第十二章2 【覇王杯/オーバーロード・カップ/第二幕】2/高知県立夢異世界部活学校卒業式
最初の3チーム、
(01)【内田 愛幸チーム】、
(02)【我柔 稜翔チーム】、
(03)【エディス・プルスフィリアチーム】、
を追う前に、その間も活動している【夢異世界部活学校】について触れておこう。
今回は【卒業式】について触れてみようと思う。
毎日、【夢異世界部活学校】に【入学】する【新入部員】が居ると言う事は当然、【卒業資格】を得て、【卒業】する【部員】も、毎日出ても不思議では無いのだ。
ただ、飛び級制度を使わない場合は20年間、【部活】をやり続けるという事は難しい事でもあるので、実際に卒業まで行き着く者は【部員】の中でも1割に満たないとされる。
それでも、困難を乗り越えて、無事に【卒業】するものは確実に現れる。
この日もその資格を得た者が【卒業】を迎えていた。
その者の名前は、【高杉 善悟郎】64歳。
初等部3年間を【折り紙部】に所属し、
中等部3年間を【紙芝居部】に所属し、
高等部3年間を【和太鼓部】に所属し、
大等部4年間を【楽器職人部】に所属し、
院等部7年間を【各種祭り部】に所属し、
地道に20年間【部活】をやり遂げ、無事に卒業の日を迎えた。
彼が所属していた【夢異世界部活学校】は【高知県立夢異世界部活学校】である。
彼は20年前、長年連れ添った妻を44歳の時に、亡くし、絶望した。
そして、【高知県立夢異世界部活学校】で【部活】をする事になった。
元々、職人気質だった彼は、妻の【玲子】との間に一人娘の【麗香】を授かったが、娘は駆け落ちした事で家を勘当になっている。
その後、妻と2人で暮らしてきたが、妻が末期癌に倒れ、ずっと一人暮らしだった。
そんな彼が卒業に辺り、【句点で区切られる一文で表現される】何を望むかと聞かれた時、
「儂は連れ合いに辛い思いばかりさせちょった。
儂の老い先は短いのはわかっちょる。
じゃけど、最期に一日だけ・・・
【一日だけで良いので亡き女房とたっぷり話がしたい。】
それだけじゃ」
と言った。
【一日だけで良いので亡き女房とたっぷり話がしたい。】という願いは成就され、【善悟郎】は、妻と話をすることになる。
亡くなっている故人なのに何故?
それは、
「お父さん・・・」
「・・・【麗香】か?」
「うん・・・旦那が亡くなってね。
私、他に頼る所無かったから、戻って来ちゃった・・・
迷惑だった?」
「そんな事は・・・」
「お母さぁん・・・お腹すいたぁ~」
「その子は?」
「あ、うん・・・【怜耶】、ご挨拶して。
お爺ちゃんだよ」
「・・・お爺ちゃん・・・いえ・・・貴方・・・ずいぶん、老けたわね。
苦労したのね・・・ごめんね・・・ずっと1人にしちゃって・・・」
「ま、まさか・・・【玲子】・・・なのか?」
「・・・えぇ・・・娘の子供として、転生したみたいなの。
でも、今まで自覚は無かった・・・急に前世の記憶が蘇ったみたいなのよね?
どういう事かしら?」
「うぐっ・・・逢いたかった・・・ずっと逢いたかった・・・お前に・・・すまない・・・と・・・それを言いたかった・・・」
「もう、貴方ったら、娘が困惑してるわよ。
男が涙なんか見せられるかとか言ってたじゃないの」
「それは無理だ。
涙腺が緩んでしまって・・・お前に逢えた感動で・・・」
「かんどうと言えば勘当・・・解いてあげてくださいね」
「解った・・・解ったから・・・」
「・・・もう、子供みたいに泣いて・・・どっちが子供か解りませんね・・・」
「う、うるさい・・・」
「はい、よしよし・・・良い子でちゅねぇ」
「良かった・・・良かった・・・」
と言う話になった。
それは孫娘に転生した亡き妻、【玲子】に相違なかった。
頑固者で通っていた【善悟郎】は堰を切ったかのように、小さな孫娘/亡き妻と一日中語り明かした。
そして、その願いを叶えた後、【玲子】としての記憶は【怜耶】の中から消えてしまった。
だが、【善悟郎】は、別人かと思える程、孫娘を可愛がる様になったのだった。
こうして、幸せな日々を過ごすことになったのだった。