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6話


はい??お前今なんつった??


開いた口が閉じれない。

理解が追い付かない私をよそに、立ち上がったこのイケメンは颯爽と現れた女の子と話しはじめる。


眉を顰め、だけど頷く女の子と飄々とした表情のイケメン。何話しているのか会話の内容は全く聞き取れない。多分魔法を使って二人以外会話が聞こえないようにしているのだろう。

そしておそらく、その魔法を使っているのは彼だ。


魔力を少し放出したような空気というか、これは勘だが彼が纏っているものは魔法発動後の空気だ。

そんなもんあるのかと言われるとない。だから勘なのだ。

だけど私は幼少期お母様がよく魔力で遊んでくれたため、魔力を放出した人を感じる勘は人一倍ある。

しかもこの男が魔法を使っているのがわかると、さっきもそうだがなぜか無性にイライラするのだ。


「ねぇ君の母親ってもしかして魔女?」

「やめてください、今あなたの顔を見るとすごくイライラします」

「、あは、本当に魔女の反応するな。さっき僕が魔力を放ったからだね」


お前自作自演なのかよ。

俺は魔法を使う時に魔力なんて漏らしませんってか。ふーん。腹立つ。


あとさっきから何マジョマジョマジョマジョってさぁ。

魔女じゃねーって。お母様はちゃんと人間だ。だって昔から屋敷にいる使用人がずっと面倒を見てきたというのだから。家系図だってある。



「静かに。もうすぐ私の部下が来ます。優秀なものばかりですから、流石にこの娘に危害を加えるという事はないでしょうけど。一応あなたが守ってくださると心強いです」

「大丈夫だよ、さっきこの子に魔術かけたから」


おん??お前なんつった?

魔術?え、一ミリも気づかなかったんだけど。


どんな魔術の腕前なんだ、そう考えて思わずゾッとした。

ていうかこの人さっき自分のことエルフと半魔のハーフって言ったよね。



………………エルフ?


永久の時を生きるというあのエルフ?

半魔っていうのはちょっとよくわからないけど、エルフの血が流れているというのが嘘でないなら相当このイケメンはヤバい奴なのかもしれない。

お母様に昔聞いたことがある、エルフに出会ったら死ぬ気で逃げろと。



「ラズちゃんは時が来るまではスライムよりも雑魚だからねぇ、エルフを見た時、決して戦おうとしちゃ駄目よ?」



おいスライムより雑魚って、そっ、流石にスライムには勝てますよお母様。

戦ったことないけど。スライムと。流石に………スライムには勝て……るよ?


脳内でウフフと笑ったお母様にちょっと腹が立った。

相変わらず美しかった。あの人は今何をしてるんだろう。

………私があの城でどんな目に遭っていたか、あの人は知ってるのかな。…病でそれどころじゃないか。薬でなおらな…………、


反射的に顔を上げた。


エルフは、この世界に存在するどの種族よりも魔術に長けている。

それが長い年月を生きるものと証明する。

……特に、得意とするものは治癒魔法だと。伝承で言われている。


私だって、城に勤めることになる前、お母様の病をどうにか治せないかと死ぬ気で治療法を探したのだ。神殿の本を片っ端から読み漁った。神父さんに引かれた。


それでも無理だったのだ。ずっとお母様は朗らかに笑ってたけれど。

私じゃ無理だ、元々そこまで要領も良くなかったし本も自分から読もうとするタイプじゃなかった。


だけどもし、「エルフ」なら。

本当かどうかは分からない、世界に数人しかいない、伝説のような存在なのだから。

だけど。


だけど、もしかしたら。


「あの、イケメ」



「ミアージュ様」


冷たい幾つもの殺意が私の体を貫いた。

ハッと息を吐いて、思わず体を両腕で包む。


冷や汗が噴き出す。


「―――これが、例の人間ですか」


あらやだなんって冷たい声。

そんな虫けらの死骸を見るような視線を私に向けないでくれ!

私はそういうので興奮するたちじゃないんだ、わかったか?


全力で両目を閉じ、耳を塞いで情報を遮断する。


やっっっべーよ、私とうとう殺されちゃうんじゃねーの。いや死なないけど!

いやいやいや、私嫌われすぎじゃない?おかしいだろ私何かした??

なんもしてないよな私、というか人間が嫌われすぎてるのかそうか。


「いやお門違いだろ」


「は?」


いっけねぇ、思わずキレ気味に呟いてしまった。

するとすぐさま私の声に苛立ちを隠さずに威圧的な声を返された。


そのまま上を向く。

紺色の短い髪を後ろにひもできつく縛った、イケメンさんとはまた違ったタイプの男前がいた。

おい顔良いなクソが。魔王城って顔良くないと勤めれないのかよ。


「大体、なに?なんで私に殺意を向けるんですかオイ。私お前たちの故郷でも燃やしましたか?」

「俺の家族はお前ら人間に殺された」

「私殺してませんよね」

「お前たちは魔王様をあんなやり方で殺してなお、あのお方を侮辱する」


なんだこいつ。


いやなんだこいつ。

話が通じねぇぞ。


なに?私じゃねーっての。私は生まれてからこの方十数年、いちども人を殺したことも、魔族を殺したこともありませんが??

あなたが今言う「人間」は、私にとって見知らぬ他人なんですが。


「おやめなさい、クドー」


一発殴ったろと拳を作った瞬間、スッと私の前に女の子が割り込んだ。

やっ、やっだーー!なんて天使なの?!私の事を守ってくれてるんですか貴女は?

いつもご飯を届けてくれる時、すごい冷めた目なのに!!あっ、まさかツンデレってやつですか?美味しいですねモグモグ。


クドーと呼んだ彼をまっすぐ見て、女の子は言った。





「―――彼女は人間ではありません」


いや人間ですけど。


「魔女です」


いや人間ですけど??

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