うたを忘れたカナリヤ
うたを忘れたカナリヤ
うたを忘れたカナリヤは
後ろの山に捨ててはいけません
埋めてはいけません
舌を切ってはいけません
柳の鞭で打ってはいけません
逃げた言葉を取り戻すことは
流れ星を掴めないように
逃した言葉の感覚だけが
余韻になって
脳のどこかで悲しい音を紡ぐ
逃した言葉の後をおう
いっそ忘れてしまえばいいのに
何故か喉に引っかかった骨のように
咳をしても、うがいをしても
刺さった痛みだけが残る
うたを忘れたカナリヤを
責めたり、疎んだりしないでください
掃き寄せられた言葉の山が
どんなに高く聳えていても
探している言葉は忘れられてしまったから
うたを忘れたカナリヤは
春の野に咲き乱れるタンポポのように
かごの中で
黄色い羽を羽ばたかせ
うたを忘れたことを忘れています