4.エマと誘拐犯たち-2
わがままな人質。の巻
新しく通された部屋は窓があって明るい部屋だった。でもやっぱり家具やベッドは高級品なのに温かみがない部屋・・・。
「この部屋でいいか?」なぜか主が部屋を案内してくれたんだよね~。バトラーか下っ端が案内するかと思ったら。
「はい、ありがとうございます。窓を開けてもいいですか?」
「かまわないが、そこから逃げようと思わないように。魔法で結界張ってるし、ここは3階だから落ちたら死ぬよ」
なんでこの人は見透かすんだろ。私ってそんなに考えがダダもれですか。
「主、食事をお持ちしました」バトラーがワゴンに食べ物を乗せて現れた。
野菜スープとロールパン、それにじゃがいもをゆでたもの。調度品のわりに食事は質素。お肉がないってことは、主は菜食主義者か。
なぜか食器が二つ。バトラーは部屋のテーブルに料理と食器を並べ終わると「失礼します」と頭を下げて部屋を出て行った。
「さて、エマ嬢。食事にしようか」
「え。主さんもここで食べるんですか」
「なんだ。私がここで食べてはいけないというのかい?」主は眉をひそめて不満気に言われてしまう。
「いえいえ。そういうわけではありませんよ。お腹すいちゃったなあー、いただきますっ」私は主をスルーしてスープを一口。
「・・・・・」うーん・・・・なんだろう。この一味足りない感。私だったら、塩とハーブをちょっと足して、できればベーコンあたりを入れる。
「エマ嬢、どうした?」
主が不審げな目をして私をみた。
「はい?なんですか」
「食事には何も入ってないぞ。それを証明するために同席で食事をしているのだ」
そうだったのか。飢え死にと毒殺はなさそうだ・・・今のところは。
「いえ・・・こちらの料理はどなたが作ってるのかな、と思って」
「これはバトラーが作っているのだ」
「そうなんですか。」バトラー、何でもやるのか。万能型か。
「メイドさんや料理人はいらっしゃらないんですか。こんなに立派な屋敷なのに」
「ここにはおらん。」
「そうですか。」今度はパンを一口。うーん・・・・ちょっとぱさぱさ。
うーん、この屋敷は調度品は豪華なのに食事が微妙・・・・人質だから文句はいわないけど。
食事を終え、主が呼び鈴を鳴らすとバトラーがお茶の用意をして部屋に入ってきた。
バトラーが慣れた手つきでお茶をいれてくれる。うん、お茶は美味しい。
「エマ嬢。ちょっと聞いてもいいか」
「はい。なんですか」
「きみは人質ということを自分で分かってるのか」
「分かってますよ。すいませんね、わがままな人質で」
「確かに君はわがままな人質だ。しかし面白いから許す」
「ありがとうございますってお礼を言ったほうがいいでしょうか。それより私を家に帰してくださいよ」
「それはだめだ。」
「当主様と実家は取引してますけど、私個人と当主様は何もありませんよ」
私がそういうと、主とバトラーは信じられないという顔をして私を見たあと、またこそこそと二人で話し始めた。
「おい。この娘、腹が据わっているのに鈍いのか」
「そのようですね」
どうも、この主従は失礼な言動が多い。
私が自分でお茶をいれようとポットに手を伸ばしたとき、主が「エマ嬢」と声をかけてきた。
「はい?」と私が振り向いた瞬間、何かが私の顔を横切った。
「え?何??」と思って顔をさわったら・・・肩甲骨まで伸びてる髪の毛の一部が切られた!?
「何すんですか!!」
「エマ嬢。きみは人質だ・・・そこを自覚してもらわないと。」
主が私の髪の毛を掴んで笑っていた。
読了ありがとうございました。
誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。
ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!
わがままな人質のエマです。
どうも泣いて気絶するヒロインが好きではないので
こんななってます。