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17話


急募 朝起きたら隣にごっつ別嬪な色気爆発お姉さんが寝ていた時の正しい行動


「いやいやいやいや。ツゥエィ!???」


ベッドの上で跳ねあがったらゆらりと彼女の体が揺れた。

あ、待てなんかいい香りがするん。流石美女。


「り、りりりr、めぬさんがどうしてここに…………」


…いや違う、このベッドはリメヌさんのベッドだ。

段々寝ぼけた脳が覚醒してきて、昨日の記憶が鮮明の思い出される。

私が爆睡してしまったからきっと私をどかすにどかせず寝てしまったんだろうか。


も、もうしわけな、………あれこの人私に安眠魔法かけたって言ってなかったっけ。


「じゃあ爆睡してしまったのも仕方ないのか?」


実際、夢も見ずにぐっすり眠ることができた。


手首辺りに巻かれていた布団がモゾ、と動いた。


「…………ラズベリーさん」

「ハイッ」


起きてたんですか???

横でゆっくりと寝返りを打ってリメヌさんは、ぼんやりとした声で喋った。


「そこ」


「そこの、角曲がって正面の扉、お風呂があります」

「あ、はい」

「ごめんなさい、昨日、浄化魔法かけるの忘れちゃったので、風呂、沸かしていいので、入りたければ、……………」


そう言ってリメヌさんは再びすやすやと寝息を立て始めた。


サキュバス族って夜に活動するからなぁ。朝が弱いのかもしれない。

私の寝顔とは比べ物にならないほど整った顔で眠りについたリメヌさん。

うーん、モテるだろうなぁ。


フカフカのベッドから立ち上がり、リメヌさんに言われたとおりお風呂に入らせてもらうことにした。

脱いだ服は置いてあった籠みたいなのに入れたら籠にかけられていた魔術みたいなのが発動して服が綺麗になった。皴も伸びて畳まれた。ナニコレ欲しい。


いそいそとバスルームの中に入るとお風呂とシャワーがあった。

文面にすると分かりづらいだろうが、いまわたしはめちゃくちゃ驚いている。


風呂が、デカい。


私の住んでいる寮の部屋の風呂の4倍はある。デカい。


子供じゃないが、デカい風呂を見ると気分が上がった。

お風呂を使うのは流石に申し訳ないのでシャワーだけで済まそうと思ったが、これを見てしまうとなんだか…………。

私、お風呂に入る時間が結構好きなのだ。





「あ”ー、きもぢぇーー」


幸せ。こんなに大きい風呂に入ったのはいつぶりだろうか。

我が家はオンボロだからなぁ、ばあやが浴槽のひび割れをたまに修復していたしいつも綺麗だったが、ここまで大きくはなかった。

お母様は魔術やなんやらの研究でずっと地下室に引きこもり、三日風呂に入らなくても平気なタイプの人だったからなぁ。


それにしてもこの城の風呂はすごい。ボタンを押すだけで水魔法なのかは知らないが丁度いい温度の湯が浴槽に溜まる。


人間っていろいろ遅れてんだな。


置いてあったシャンプーとトリートメントを使った。

リメヌさんのいい香りがした。

やっべぇよ、リメヌさんとおんなじ香りになっちまったよ。うふふふふん。


自然と気分はブチ上がり、自然と口角が上がってニッコニコな状態でバスルームの扉を開け、置いてあったタオルで体をふいていると、リメヌさんが起きたようで足音が扉の外から聞こえた。


ひたりと、足音が止まった。

この部屋の扉の前で。


どうしたんだろう。


扉の先にいるであろうリメヌさんに話しかけようとした時、扉が開いた。








「………………は?」

「アッ?????」


あ、貴方は初対面なのにもかかわらず私を罵りまくった話通じない魔族さん!!

何故ここに居る、つか私今一糸まとってないんですがァ!


「あっ、の、ごめんなさ、出てけ下さい!!!」


タオルで咄嗟に体を隠し、羞恥心で叫んだ。


「どうしましたか!!!」


ズパァン!と勢いよく脱衣所の扉が再び開いた。


「あっ、リメヌさ」


「なぜここに居るのクドー!!!」

「いやお前がカギはあけてあるから勝手に入れって一昨日連絡しただろうが!」

「なぜ脱衣所にいたの!」

「お前から部屋に入れとしか説明されてなかったから適当に扉開けたらここだったんだよ。大体なんでコイツがいるんだ」


私を見ないようにして私に指を向けた彼をリメヌさんは何とも言えない表情で脱衣所の外に押し出した。


「、ごめんなさいラズベリーさん。私の落ち度です」


しょんぼりした顔で軽く頭を下げ、脱衣所からでてリメヌさんは扉を閉めた。


「着替え終わったら、リビングに来て欲しいです」



「あ、わかりました」


よく考えたら私、昨日も素っ裸を他人に見られたわ。

なんか呪いでもかかってんだろうか。



本当に綺麗になっていた服に着替え、髪を乾かし、裸足で廊下を歩いて言われた通りリビングに向かう。

リビングと定義されるであろう空間に足を踏み込んだ瞬間、異変が起きた。


空気が濁っているのがわかる。

濃密な魔力で。


なんなのこの茶番。魔族の強い人たちって魔力を感情の高ぶりで放出させる習性でもあるのかしら。


「ラズベリーさん!こちらにどうぞ」


リメヌさんが座っているソファーの右側を叩いた。

大人しく座ると、一人用のソファーに座っている先程の彼が眉間に皴を寄せて私を見つめた。


「リメヌ、お前話を聞いていたのか?」

「あらぁ何の話?」


指を弾いて私の前に紅茶が入ったカップを出しながら、リメヌさんは首を傾げた。


「いやいい、多分お前も知ってるだろう」

「はぁ、どういうことかしら」


「今日の夜、この娘の母親に会いに行こうという事になった」


「ゴフッホッ、ゴホッ!!!」


私が吹き出した紅茶が宙を舞った。

あぁ、綺麗な黄金色。




「え、どゆこと???」


「汚い、口を拭け。それでも貴族の娘か」


質問しただけなのに流れるような罵倒が返ってきた。

汚いですよねすみません。知ってるわ畜生。


「なんてこと言うのかしらクドー。そんなだからいつまでも彼女の一人もできないのよ?」


リメヌさんに渡された牡丹の刺繍が入ったハンカチで口を拭く。

え、この人彼女出来たことないの?嘘でしょ?こんな顔が大変よろしいのに??

というかリメヌさん笑顔でめちゃくちゃ酷いこと言ったな。


「……何で必要なんだ。彼女なんていらないだろう」


うわこの人も言い切ったな。

思わず口を開けて彼を見た。

世の中に彼女が欲しくてもできない奴がいくらいると思ってんだ。血祭りにされるぞ。


「ふふ、ほんっとう、貴方とは相性が悪いわ。なんでよくバディ組まされるのか未だによくわからないの」

「それについては同感だが、単純に付き合いが長いからだろう。同じ役職でここまで年が近いとな」


……………なるほど、リメヌさんとこのクドーという人は随分長い付き合いなのだな。

ふむふむ。だからここまで軽々と異性を部屋に招き入れることができるのか。人間の貴族社会なんてそんなことしたらどんな理由であろうとも一発で変な噂を立たせられるぞ。

薄々気づいていたがもしかして魔族って、人間社会と比べるとめちゃくちゃフラットなのかもしれない。


指を指し合い、決して遠くはない距離で言い合う二人は傍から見たらかなり密接な関係に見えた。


ふうん。


「………もしかして、リメヌさんとクドー、さんって両片思いとかそういう感じですか?」




「「………………はぁぁぁぁぁぁあああ????」」


ワンテンポ遅れて、激しい否定が両者から飛んできた。


「ありありありありありっ得ません、ほんと、こんな顔だけの男に」

「オイお前ふざけるなよ、こっちこそこんな痴女絶対お断りだ」

「………今なんて言ったか、言ってごらんなさい、クドー」

「あんな酒癖、………自分の胸に聞いてみろ。痴女以外他ならないだろ」


クドーさんの流れるような罵倒にこめかみに青筋を走らせてリメヌさんが上品に罵倒を返した。

ウン仲いいね。

でもどちらかというと恋人というより親友、兄弟………そんな間柄に見えてきた。


なんだが自然と口角が上がってしまったらしく、私の顔を見てクドーさんは顔を顰めた。


「言っておくが、コイツといくら付き合いが長いとはいえ、それだけは絶対にありえない」

「私のこと侮辱しすぎでは??」


「…ハァ…大体、元の身分が違いすぎるんだよ。コイツは四大名家、俺はスラム出身だぞ?四天王の方々はともかく、王族の血筋の方がそんなこと許さねぇだろうよ」






………………スラム、出身?


「…………まぁ、それはありがたいことですね。私は十六魔官なので四天王の方々程王族の方に意見を述べろことは出来ませんし、そのうち強制的に婚姻を結ばされるかもしれません。……こんな男とくっつけさせられないだけマシです」

「あぁ。うん。そうだな。俺も同意見だよクソが」


やっぱあなたたち仲いいな。


じゃなくて。

え、スラム、出身???


「あの、」



と、口を開きかけたところでハッとした。


これは私なんかが軽々しく聞いてはいけないものなのではないか。

そうだろう、よく考えればそうだ。あっぶねぇ、人の心が分からないどころの話ではない。


スラム。その単語から連想されるものはあまり綺麗なものではない。


魔族にとってのスラムがどのような場所かどうかは分からないが、貧民街(スラム)という名である限りけしていい場所ではないんだろう。

ばぁやが昔私に貴族として一応必要な教養を教えてくれていた時、何度もスラムの話を聞かされた。


教えてもらったそこの内情を思い出して、本当にうっかり口に出さなくてよかったと思って俯くと、平坦な声が頭上から降ってきた。



「―――なんだ、何も聞かないのか、……お前。」


「………………………………え?」


上を向くと、端麗な顔についた綺麗な目が少し揺れていた。

無表情に見えるが、何故か少し動揺しているらしい。



「……………聞いて、いいんです?」


「、いや。人間の血の混ざりものだからどうせ聞くだろうと思っていた。……そうだな、まだ駄目だ」


直ぐに落ち着きを取り戻したように、彼はリメヌさんに視線を向けた。

ん??なんだ、なにか見落としているような気がする。


「リメヌ、南西の地方で陰獣が多数発生したらしい。俺とお前で向かえと」

「十六魔官を二人派遣とは、ただの陰獣ではないのかしら」


リメヌさんがソファーから立ち上がり、表情を引き締めた。


「あぁそうだ。……それと…おい、お前。…………エルギスさんがお前と同行するらしい。あの人もコイツと同じ立派な家柄だからな、精々無礼が無いようにしろよ。ミアージュ様も自分の部下関連ではない限りお前のことを庇いきれねぇ」


「エルギス………………?、」


あぁ、あの四天王の胡散臭い喋り方してた人………………。


じゃなくて、それより……………あ。


思わず手を伸ばした瞬間、二人の体はフワフワとした魔力の粉になって宙に舞った。



どうやら、魔族の方々は一を見て十を知るようなところがあるらしい。

また理解できてないまま時間が過ぎていくようだ。






この時私は何も違和感を普通の違和感として対処してしまった。

自分の違和感を少し不快に思うばかりで、思考へと切り替えることはなかった。













それを私は後に、酷く後悔することになる

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