1.エマ、痛む頭で回想する
エマの後悔。の巻
目を覚ましたら、知らない部屋にいた。天井は高く、寝かされているベッドもふかふかで家具だってどうみても高価なものだ・・・だけど、当主様の屋敷みたいな温かみがない。ただそこに置いてあるだけで、部屋と調和がとれてない。
どうして、ここにいるんだっけ・・・・なんだか頭がガンガンする・・・・私は目をつぶって思い出すことにした・・・・。
私は昨日から休みを取って実家に戻っていた。まる一日家族と過ごして、次の日の昼過ぎに屋敷に戻るために実家を出た。父が、馬車を呼ぶからといったのを運動不足だから歩いて戻ると断ったんだった。
で、そのまま屋敷に向かって歩いているときに・・・・・とここまで考えていたときにドアが開く音がした。思わず寝ているフリをした。
「まだ目が覚めないか・・・・やはりあの薬、強力すぎたのか」
「それにしても・・・ふーん。これがあの宰相が気に入ってる女か・・・」
そういうと、誰かが私の顔に手を触れた。私は悲鳴をあげたいところだったけど、頑張ってこらえる。ぐえ~~。気持ちわるっ!
「おい。主が手をつける前に触れるな」
もう一人の男が止めて、私の顔をさわっていた男は渋々と手を離した・・・・察するに、主って呼ばれてる人が一番上で、止めてくれた人が中間管理職、さわった男が下っ端というやつだろうか。
ていうか、主って人は私に手をつけること前提なの??手をつけるって何?なんてとぼけたことは言わないけど、私はこんな部下がいる男の人とはどうにかなりたくないよ。なぜか当主様が頭に浮かんで悲しくなる。でもここで泣いたら起きてるのがばれてしまう。
「おい、この様子だと目が覚めるのは夜になってからだろう。戻るぞ」
「はいはい。わかりましたよ」
「ほら、鍵をかけるから出ろ」どうやら中間管理職が鍵を持っているようだ。男たちが出て行って部屋は再び私だけになった。
少しだけ目を開けて、続きを思い出す。
そうだ。歩いているときにロザリーにばったり会ったんだ。
「エマ」
「ロザリー!今日は仕事じゃないの?」王太后様付きのメイドが街にいるなんて珍しい。
「今日は、仕事が休みなのよ」
「そうなの。あ、私は戻る途中だから」ロザリーとは学生の頃から疎遠だったし、話すこともないので、私はさっさと離れようとした。
ところが、ロザリーは私の腕をつかんできた。ええっと思ってロザリーの顔を見ると、いつもの取り澄ました顔じゃなくて、何かに取り付かれたような興奮した顔をしている。
「ロ、ロザリー??」思わず焦って声が上ずってしまう。
「エマ。ちょっと話があるのよ。付き合ってくれるわよね?」
いつもと違う様子のロザリーに私は断れなかったんだ・・・・。
そして、ロザリーに付き合って裏路地に連れて行かれそこで布を口に当てられた。思わず吸い込んだら急に眠くなって・・・・
「そうだ。急に眠くなったんだ。って、ここどこ?」思わず独り言が出てしまう。
すると、急にドアが開き男の人が2人入ってきた。
「やあ。気がついたね。気分はどう?」口調と声は優しげなのに、全然優しさを感じない貴族の男性がするような格好の男の人。
「頭は痛くないですか」と聞いてくる小柄な人・・・あ、この声は中間管理職だ。とすると、この貴族の格好した男の人が「主」だろうか。
「頭はあんまり痛くないです。あの、ここはどこでしょうか。私、お屋敷に戻らないと・・・」
「君はキンケイド公爵家に戻ることはないよ、エマ・アリンガム嬢」
「え。私の名前、どうして・・・」
「アリンガム嬢。私は君に恨みはないが、宰相閣下にはちょっとね。ヤツにダメージを与えるには君を消すのが一番なんだ・・・君に消えてほしい人間もいるみたいだし?」
「え。私誰かの恨みを買うほど、目立ってませんし美人でもありませんけど。誰かと間違えていませんか?」
すると「主」は目を見張ったあとに何が面白かったのか、くくくっと笑った。
「ほう・・・これはこれは。なんだか宰相閣下が気に入るのがわかるな。うん、すぐ消すのはつまらないな。」
どうやら、すぐに殺されることはなさそうだけど・・・私は誰かに誘拐されたようだ。お父様の言うとおり、馬車にしておけばよかった・・・運動不足だから徒歩で帰るなんて言った私の大バカ者~~!!
読了ありがとうございました。
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ちょっと波乱の第3章です。
誘拐されたというのに、取り乱さないエマなのでした。