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朧月夜、あの桜の下で  作者: 秋丸よう
【第2部】それぞれの大切
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【プロローグ】大切なモノ

第2部が始まります。テーマは「それぞれの大切」です。どうぞよろしくお願いします!

 人には大切なモノというものがある。

 それは金銀財宝かもしれない。命かもしれない。人によってそれは様々で、いろいろな形をしている。

 それを人は本能的にあらゆる手を尽くして守ろうとする。時には、他者を陥れてでも守ろうとする。

 

 人外もまた、然り。


 人は短命で、脆く、儚い生き物である。だからこそ、その一瞬の灯火を絶やさぬように、一生懸命に生きる、生きようとする。ある意味強い生き物である。しかし、人間はその一瞬には手に余るほどの大切なモノを抱え込み、時にはその手から零れ落ちて行く。零れ落ちてしまわないように、大事に抱えても、落ちてしまう。


 人外もまた、然り。


 人外は長命でひとつの思いを長い間抱え込む。人と違い、緩やかな時の流れに身を任せ、ある時は運命に身を委ね、ある時は滅びに身を委ねる。長い時を生きる人外は、ひとつの大切なモノを必ず守り抜く。零れ落ちることはない。しかし、大切なモノの数はあまりにも少なく、ひとつのモノも見つけると、それ以外目に入らなくなる。


 


 だって、皇鬼(すめらぎ)様がそうだから。

 あの方は私というひとつの大切に囚われている。私はあの方に私以外の大切なモノを見つけてほしい。

 だって……私という存在が無くなってしまったら、きっとあの人は耐えられない。唯一の大切を失うのだから。

 

 かく言う私も、私の大切なモノを守れなかった。

 気付けば崩れ落ちていく。零れ落ちて行く。

 私は、私は貴方の心も守れなかった。なんて、ひどい女なのでしょう。貴方を残して、輪廻へと帰ってしまった。


 だから、あなたにはそうなってほしくない。大切なモノを残して、逝くのは辛い。私はそれを知っている。

 あなたには今を一生懸命生きてほしい。多くの、手に余るほどの大切を作ってほしい。探してほしい。それら全てを守れるように強くなってほしい。


 これは私の我儘。ただの独り言。

 だけど、だけどね、あなたには私たちのようになって欲しくないの。ひとつの大切に執着して、周りが見えなくなることもある。執着すればするほど、それは歪になる。

 私は彼の事を許すことはできないけど、なんて不幸せな人と思ってしまった。私というものに執着してしまったがために、彼の時を狂わしてしまった。


 ひとつのモノに執着するのは時にすべてを狂わす。

 あなたにはひとつのモノに執着して生きてほしくない。


 

 だから、どうか、あなたの大切を教えて――

プロローグでした!

志乃は自分の大切を見つけられるのかというお話になります。今回の部では籠屋日南が重点的に出てきますので、楽しみにお待ちください。

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