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島へと

吉本ばななちゃんの小説で、やっぱりあの嵐くんとのキスのお話の中に出てくる記述で、(数回前の雑記帳にそのキスの話はしましたが、一度読みたいという人のため、タイトルは『うたかた』という名作です)

こういうのもある。


「それでも嵐を好きになってから私は、恋というものを桜や花火のようだと思わなくなった。

たとえるならそれは、海の底だ。

白い砂地の潮の流れにゆられて、すわったまま私は澄んだ水に透ける遥かな空の青に見とれている。

そこでは何もかもが、悲しいくらい、等しい」


私の恋もやはり、これまでは、桜や花火だったんだと、いまではそう確信する。

ああ、ついに「海の底の」恋に出会ってしまったのかもしれない。

と、私は、「うたかた」の、きんぴかゴールドの大輪の花が咲くのに、なぜか淋しい印象のする、その本の装丁を思い浮かべたものだった。

彼は私を愛せないと言った。

誰も愛せないんだ、と淡々と語る彼を、私は死ぬほど思い切り抱きしめてしまった。

女の子が、こんな、男の子を襲うような真似をしてはいけません、と、私はきちんと姿勢を元に戻されて、

でも一晩彼の隣で安らかに眠った。

涙は出ず、やさしい哀しみに満ちて、ある種の、決して荒々しくない絶望と、でも、その夜だけは、彼を独占しているという安息。

目を覚ましたとき、彼が隣にいる保障はなかった。

でも、ちゃんと彼はそこにいた。

「置いていけるわけがないでしょう」

彼は苦笑していた。

朝、さようならと手をふった。

1週間も経たずに、私は旅だちを決心する。


石垣空港を出て、すぐ、島に渡る桟橋へ向かうバスに乗り込む。

バスの中には運転手さんのほかに車掌?なのか、一見派手なかんじのおばちゃんがいて、

石垣に留まらないと言うと、とても残念そうに、しかしドライな感じで「気が向いたら」と、親切に石垣島観光のパンフレットや時刻表や、もろもろ役に立ちそうなものをくれた。

そのさっぱりとした感じが、不思議と凛々しくて、気持ちよい女性だった。

バスは前払いで、桟橋まで200円也。所要時間は20分ほど。

このバスで一緒だった、いいむら君に、バスから降りて、船の切符の買い方などを親切に教えてもらう。

彼の行き先は西表島。

私は竹富島。

船を待つ間の少しの間だけ話しただけだけど、彼の、すくすくまっすぐ育った魂に、

さらに沖縄の空気が加味されて、とっても好青年がつくりあげられているなぁ、と、感心。


ついに、竹富島へ向けて、船が立つ。

えーと竹富島は石垣島からたったの15分。船の往復チケットは1週間有効で1100円也。

他にもっと、期限の長い回数券のつづりもあり、それは長期滞在者向け。

島で出会った、もっと長居してる人がもっていた。


アクアマリンの絵の具を溶かした色を基調とした、しかし幾重にも色の深みを重ね、複雑な色味をあわせもった宝石のような色の海を、船は疾走していく。

船がとおった道の、海水がおおきく割れてうねったあとが、どんどん新しく生まれては消えていくのを眺めながら石垣島にお別れを告げ、目指す竹富島のほうをみた。

ぼうっと霞む島影。

船から身をのりだして、島がぐんぐん近づいていくのを目で、肌で、感じていた。


島へ到着!

民宿「小浜荘」さんのお迎えがきてくれていた。

実はこの「小浜荘」、朝、金沢の空港から電話をして強引に「泊めてください!」と拝み倒した宿。

迎えにきてくださったのは若いお姉ちゃん。素朴な感じで、キュートなバンダナをあたまに巻いていて、

車の中では口数が少ないので、はにかみ屋さんなんだろうと、最初は簡単な自己紹介をしたけど、無理に会話を続けることはやめ、濃い緑をぐんぐん抜けていく道をずっと見ていた。

車は集落にはいる。

タイムスリップだ。

確実に時間が、大きな単位で、巻き戻った世界に足を踏み入れた。そういう印象。


「小浜荘」について、「しばらく、待っててください」と、

裏庭のテラスに通される。

冷たくてレモン色のシークワーサージュースがすぐに出てくる。

「酸っぱかったら、シロップ入れてくださいね」、とシロップも一緒にでてくる。

テラスには、日によく焼けた、すごいハンサムな青年(私よりずっと若そう)が2人。

ビーチボーイズのドラマみたいじゃん、なによ、この設定は。かっこいい!!

二人はとても感じがよく、私に無遠慮すぎない質問をしてくる。

二人は親友なのかと思ったら、ともに1人旅で、今この宿にたまたま一緒に泊まってるだけだという。

テラスにめんした部屋では、ぐうぐう昼寝をしている人も。

沖縄の民宿は相部屋がほとんど。ふとんがひきっぱなしで、みんな泳いでは疲れ、帰ってきて昼寝し、また泳ぎに・・・という生活をぐうたら続けてるそうです。






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