0日目 蛇足
正直蛇足です。
彼が生き返るときの話です。
0日目
ここはどこだろう。何も見えないし、聞こえない。しかしそこに何かがいることだけが認識できた。
「あー、伝わってる?」
聞こえたわけではないのに、何故か意思が伝わる。
「君、何者?」
何者とはどういう質問だろう。名前をこたえればいいのだろうか。
「自分の名前、わかるの?」
僕は柄谷佳であり、それ以上でも以下でもなかった。
「すごいね、ここで記憶を保っていられる魂は初めて見た。」
「ここは、そうだなぁ、まあ君達でいうところの死後の世界なんだけど、死んだ魂を溶かしてるんだ。普通は記憶とか性格とかがほかの魂と混ざって、打ち消しあって、そのうちただの大きな魂の塊になるんだけど。君はそうならなかった。まあ時間の問題かもしれないけどね。」
君は?
「僕は、まあこの世界を作った・・・まあ神というにはちょっと仰々しすぎるけど、まあそんな感じの存在だね。まあ何ができるわけでもないけどね」
僕は・・・帰らなければならない。
「あの世界に?それは難しいだろうね、他の、試験的に死後の世界、僕たちは魂魄層って呼んでるんだけど、それをなくした世界であれば可能だよ。」
どうして?
「空間と魂っていうのは本来水と油のようなものでね、大きく見れば混じりあわないものなんだよ。でも実際には・・・なんか話がこじれそうだからやめた。簡単に言えば君には体がない。死んで、体から抜け出てしまったからね。」
どうにかできない?
「うーん、君の目的によるかなあ。なんで帰りたいの」
心配な子がいるんだ
「死人に心配される子がいるのか・・・まあ、わかった。その子の様子を確認したいのね。君が、何かをしたいんじゃなくて、今生きている人が、何をしているかを見たいのね。」
「まあ、なくはないよ」
本当?
「けど君の本位に合うかどうかは分からない。」
「まず君の記憶、性格っていうのは脳を通して魂に刻み込まれた情報なんだ。それを読み取って別の魂に刻み込めれば理論上同じ記憶、性格を持った魂が生まれる。まあ倫理上アウトなんだろうけど君は僕たちの世界の人間でないから多分怒られるだけで済む。」
「ここでもし僕に君の情報を刻んだ場合、僕の魂の性質を持った君が生まれる。もちろん別存在だけど、記憶、性格だけでは僕と君の区別はつけられない」
魂の性質?
「まあ多分君は意思の力だけで保ってたんだろうけど、僕はいろいろやってここにいられる魂にしてるの。まあ死という概念で無理やり魂を弾いてその場に留めてるんだけど、これは理論上君たちの現世、僕たちでいう空間層で存在しうるんだ」
要するに僕はいけないけど僕の性格、記憶をコピーした君が行くってこと?
「そう、あとこれ性質上死の近くでしか発生できないんだよね。その子が死にかけてないとその近くに存在できない。」
きみはいいの?
「君みたいな意思だけでこの場所にあらがえる人って少ないんだよね。その情報がとれるならおつりは来るかな。僕が消えるのは少し怖いけど、ことが終わったら全部また移し直せばいいし、まあ本当に移し直してくれるかは君の性格によるんだけどね。数十年後でも数百年後でもいいよ。それでいい?」
うん、ありがとう。
「えーっと、僕はどっちの佳だ?」
君が戻る方の佳だよ。
「分かった。なんとなく戻り方は分かる。」
ありがとう、また会えるかどうかはわからないけど、またね