3.宰相閣下とエマの家族
宰相閣下、心配する。の巻
セオ視点です。
「明日の夕4の時までには戻ります」
エマはそう言って昨日、実家に戻っていった。エマは律儀な性格で、よっぽどの用事があるときはちゃんと事前に連絡してくる。それがないというのは、アリンガム商会に何かあったのでは・・・と俺は思い、アリンガム殿に連絡しようと思っていた矢先に、ピエルが顔を出した。
「セオ様。アリンガム殿がいらっしゃっておりますが・・・」ピエルが困惑した表情で俺に告げた。
俺はすぐにお会いすると伝え、応接間で待ってもらうことにした。
応接間に入ると、アリンガム殿が珍しく奥方と子息を伴って来ていた。俺は、実はこの子息・・・エマの弟であるスコットがちょっと苦手だ。どうも、俺がエマを屋敷に連れて行ったのが気に入らないらしくて、いつも俺に対して敵意むき出しで睨んでくるのだ。
「キンケイド様、お忙しいところ申し訳ございません」
「特に忙しくないから大丈夫です。今日はご一家でどうしたのです?」
「キンケイド様、エマは戻っていますか?」アリンガム殿が焦った口調で俺に聞いてきた。
「エマですか?」俺がピエルを見ると、ピエルは首を横に振っている。
「いや・・・まだのようですが」
すると、アリンガム殿の顔色が一気に悪くなった。奥方もスコットも顔が真っ青だ。
「エマに何かあったのですか、アリンガム殿」
あまりに様子が変なので、思わず強い調子で問いただす。
「キンケイド様。エマは屋敷に戻るといい、当家を昼過ぎには出ております。」
「昼過ぎ?今は夜9の時・・・・アリンガム殿、エマは馬車で当家まで来る予定だったのですか?」
「私が馬車を用意するといったところ、運動不足だから歩いて戻ると・・・当家からキンケイド様の屋敷までは歩いても30分ほどでしょう。娘はこちらに到着すると必ず当家に連絡してきます。それがないものですから、過保護かと思ったのですが気になると妻が申しまして」
「キンケイド様。姉は用事がないかぎり寄り道はしません・・・お分かりかと思いますが」
父親に続いてスコットが口を開いた。
とりあえず、アリンガム家のほうでエマの行きそうなところに、エマの所在を確認してもらうのを頼み、俺は屋敷の図書室から魔方陣で王宮の図書室に飛んだ。まさか、こんなことで役立つ日がくるとは。
「どうした、セオ。」
いつものように図書室にこもっているトビーが、いきなり現れた俺に驚く。
「トビー、エマが帰宅時間を過ぎても、戻ってこないんだ」
「は?エマだって、若い女性だ。友達とばったり会って話が弾んでるんじゃないのか」
「それならいいんだが。お前、以前にエマの周辺が慌しくなるって言っただろ。それに母上が感じたエマへの悪意の視線の話とか。先ほど、アリンガム殿が奥方と子息を連れて家に来た」
「なるほど。とりあえず、アリンガム殿が確認して見つかれば叱責だけで済むが・・・セオは最悪の場合も考えてるのか?」
「思いたくはないけど、エマは今まで連絡もなしに遅れたことがない。おかしいだろう?」
「とりあえず、ラルフを呼ぶか。手足になる人間は必要だからな」
そういうと、トビーは伝達石でラルフを呼び出した。
「あとはアリンガム殿からの連絡待ちだな。ハルには言わないのか?」
「アリンガム殿からの知らせしだいた。今の時点では言えないだろう」
その後、アリンガム殿からエマが立ち寄りそうな場所のどこにも立ち寄っていないと連絡がきた。
とりあえず、一日待ってみようということになる。
一日たっても・・・エマは戻ってこなかった。俺とトビーはハルに知らせるために図書室を出た。
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エマが誘拐された直後くらいの話です。




