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朧月夜、あの桜の下で  作者: 秋丸よう
【第2部】それぞれの大切
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【第1話】始まりの2年生

「よしっ制服ヨシ! 靴ヨシ! 髪型ヨシ! ご飯も食べた! あとは学校に行くだけ!」


 カラスの羽根のような黒い髪の紫水晶のような瞳の美しい少女は、見た目に反して朝から元気に指差し確認をしていた。彼女は朧月志乃(おぼろづきしの)である。


「志乃がもう高2だなんて……ぐすん、僕は嬉しいよ」


 その隣で空のような瞳の青年が泣き真似をしている。志乃の兄の朧月蒼真(おぼろづきそうま)である。


「鬱陶しいから、その泣き真似やめろ。まぁ成長を感じるのはほんとだけど。そのままの志乃でいろよ」


 朝から珍しく長文を喋った燃える炎のような瞳の青年が志乃の頭を撫でる。こちらもまたしても志乃の兄、朧月紅賀(おぼろづきこうが)である。


「朝から元気だねぇ……お母さんも一緒に学校行きたぁい!」

「お前が行ったら訳分からねえことになるだろ。学校が大惨事になるわ」

「ハァン! ゆうちゃんは、私の事なぁんだと思ってるの!」

「獣だろ」

「くっエスだ……でもそんな所もちゅき!」


 朝っぱらから子供の前でイチャついているこの夫婦、志乃の母と父、美麗(みれい)優華(ゆうか)である。そんな両親を見て苦笑いを浮かべる3人。


「おいおいおい、そろそろ行かないと遅刻じゃん。ちょっとそこの夫婦、いちゃつかないでくださいよ……」


 玄関で仁王立ちをしている茶髪お下げの少女、籠屋日南(こもりやひなみ)も死んだ目で美麗達を見つめていた。


「おい、俺を巻き込むな。美麗のこと抑えとくから、早く行きな」


 優華はまだ諦めていない美麗のことを羽交い締めして、押さえ込みながら言った。志乃達はその隙に玄関を出た。


「「「「いってきまーす!」」」」





***

 電車に揺られながらたわいも無い話をする。


「そういえばさ、最近どうなのさ」

「ん? 何が?」

「何がって……皇鬼(すめらぎ)様のことよ」

「す、皇鬼様! い、いや、なんにもないヨ」


 日南のいきなりの問いかけに志乃はあたふたし、声が裏返っていた。日南はその様子を見て悪い笑みを浮かべる。


「なんかあるな……ふふ」

「なんにもないよ!」

「皇鬼の野郎、仕事が忙しいらしくて、偶にしか家に来ないんだわ。その限られた日はめちゃくちゃイチャついてるけどな」


 紅賀がスマホをいじりながら話に割って入った。日南はそれを聞いて拍子抜けという顔になった。日南は何を期待していたのだろうか……それは、本人以外誰にも分からない。

 電車が学校の最寄り駅に到着し、改札を出た。すると虚がうじゃうじゃと湧いていた。蒼真はイラつきを隠せない様子で口を開く。

  

「今日はなんか多いな……志乃の2年生初めての登校なのに鬱陶しい……ん?」

 

 逃げ惑う人々の中に一際目立つ金髪が1人。君月玲央(きみづきれお)である。今日は取り巻きの女子はおらず、1人で黙々と虚と戦っていた。志乃には君月が何か悩みを抱えているように見えた。正面にいる虚に気を取られて背後にいる虚に気づいていないようだった。ずるずると近づいていく。

 志乃が危ないと思った時にはもう紅賀が動いていた。紅賀が懐から何かを取り出して虚にぶちまけると、虚はたちまち消滅した。


 なぜ、貴妖刀を取り出さなかったのか。それは貴妖刀を出現させると、問答無用で変化が解けてしまうからだ。つまりは妖としての本当の姿になってしまう。それは天津鬼としては避けなければならなかった。


「お前は……朧月赤いの……」

「あ? 赤いのとはなんだ」

「あれ、紅、俺らの呼び名知らないの? 赤いのと青いのらしいよ……本当に失礼だよね……で、さっきの何?」


 後ろで君月が苦戦する最中で紅賀は気にも留めずに手に持っていた小さな白い紙の袋を見せた。


「これ。あいつからもらった最高品質の清塩。一回使ってみたかったのがある」

「へぇーすごいね、普通の清塩ならモヤみたいなやつしか祓えないのに。めちゃつよじゃん」

「これがあれば出す必要性がないな。モヤっとするがあいつに感謝しないとな」

「お、おい! 朧月紅賀、何故手伝った?!」


 おそらく戦闘が終了したのであろう。君月が睨んでいた。

志乃は2年生に!蒼真と紅賀は3年生になりました!

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