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宰相閣下と行儀見習の娘  作者: 春隣 豆吉
第3章:神様と私の認識違い
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2.エマと誘拐犯たち

エマの居直り。の巻

「あの~、聞いてもいいですか」私は「主」に話しかけた。

「いいよ。どうぞ」主がやっぱり面白いものを見るように私を見る。

 当主様と最初に会ったときも、なんだか人のこと面白そうに見てたけど、そんなに面白いかなあ。貴族のお嬢様ってやっぱり皆ロザリーみたいにどんなときも取り澄ましてるのかしら。

「エマ嬢。君の思っていることはダダもれだねえ。」

「はあっ?」

「貴族の令嬢はね、たいていどんなときも表情を崩さないのさ。我慢できないときは持ってる扇で顔を隠す。庶民の娘さんたちは分かりやすくていい」

「む。バカにしてます?」

「してないさ。でも、エマ嬢はそのなかでも面白いけどね」そしてやっぱり、くくくって笑う。

 私と主のやりとりを、中間管理職は驚きの目でみている。

「それで、聞きたいことってなに?」

「あなたとそちらにいる人の名前は教えてもらえないのですか?用があるときに名前を呼ばないのは失礼でしょう?」

 意外な質問だったらしく、「主」と中間管理職は目を見開いていた。私は半分居直っていた。当主様と実家は私が誘拐されたと知ったら絶対助けてくれる。だったら殺されないように、生き延びなくちゃ・・・そのためにはここでの生活を踏ん張らなくてはいけないんだ。

 ぜーったい、こいつらの前ではおびえたりするもんですかっ!


「・・・・きみさあ、誘拐されたって自覚ある?」

「ありますよ。でもすぐに殺されるんならともかく生存してるんですから、ここで生活しなくちゃいけないんですよね。いろいろ聞きたいことはあるけど、まずはあなたたちの名前です」

 二人は顔を見合わせて、小さい声で話し始めた。「なんであんなに腹が据わってるんだ」とか「やっぱりまだ自分が誘拐されてるって自覚がないのでは」とか時折もれてくる。

 二人は私のほうに向くと、主が口を開いた。「・・・名前を教えるわけにはいかない。しかし、まあ不便だというきみの言い分もわかる。私のことはあるじ、この男はバトラーと呼んでくれ。」

「わかりました。主にバトラーですね。それでですね、まだ聞きたいことがあるんですけど」

「なんだい?」

「あと、部屋に窓がないと息苦しいんですけど」

「・・・・わかった。確かにここは息苦しいな。窓のある部屋にしてやろう。でも、窓の風景で場所を特定しようとか思わないように。」

 ちっ。ばれたか。でも、窓から風景くらい見てもいいじゃないか。

「わかりました。あと」

「まだあるのか」

「お腹すいたんですけど、もしかして飢え死にさせる予定ですか。それと、私のバッグ・・・」

「きみのバッグはここに持ってきた。あやしいものが入ってないか調べていたのだ。それから飢え死になんてさせる予定はない。すぐに食事を用意させるから待つように」

「無断で人のバッグを見るなんて!!壊してないでしょうね。このバッグ、すごく欲しくて並んで買ったんだから。食べ物以外で並んだのなんて、これしかないのよ」と私が文句を言うと、主はバトラーに「おい、ほんとうにあれはエマ嬢か?もっとおとなしくて家庭的っていう話じゃなかったか?」などと失礼なことを言っている。

 おとなしく家庭的・・・そんなイメージだったのか私。


 主とバトラーが部屋を出て行き、私はまた一人になった。

 自分の側においてあるバッグの中身を確かめた。財布、ハンカチ、化粧道具袋、裁縫セット・・・見た感じ、欠けたものは一つもない。バッグも壊れてない。

「中身は無事ね。あとは窓のある部屋に早く移動したいよなあ・・・周囲が壁ばっかりなんて息がつまってしまうわ。」

 今頃、屋敷と実家は大騒ぎになってるんだろうな。私、生きてここから出られるかな。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


次回は宰相閣下の様子になる予定です。

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