エマは髪の毛は切られてしまったようですが、今のところは無事みたいですね。それと、ロザリー・アチソンの動向を見張ったほうがいいかと」と言った。

「は?どうして分かるんですか」俺が驚くと、アリンガム殿は黒いリボンを俺に差し出した。

「毛先を結んでいた端の部分をよく見てください」

 俺はリボンを受け取って、端の部分をじっくりと見た・・・すると、同じ色の糸で「エマ 無事 ロザリー 原因」と文字が刺繍してある。

「ロザリー?」

「姉さんと同級生なんですけど、アチソン家と言う貴族の家柄を鼻にかけて姉さんを見下していた性格の悪い女です」

 スコットが容赦なく言う。

 すると、それを聞いていたラルフが「ロザリー・・・あ。あの女性か」と何かを思い出したようだった。


「ラルフ。ロザリーを知ってるのか」

 俺に言われて、ラルフはしまったという顔をした。

「セオ様には内緒にしてくれってエマに言われてたんですけど、非常事態ですもんね。実は王太后様とお会いした日に、守衛場所でエマがロザリーに声をかけられていたんですよ。でも、エマは話しかけられて困惑した様子でした。王太后様付きのメイドの中に彼女がいてエマのこと睨んでいましたよ」

「ロザリーは王太后様付きのメイドなのか?」

「この間の様子では、そう見えました」ラルフが答える。

「セオ。エマを誘拐したやつ、王太后様の離宮に侵入したやつと同一人物かもな。ロザリーを使ってエマを誘拐したのかも。」

 エマの両親から髪の毛を借りて、なにやら観察していたトビーが口を開いた。

「どうしてそう思う」

「この髪の毛を切った魔法の気配が似てる・・・もしかして、分析すれば誰がかけたかわかるかな・・・アリンガム殿、エマの髪の毛何本かいただいてもいいですか・・・ありがとございます。

 あ、セオ。俺も部下をロザリーに張りつけておくから、お前も誰かつけとくといい。じゃあ俺図書室で分析するから」

 トビーはエマの両親から髪の毛を提供されると、移動魔法で図書室に消えた。


「アリンガム殿。こちらでロザリーの動向を見張ります。必ずエマを救出しますから」

「キンケイド様。私たちも協力しますよ。黙って待つのは我が一族の性分ではありませんからね。それにしても、エマを誘拐とは・・・・アリンガム家を敵に回すとはいい度胸をしている。王国で生活できなくてもかまわないようですね」

 そういうと、アリンガム殿は笑った・・・俺はこの人とはいつまでも仲良くしたいと心から思った。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


この中で一番怖いのは、エマ父なのかもしれません。

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