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8話



「その、悪かった」

「……」

「謝られても許せることじゃないのは分かってはいるが、人間だと誤解してしまって……」

「あっ、べっっっつに大丈夫ですよ全然元気です」



私に斧を振り上げた顔面牛の魔族さんが謝りに来てくれた。


いや、私人間だけどね(白目)。



「いや本当にどうしてこうなった」


状況を理解しきれてないうちに事が進みすぎた。

本当にどうしてこうなった(二回目)


そもそも私がどうして拉致られたのかも、私の死体を運んでいた二人も、そして姫様も。

何もわからん、どうしてこうなった。

なにがどうしてこうなった。


城の食堂の机に突っ伏す。


この城で訳も分からないままメイドになって2週間が経過した。

少し前は私の姿を見て動揺するものも多かったが、今では普通に接されんですよ。どうしたんだお前ら初日に見せていた私への嫌悪感はどこいった。


なんだこの疲労感。どうしてこんなに私が疲れなくてはいけないんだ。



「あら、お疲れのようですね」


若い女性の声がした。

突っ伏したまま見上げると美しい、少女のような女性のような女の子がいた。


「……えーと」

「ミアージュです、私の部下の名は覚えるのに私の名は覚えられないんですか?」

「ごめんミアージュ」

「さんをつけなさい、これでもあなたの何倍も時を生きてきました」


そう言うと彼女の凛とした大きい瞳が吊り上がった。

地下牢にいた時食事を届けてくれた彼女、高い身分なのはわかってたがどうやら四天王だったらしい。

もうね、知った瞬間心臓跳び出そうになったわ。なんなら心臓吐くところだった。


四天王っつたらあれである、子供がよく親に叱られるときにつかわれる決まり言葉に登場する。

「こら!よい子にしないと、四天王に殺されちゃうよ!」

…、魔族が人間を嫌っているのがどうしてかわかるようになってきた。


ミアージュという名の彼女は、魔族の中ではかなり名家のご令嬢で、すごぶる優秀で若くして四天王となったのだとか。

熟成された赤ワインのようなでもあり、血のように鮮やかな髪を今日は一つにまとめ上げている彼女は、正直言って美しい。高嶺の花感はあるが、実際モテモテだろう。

外見はぱっと見15歳くらいなのに、上品な仕草が大人の女性のようにも見える。


「そういえばミアージュっていくつなんです?」

「さんを………はぁ、私は169歳です」

「生意気なことを言ってすみませんでしたミアージュ様」

「さっ、貴方に様と呼ばれるとなんだか鳥肌が立ちます、四天王命令ですやめなさい」

「酷い」


鳥肌が立つって何。私キモいですか??


まぁ四天王命令と言ったが、さんをつけなくっても彼女はそう言わなかったのでぶっちゃけ許してくれてるんだろう。


「それよりどうしたの、私に何か用?」

「…いいえ、特にありませんが、貴方が何か困っていることがあればと」

「やっだ、もぉ、やっさしーんだからぁー!」

「思っているより何も考えてないようで安心しました。私は忙しいので、では」

「待って待って待って」


思わず反射的に彼女の綺麗な服を掴む。

ぴくッと少し跳ねて、私に振り向いたミアージュ。


「その、色々聞きたいことあるんだけど」

「……わかりました、では今夜、私の部屋に来て下さい」

「なんかそれえろいね」

「殴りますよ」


その後もなんやかんやつんつんしている彼女をからかいながら少し話して、彼女も私も仕事に戻った。


この城に長く勤めているらしい、おっとりとしたメイド長らしい人に


バケツと雑巾と箒を持って駆けだす。

どうやら魔族は魔法で大体なんとかできるから、掃除も風魔法や水魔法でパパっと終わらせてしまうらしく、城のどこを見ても汚れがパッと見わからないのだ。

羨ましいことだ、私が姫様に仕えていた時は姫様が眠っている最中必死こいて姫様の部屋の掃除をしたというのに。

自分の拷問に使われた拷問用具を自分で洗うってなに?


私は姫様に捕まるまでは王宮の掃除をしていたもんだからね、実は結構掃除は得意だ。


「いよっこらせー」


廊下に置かれていた装飾品を少しずらして、その後ろの埃をふき取る。

細かいところはやっぱり汚れてるんだなぁ。


「いよっこらせー」

「……本当に元々貴族のご令嬢だったのでしょうか?」

「あっ、こんにちはリメヌさん」


上を向くとスタイル抜群の美女がいた。

流石サキュバス、下から見ると乳のでかさがよくわかる。大変羨ましい。

え?私?……私は……スレンダー美女目指してるから別に…………押してあげたらcはあるはずだし……。


「………………食堂でミアージュ様とお話なさってましたが、なにを?」

「え、見てたんですか」

「あの方があなたのことを魔女とは言えども、これほど気にかけているとは思いませんでした。サキュバスとして少し負けた気分です」


気にかけてくれてる………まぁそうと思うことはある。


四天王という煌びやかな肩書は想像以上に大変そうだ、リメヌさんも部下がたくさんいるらしいのに、彼女の上司であるミアージュは日々忙しいだろう。

そんななか、私を見かけたら声を掛けてくれる彼女。


いやー?私初対面嫌われてたはずだったんだけどなぁ?

拉致初日まるで汚物を見るような目をあの子向けてきたんですよ?ひどくない?


なんでここまで気にかけてくれるのか不思議だ。

今でも結構冷めた感じはするが。


「いや別に話していたっつっても、そんな大したことじゃないですよ。聞きたいことがあって、今日の夜ミアージュの部屋に行くことになったってだけです」

「あらまぁ、お楽しみですか?…………サキュバスとして色々、教えましょうか?」

「違いますよ何言ってるんですか」

「そんな食い気味に……ミアージュ様、結構胸ありますよね」


唇をぺろりと舐めてリメヌさんが腕を組んだ。彼女の腕の上にはどっしりとした乳がのっかっている。

やべぇ、リメヌさんがサキュバスだ。

やめてよ私ピュアピュアガールよ、今までR18Gは体験しても、G取り除いた方とかそういうのは分からないんだからねっ☆そっ、そんないきなり色気を発さられると困ります。


「……ちょっと私が拉致られたこととかその他諸々、色々分からないことを聞きたくって」

「まぁ、多忙なあの方になんてことを……と言いたいところですが、貴方の身の回りのことは全てミアージュ様がやっておられましたから、それが一番良いと思います」


話を戻すと途端に彼女の顔が強張った。

あぁ、やっぱりただ私に話しかけたわけじゃないらしい。


「それで、どうして私に話しかけたんですか?リメヌさんの担当している部署はここからかなり遠いでしょう」

「ふふふ、物覚えがいいですね。もうこの城の地図を覚えてしまうなんて」

「誤魔化さないで下さい、まだ保留にしたいですか?」

「………………いいえ」


苦笑にも見える笑みを浮かべて彼女は私に分厚い少し古っぽいファイルを渡した。


「覚悟はもうできていますが、本当にできるんですか?」

「んー、多分ですけど」

「ちなみに呪いの解除が失敗して…………もし悪化した場合、上の方々にバレたら最悪私の首が飛びます。死ぬ瞬間に貴女を呪ってあげますからね」

「え」

「それ、うちの最高機密ですから」


ファイルを指さしたリメヌさん。

ほんと、そんなものを扱えるリメヌさんは一体どんな立ち位置なんだろう。

彼女を部下にしているミアージュってもしかして凄い偉い人………………。


彼女はしゃがみ込んで、私に耳打ちをした。


「このファイルは魔王様の一番の配下だったと言われる、ミアージュ様の前に四天王の一人だった方が魔王様の死亡後、あの方が残した呪いについて詳しく書き記したものです」


「………へぇ、」


「その方は四天王を引退後、直ぐに魔王様を追って亡くなられました」

「ふぅん」


なるほど。まぁ別にどうでもよい、呪いが解ければいいんだから。


お母様がいれば、すぐに解けたかもしれない、が。


…………お母様、…………いやそんなことは今考えない方がいい。


ファイルを見つめなおす。所々金の紋章が刻まれていた。ただのファイルには見えない、洒落である。

うーん、やってみないと分からない。私も呪いを解くのはできるけれど魔王なんてお伽噺の中の存在に対抗できるようなことができるかと言われると微妙だ。



「………取り敢えず、呪いに触れてみます。明日までに分かったことがあったら報告します」


「えぇ、………期待しております、魔女様?」


やめてください期待しないで下さい。拙者魔女じゃないでごわす。

あっ、なんだか無理な気がしてきたどうしよう。胃が痛いや☆


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